王家のお茶会 5
お茶会には、アンナーティアと国王の祖母フレデリカ、そしてメリッサとフェリオ、ラランテスが残った。
「まあ、お茶でも飲みなさいな」
その言葉に、心得たようにマーサが紅茶を淹れる。
フレデリカが優雅にカップを傾ける。
それにならって、一同もカップを傾けた。
「――さて、先日の事件だけど」
「フレデリカ様、すべて私の不徳によるものです」
「ラランテス、誰かを責めるつもりはないわ。今回のことは、フィアーレ公爵家が直接手を下したわけじゃない――魔力精霊派には困ったものね」
魔力精霊派、何度耳にしたことだろう。
フェリオやラランテスが属する魔力革新派が、魔法や魔道具を広く人々のために使うという考えに対し、魔力精霊派は魔法は精霊に選ばれた魔法が使えるもののためだけに使うべきだと考えているという。
「――かつて、魔女と呼ばれた者たちは、魔力精霊派が力を持ったことで精霊に選ばれた者になった。ロイフォルト家もその恩恵を受けてきた」
「……」
「魔道具が台頭して、魔術師よりも力を持ったら、時代は繰り返すかもしれないわ」
「……フレデリカ様、お言葉ですが」
「ふふっ……あなたにカレント家の長女を薦めたのは、大成功だったわ」
メリッサが目を見開く。フェリオは眉根を寄せる。ラランテスは素知らぬ顔で紅茶を飲み干した。
――メリッサは、今でも不思議に思っていた。どうして貧乏男爵家の魔力を持たない長女が、魔術師団長フェリオ・ロイフォルトの妻に選ばれたのか。
「確かに、あなた様の勧めによりこちらでも検討しました。メリッサは、すべての条件を満たしていた」
「ええ、彼女の生家は中立派でしがらみがない。きょうだいは有能で彼女自身も有能。子育てになれていて心優しい性格……魔力がないことをあなたが気にしなくて助かったわ」
「……魔力のあるなしで、人の価値は決まりません」
「ふふ、誰より強い魔法が使えるのに自己肯定感が低いこと――でも、一番大事なのは彼女に魔力がないことよ」
フェリオは黙り込んだ。メリッサは、ようやく自分がロイフォルト家に嫁ぐことになった理由を理解した。
「第二王子を次期国王に推すわ」
第二王子は魔力がない。そして、国王の妹であるアンナーティアも魔力がない。
だが、魔力がない者は珍しい。――二人が魔力を持たないのは。
「魔力がない王妃は、この通り前例がある。次は国王よ」
フレデリカは、王家を表す虎と王座が描かれた扇をパチンと閉めた。
「その原動力は――愛。愛はいつだって、世界の中心よ」
伯爵家の令嬢が、先々代国王の心を射止め王妃になった。
彼女に魔力がないことは、秘匿されている。王族が魔力を持たないなど、旧来であればあり得ないことだからだ。
だが、アンナーティア、そして第二王子フレッドが魔力を持たずに生まれたことで、時代は変わろうとしているのかもしれない。
フレデリカは、メリッサを射すくめるように目を細めた。





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