子どもたちのお茶会 1
王家が主催する子どもたちのお茶会。
定期的に開催されるらしいそのお茶会には、王家と縁を繋ぐ可能性のある子どもたちが集められる。
これは、メリッサがマーサから聞いた情報なので、間違いないだろう。
男爵家に生まれたメリッサも、噂では聞いたことがあった。
けれど、王立学園に通うこともなく、王都にも結婚するまでほとんど来たことがなかったメリッサは、自分には関係ないことだと思っていた。
――しかし、ルードとリアはそのお茶会のメンバーだ。
「ライナー、ロイス! 久しぶりね!」
それは、メリッサの弟、ライナー・カレントとロイス・カレントだった。
ライナーは、中立派のウィルソン公爵家の秘書をしている。
また、ロイスは王立学園を卒業し、王城の文官として勤め始めたばかりだ。
ライナーは、ウィルソン公爵家は中立派であるため比較的融通は利くが、それでも魔力革新派の代表的存在であるロイフォルト伯爵家に来るのは憚られたのだろう。フェリオが帰還してからは、初めての再会だ。
ロイスは研修期間を終え先日、本格的に文官として働き始めたばかり。どこに配属されたか、メリッサはまだ聞いていない。
メリッサは二人に走り寄り、笑いかけた。
「「姉さん……」」
しかし、二人は困惑した表情を浮かべていた。
「どうしたの……?」
「いえ、失礼いたしました。ロイフォルト伯爵夫人。本日は、ウィルソン公爵家より文を授かって参りました」
ライナーは、丁寧にお辞儀をした。
今日、この屋敷を訪れたのは秘書としての役目を果たすためだったようだ。
しかし、メリッサの弟であるライナーを使いとして選択したということは、ウィルソン公爵家の意図があるのだろう。
「ロイフォルト伯爵夫人。こちらは、フレデリカ様よりお預かりいたしました」
「ロイスがどうしてフレデリカ様から……」
「本日付で、国王陛下の祖母であらせられるフレデリカ様の宮に配属となりました。最初の仕事です」
ロイスの目がちょっと潤んでいる。
つまり彼は取り込まれてしまったのだ。フレデリカの住む離宮に。
「男爵家の三男が大出世だな」
「――うう、僕は家を出たら平民になる予定だから、ごく普通の文官人生を歩もうとしたのに」
――そうよね、ロイスは平凡だけれど安定した王城の文官になるんだと、王立学園の勉強も頑張っていたわ。
少し頑張りすぎて、座学については十位以内を維持したまま卒業してしまったらしい。
ロイスは、魔法が使えないのはもちろんのこと魔力もそこまで高くないので、総合成績は振るわなかったらしいが……。
家庭教師すら雇えないような貧乏男爵家に生まれた者だと考えれば快挙だろう。しかし、カレント男爵家の子どもたちは皆、両親が教えていたため学業については優秀なのだ。
ライナーについても大差ない。
ウィルソン公爵家の秘書を務めるライナーが、本当は騎士になりたかったことをメリッサは知っている。
だが彼は、ゆくゆくは長男のアベルとともに実家のカレント男爵領を守りたいと、男爵の補佐を学ぶために秘書になった。
――でも、よく考えたら男爵の補佐なら子爵家や伯爵家の秘書で十分だったはずだ。
事実、直前まで子爵家の秘書として内定していた。それにもかかわらず、最終的に子爵家ではなくウィルソン公爵家としての採用通知が届いたのだ。
それは、メリッサがロイフォルト伯爵家に嫁ぐ前の出来事だ。
もしや、この頃からすでにフレデリカが水面下で動き始めていたとでも言うのだろうか……。
「とりあえず、フレデリカ様からの手紙を確認するわね」
メリッサは、フレデリカからの手紙を開封した。
そこには、ルードとリア、そしてフェリオとメリッサ宛てに、王家の主催する子どもたちのお茶会の招待状が入っていた。





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