子どもたちのお茶会 4
――ロイフォルト伯爵家のエントランスホールには、家族全員が勢揃いしていた。
「「お母さま、きれ~!!」」
メリッサのドレスは、落ち着いた紺。
大きな真珠のネックレス、フェリオに贈られたイヤリング。
髪はアップヘア、サイドの髪を後れ毛にして、清楚な印象だ。
ヘッドドレスにも真珠があしらわれている。
一見すると薄化粧に見えるが、メリッサは知っている――三人の侍女の超絶技巧でむしろいつもより作り込まれていることを。
「すごい技術ね……」
「奥様の美しさを引き出しただけです」
「奥様は王国一美しいのです」
「奥様が一番です。社交界の覇権は奥様のもの」
――途中から、話が違う方向に向かった気がするが、いつものことかとメリッサは気を取り直す。
「ルードとリアもとっても可愛いわ!」
二人は今日も、おとぎ話から抜け出てきたように愛らしい。
フリルいっぱいのブラウス、お揃いのジャケット、ルードはチョッキでキッチリとした印象だ。
リアは髪の毛を巻いてハーフアップにしパールのカチューシャをつけている。
メリッサとお揃いの布地だが、リアのドレスは上に淡い水色のオーガンジーを重ねて可愛らしい印象だ。
「「ありがとう、お母さま!」」
「でも……」
「うん……すごいね」
「本当に……」
三人の視線が向いた先には、フェリオがいる。
前髪を半分上げて、いつもの魔術師団の制服ではなく、黒い正装に身を包んだ彼は光り輝くようだ。
フェリオが顔を上げ、三人に笑いかける。
メリッサは、正直言って『まぶしい』と思った。
フェリオには、魔術師団の制服がよく似合う。
だが、スタイルが良くて見目麗しいフェリオは、何を着ても似合うのだ。
ルードとリア、そしてメリッサの服装を引き立てるようなシンプルな出で立ちにもかかわらず、彼は光り輝いている。
「メリッサ」
手を差し伸べられた。
メリッサは手を重ねる。
「美しいな……。君はどんな服装でも着こなしてしまう」
「――三人のおかげですわ」
振り返れば、三人の侍女たちがいつもの侍女姿ではなくドレスアップして現れる。
マーサは臙脂色のドレス。
メアリーは薄花色のドレス。
ダリアは鉄色のドレス。
ドレスとお揃いのベール付きのヘッドドレスで上品な印象だ。
「……素敵」
しかし、ダリアのドレスは見たことがない形だ。
体に沿ったデザインではあるが、スカート部分にスリットがあり重なっている。
「ダリアのドレスは珍しい形ね」
「祖国の民族衣装をアレンジしたものです。動きやすくなければ、戦えませんので」
「長袖なのね」
「――この腕輪、今はその機能を失っておりますが、見るものがみれば、王家に隷属することを示すものだとわかってしまいますからね」
「……」
「まあ、そんな顔をなさらないでください。隷属というと聞こえは悪いですが、ローザ様はとてもよくしてくださいましたから」
ダリアの腕輪は主に隷属するものだったことをメリッサは知っている。そして今はその機能を失い、どういう仕組みかわからないが、彼女の年齢を若返らせることも。
「ところで三人はどうして正装なの?」
「「「……」」」
三人は、何かを企んでいるようにほの暗く笑った――気がした。
多分、見間違いではないのだろう。メリッサは直後には上品に笑う三人を見ながらそう思うのだった。




