子どもたちのお茶会 2
「それでは、ロイフォルト伯爵夫人、ごきげんよう」
「ロイフォルト伯爵夫人、お会いできて光栄でした」
「ライナー、ロイス……」
「次来るときには、姉さんと呼ばせてよ」
「うっ……胃が痛い。次会ったときには話を聞いてよね!」
「ええ……もちろんよ!」
ライナーとロイスは、訓練された美しい礼をすると去って行った。
二人がそれぞれの道に進んだことは喜ばしいが……。メリッサは、そこはかとないきな臭さを感じた。
「それにしても、子どもたちのお茶会に、大人まで招かれることなんてあるの」
一人残された応接間で、メリッサはつぶやいた。
「ございますよ、奥様」
「ひっ……!」
普段、マーサ、メアリー、ダリアが突然出現して驚かされているメリッサ。
しかし、今日彼女を驚かせたのは三人の侍女ではない。
「執事長……!」
この家の執事長は、とても有能だがいつもふらりとどこかに消えてしまう。
三人の侍女たちが、フレデリカと関係していたことから、彼も何らかの繋がりを持っているように思えるのだが……。
ロイフォルト家の使用人は数が少ないものの、いまだ全員が謎に包まれている。
「どういうことなの?」
「王家主催の子どもたちのお茶会は、定期的に開催されます。ですが、大人が付き添うことがごくまれにあるのです」
「それは……?」
「未婚の王族の誰かの婚約者を本格的に決めるためでございます」
「……っ!」
つまり、ルードとリアがその対象者ということなのだろう。
保護者が付き添い、恐らく婚約者選定を本格的に決めるのだ。
「旦那様に早めにお戻りになるように連絡いたしましょう」
「お願いするわ」
「それから、マーサ、メアリー、ダリアにも伝え……いや、もう聞いていましたか」
天井からガタゴトと音がする。
普段から腰痛に悩んでいるはずなのに、あの三人はどうしていつも天井裏にいるのだろう。
「服装についても、検討しなければならないわね」
「ええ、王族が誰かによっては、坊ちゃんとお嬢様が選ばれぬように手を回さねば――。それに、間違いなく彼の家も参加するでしょうし」
「――フィアーレ公爵家」
「奥様」
「なにかしら、執事長」
「懐中時計を貸していただけますか」
執事長が手を差し出した。
メリッサが持っている懐中時計は、ラランテスから譲られた一つしかない。
執事長に懐中時計を手渡す。
すると、ナイフを取り出して指先を傷つけた。
「これで、私めも登録されました」
「えっ……でも!?」
「隣国や深い森の中、ダンジョンの奥にいることもございますが、古代の遺物であればすぐに駆けつけられるでしょう」
「一体なぜ、執事長はそんな場所に!?」
「私めはロイフォルト家の執事長ですから、秘密の一つや二つあるのでございます」
執事長は、ニコニコと笑っているが……。
メリッサは、懐中時計を呆然と見つめる。
この懐中時計のリューズを逆さに巻くとダリアとディグムート卿とフェリオが現れることをメリッサはもう知っている。
それに加えて執事長――彼がどれくらい戦えるのか、メリッサは知らないが、何と戦うつもりなのだろうか。
「そうそう、商人にも連絡を取っておきましょう。それでは、失礼いたします」
執事長が去ると、代わりにマーサ、メアリー、ダリアが入ってきた。





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