子どもたちのお茶会 3
マーサとメアリーが、メリッサが手にしている懐中時計に視線を向ける。
「「抜け駆けですわ……」」
それから、ダリアのことを睨めつけた。
ダリアは素知らぬ顔だ。
「仕方ないではありませんか。ラランテス先生のためのものだったのですから」
「……そうですね。登録できる人数も執事長が最後。それにしても、まさか先生が奥様にそこまで」
「変わり者で、人になど興味がないお人だと思いましたのに」
三人はしばらくの間、こそこそと何かを語り合っていた。
「でも、今はそれどころではありませんね」
「そうです。私たちの奥様の晴れ舞台」
「――王国一ですから、絶対に彼らに馬鹿になどさせてはなりません」
三人はスクラムを組んで気合いを入れる。
「「「私たちの奥様こそ、王国一の貴婦人!!」」
メリッサは、それは無理だと内心ツッコミを入れた。
しかし、三人はギラギラした目でメリッサを見つめてくる。
「何色のドレスにいたしましょう」
「化粧だって最新のトレンドを意識したいですわ」
「奥様の純粋さを前面に押し出したいです」
「「間違いない!!」」
三人は、メリッサを囲んでワイワイと語り合う。
間違いない。子どもたちのお茶会に着ていく服やメイクの話だ。
メリッサは、もう三人にお任せすることにした。
「さあ、参りましょう」
「まだ、お茶会までは一ヶ月あるわよ?」
「何をおっしゃいますか。ドレスの準備には足りないくらいです」
「あるものでいいのでは……」
「まず、第一印象が大事です」
ダリアがもっともらしいことを言った。
「そうね、第一印象は大事だわ」
「視線を合わせた瞬間に、勝敗は決まっております。夜会という戦場では、見た目こそが最大の武器なのでございます」
「戦うの……?」
メリッサは、まだあまり社交界に出ていないのだが……。
「これは」
「私たちが」
「防波堤に」
そのとき、来客を告げるベルが鳴った。
「奥様、商人が来たみたいですわ」
「え、さっき執事長が呼ぶと言ったばかりなのに!?」
「執事長ですから……」
「まだまだ、敵いませんね」
ダリアが敵わないと言った。どういう意味で敵わないのかは、気になるところだ。
「さあ、応接間に参りましょう」
商人は気合いを入れている。ロイフォルト伯爵家がメリッサのドレスやアクセサリーに予算の上限など設けぬことを知っているのだ。
メリッサは、あれやこれやと最新のデザインや布、アクセサリーを検討することになるのだった。
* * *
――そして、一月が経過した。
子どもたちのお茶会に両親とともに招待されたのは、ルードとリアばかりではない。
ロイフォルト伯爵家の馬車は、美しい装飾であっても落ち着いた印象。
しかし、王都のメインストリートを王城に向けて走る馬車は、華美な印象だ。
「――全く、嘆かわしい」
馬車の中でそう喚くのは、フィアーレ公爵だった。
彼は魔術精霊派のトップに位置する。
その隣には、レティシア・フィアーレが座っていた。
彼女は国王の長子である第一王子の婚約者候補の一人としてこのお茶会に呼ばれていた。
「わかっているのだろうな? 王子殿下の中で一番魔力が強い第一王子殿下こそが、王位にふさわしいのだ。そして、その王妃となるのはフィアーレ家の者でなければならない」
「はい、お父さま」
「……魔力のない第八王女に第二王子――それに、ローザ・フレデリカ。憎きロイフォルト家とともに、必ず引きずり落とす」
「二人のおうちを……?」
「何か言ったか?」
「いいえ……」
レティシアは、黙り込み窓の外を見た。





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