王家のお茶会 4
「あの……」
そのとき、困惑した、心から困惑したような声が聞こえた。
「おや、やっと来たか」
ラランテスの声音は呆れかえっていた。
その視線の先には、少しぼさついた癖の強い髪、分厚い眼鏡と前髪で隠されて見えない目という、王城に来るには少々もっさりとした男性が立っている。
「「「エレン先生!」」」
第二王子フレッド、ルード、リア、子どもたちの声がハモった。
「君たち――そ、そうだ、教師として生徒の前で無様な姿は見せられない」
ぼそぼそという独り言。彼は背筋を伸ばして、礼をした。
「いつも、ひ孫が世話になっているわね」
「恐れ多いことでございます。ローザ・フレデリカ様、お茶会にお招きいただき、大変光栄でございます」
だがその声は、完全に震えていた。
エレンは、子爵家出身の教師だ。
本来であれば、この国の上層部が集うという噂の国王の祖母のお茶会に招かれるような立場ではない。
そんな彼が、この場に呼び出された理由は……。
「――あなたのクラスは、まるで未来の縮図のよう」
「え……?」
「大事な話があるの。子どもたちを見ていなさい、これは命令よ」
「は! かしこまりました! ……あの」
「なにかある?」
「子どもたちと関わるのであれば、この場でも教師と生徒として接してもよろしいでしょうか」
「ええ、許すわ。ひ孫をよろしくね」
国王の祖母は、いかにも楽しそうだ。
彼女の視線が、ラランテスに向く。
「面白い教師ねぇ。ラランテスが気に入るだけあるわ」
「気に入ってなどおりません。あの場所では比較的信頼できると申し上げたまで」
ラランテスは、冷たい表情を浮かべたが、メリッサにはそれが照れ隠しに見えた。
エレンは、子どもたちに向き直る。
そして、穏やかな笑みを口元に浮かべる。
「さあ、一緒に遊ぼうか」
「エレン先生が」
「遊んでくれるの?」
「もちろんだよ、ルード君、リア君。フレッド君も一緒に行こう」
ルードとリアは左右からエレン先生の手を掴み引っ張っていく。
「フレッド殿下も、早く行こう?」
「何して遊ぼうか?」
「あの、僕も行っていいの?」
「「なんで?」」
「え……?」
「エレン先生と私たちが先生と生徒なら」
「フレッド殿下と私たちも生徒同士、友達でしょう?」
ルードとリアの子どもらしい理論に、メリッサは密かにヒヤヒヤした。
だが、フレッドはうれしそうだし、国王の祖母の機嫌も悪くないようだ。
フェリオだけは、少しばかり冷たい視線をエレンに向けているが、おそらくルードとリアを預けていいか見定めようとしているのだろう。
「そんな顔をする必要はないでしょう。あの二人にかかればエレン・リーなど一ひねり」
国王の祖母の笑みは、まるで魔獣の親玉のようであった。
「一ひねりなんて怖いこと言わないでくださ~い!」
遠くから、エレンの泣きそうな声が聞こえてきた。





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