子どもたちのお茶会 5
お茶会で気まずいことと言えば――色かぶりである。
「どうして、同じ色なのよ……」
「「レティシアさん、お揃いだね!」」
レティシアのドレスも紺色だ。ふんわりと膨らんだスカートに大きなリボンは、紺色であってもとても可愛らしい。彼女が頭を振ると金色のツインテールが揺れた。
「あなたたちって……」
レティシアが何か言いかけるとほぼ同時に、背後に誰かが立った。
ルードとリアは、すぐに礼をする。
「ロイフォルト伯爵令息、令嬢、お久しぶりね」
「「国王陛下の祖母であらせられる太陽の母、ローザ・フレデリカ様に拝謁いたします」」
「ええ、よく来てくれたわ」
「「招待いただき大変光栄です」」
ルードとリアは、ぴったり揃った挨拶をすると以前よりも大人びた礼をした。
フレデリカが鷹揚に笑う。
「フィアーレ公爵令嬢も、よく来てくれたわ」
「王祖母陛下――お声がけいただき大変光栄でございます」
ルードとリアの挨拶も素晴らしいものだったが、レティシアの挨拶もとても優雅だった。
メリッサは、少し離れた席から子どもたちとフレデリカの様子をハラハラと見ていた。
だが、メリッサはメリッサで社交界の洗礼を浴びている最中なのである。
「ロイフォルト伯爵夫人、そのドレスはどちらで?」
「落ち着いた印象ですわね」
フェリオが帰ってきてから何度か貴族たちの集まりに参加したものの、高位貴族たちの言葉に込められた裏の意味には慣れない。
――つまり、ドレスが地味で場にそぐわないと言いたいのよね。
フェリオは国王陛下や高位貴族たちの対応するため離れている。
メリッサが一人になった途端話しかけてきた相手の顔には見覚えがあった。
フェリオが凱旋したときに、メリッサを魔力なしと揶揄した貴族夫人だ。
彼女たちは魔術精霊派に属する。
長い間、魔力がないことはすなわち貴族としての価値がないと考えられてきた。
魔力革新派の台頭と魔道具が広がったことでその考えは古くなりつつあるが、メリッサ自身がその考えを拭えなかったように、いまだにそのように考える貴族は多いのだ。
――彼女たちにとっても、魔力を全く持たないメリッサは貴族たり得ない存在なのだろう。
ルードとリアが、時折こちらに冷たい視線を向けている。
あのとき、メリッサは二人にかばわれた。
そしてルードとリアは『顔を覚えた』と言っていたが……間違いなく忘れてなどいないようだ。
――ルードとリアを守りたい。二人に守られるのはもう終わり。
凱旋パレードでは、契約妻は終わりだと思っていたから言い返さなかった。
しかし、三年間ルードとリアとともに学び、こんなときにどう返すべきか知識としては理解している。
メリッサは貴族らしい笑みを浮かべ、反撃を開始した。
「こちらのドレスのデザイナーは、フレデリカ様に紹介していただきました」
「「――王祖母陛下に」」
貴婦人たちがたじろいだのを見て、メリッサは扇を広げ目を細めた。
「ええ、それからこの布はロイフォルト伯爵領で織られたのですよ。そのデザイナーがとても気に入ってくださったので、まもなく彼の店に並ぶでしょう」
フレデリカの紹介するデザイナーは一人しかいない。
なぜなら、彼女のドレスはすべてそのデザイナーが手がけているのだ。
そして、そのデザイナーにドレスを作ってもらうことは、社交界のステータスでもある。
「「お母さま!!」」
そのとき、ルードとリアがメリッサの横に立った。
「ルード、リア、フレデリカ様とレティシア様とのお話は終わったの?」
「「うん!!」」
ルードとリアは、にっこりと微笑んだ。
「フレデリカ様が、このドレスとても素敵だっておっしゃってたよ」
「こんど、うちの領の特産品の布でドレスを作りたいって!」
「まあ……それはとても光栄なことね」
「そうだね――フレデリカ様は、社交界の反応を私たちに聞きたいっておっしゃったの」
「うん、僕たちの意見が聞きたいとおっしゃっていたよ。……ちゃんと伝えなきゃね」
ルードとリアは、冷たく貴婦人たちを見つめた。
「私たち、そろそろ皆さんに挨拶してこないと」
「ロイフォルト伯爵夫人、失礼いたしますわ」
「ええ、ごきげんよう」
貴婦人たちは、顔色を悪くしながら去って行った。メリッサは、なんとかなったと密かにため息をつく。
「ねえ、ルード」
「うん、リア」
二人は名前を呼び合っているだけだと思いたいが……。
ルードとリアは、大好きなメリッサに嫌がらせをした相手を絶対に忘れないし許さないのだ。




