王家のお茶会 2
――ロイフォルト伯爵家の馬車は、今日も城門を素通りする。
毎回のことなのに、今までの常識が簡単に破られてしまいメリッサはめまいがするようだった。
「……気分でも悪いのか?」
フェリオがメリッサの顔をのぞき込む。
「君は引き返して……」
「大丈夫です! 元気いっぱいです」
国王の祖母のお茶会には、フェリオとルードとリアだけでなくメリッサも招かれている。
ローザ・フレデリカに招かれたなら、すべての貴族が何を差し置いても駆けつけるだろう。
そんなことを思っている間に、馬車は王城の敷地内の奥にある美しい庭園へと入っていった。
前回訪れたときには咲いていなかった花が咲いている。
薄紅色の花びらが、大きな木から次から次に舞い落ちている。
馬車が停車した。
フェリオが先に降りて、メリッサに手を差し伸べてくる。
メリッサが手を重ねると、ふわりと風が吹いて風が薄紅色に色づいた。
もしかすると、メアリーの魔法だろうか。
そんなことを思いながら、メリッサは空を見上げた。
「「きれいだねー!!」」
ルードとリアが、木を見上げて歓声を上げる。
「本当に、なんて美しいの」
「我が家の庭にも植えよう」
「――初めて見る木です。フェリオ様はご存じなのですか?」
「東の端に遠征に行ったときに、見たことがある」
「まあ……そんなに遠い場所の」
東の端、その向こうには海があるという。
その向こうにはさらに、見知らぬ大陸があるとも。
「おやおや、ロイフォルト伯爵はこの木がどれほど希少な物か知っているだろうに」
「……ラランテス先生!」
国王の祖母の庭は、特別な場所だ。
孫である国王ですら、彼女の赦しなく入ることはできないと噂されている。
そんな場所にラランテスがいるとは予想外だった。
ラランテスの視線が、メリッサのイヤリングに向けられる。
「しかし、贅沢なことだ。光や闇の魔石よりも高価な物を飾りにしてしまうとは」
「……」
光と闇の魔石は、以前ラランテスに渡し、現在はルードとリアの首にネックレスとして下がっている。
とても希少で値段がつけられないと聞いていたが、それよりも希少とは。
――せめてネックレスだったら落とす心配がなかったのに。
「「でも、お母さまにはとってもよく似合ってるもんね~!」」
「確かに、君たちの言うとおりだ。よく似合って――おっと」
強い風が向こう側から吹いてくる。
何となくではあるが、メリッサは先ほどの風と同じ人物が吹かしているような気がした。
さらに中に進むと、以前見たガゼボが現れる。
「……マーサ、メアリー、ダリア。やっぱりここにいたのね」
先ほどの風は、やはりメアリーの風魔法だったのだろう。
優雅にカップを傾ける国王の祖母の横には、なぜか今回もマーサとメアリーとダリアが控えていた。




