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【4月30日KADOKAWA】可愛い双子の子育てと契約妻は今日で終了予定です  作者: 氷雨そら


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王立学園と助手 8


 メリッサはふと、腰に下げていたポシェットに触れる。


「……!」


 慌てながら取り出したのは、百合とオリーブの紋章が描かれた懐中時計だ。

 それは、以前ラランテスが護衛をしてくれたときに渡してくれた物だ。


 ――たしか、リューズを逆回しにするって言っていた。


 不思議な懐中時計は、ネジを巻かずと正確な時を刻み続けていた。

 調理の時に時間を計ったり、予定までの時間を確認したりと便利ではあった。

 だが、困ったときにリューズを回すように言ったのだから、何か仕掛けがあるのだろう。


「まって~! そっちはだめだよ!」

「こら、だめだって!」


 ルードとリアの声が、少し離れた場所から聞こえてくる。

 このままでは本当に学園中が大騒ぎになってしまう。


 メリッサは、懐中時計のリューズを逆向きに回した。


 懐中時計から、黒い光が沸き上がる。

 光なのに黒いなんて不思議なことだが、黒いダイヤモンドのような光は、そうとしか表現できない。


 その光が尾を引いて床にグルグルと円を描き始める。

 少しだけ悍ましく、あまりに美しい光景だ。


 描かれている文字は、メリッサが最近ようやく学び始めた神代文字。

 千二百年ほど前に精霊が与えたという文字は、今はもう解読できる者がいないとされている。

 文字が円の周りにびっしりと描かれれば、完成したのは見たこともない魔法陣だった。


「奥様!」


 魔法陣から現れた煙が、人を形作る。

 ヨロヨロと現れたのはダリアだった。


「ダリア! 腰痛で休んでいたのではないの!?」

「アレを作動させたのでしょう? 馳せ参じますとも……登録されているのは、私だけではありませんわ。ところで、マーサとメアリーがおそばに控えていたはずでは」


 そういえば、こんな場面であればいつでも侍女たちが助けに来てくれるはずだ。

 しかし、彼女たちの姿がない。


「わからないわ……。それにしても登録? ダリアだけではない?」


 なんとなく嫌な予感がしながら、魔法陣を見つめていると、先ほどよりも多くの煙が吹き出して、二人の人の形を作り上げた。


「師匠! 何事ですか!?」

「メリッサ!」


 現れたのは、王立騎士団長ディグムート卿と……。


「あの、どうしてこちらに」

「――無事か! ルードとリアは!?」


 どうして懐中時計のリューズを回したら、ダリアとディグムート卿とフェリオが現れたのかはわからないが……メリッサは、扉の向こうを指さした。


「魔獣? 逃げ出してしまったのか」

「ロイフォルト殿、とりあえず、捕獲しましょうか」

「そうだな。人間に害をなす魔獣ではないが、騒ぎになってしまう」


 ディグムートとフェリオが走り出す。

 視線の先では、ルードとリアが水とつる薔薇を出して、なんとか捕獲しようとしている。


 王立騎士団長に魔術師団長、二人で全属性の魔法が使える天才双子。


 害がない魔獣というのであれば、少しばかり過剰戦力なのではないか……。

 フェリオが軽く指先を振れば、大きな水の玉か現れて紫色の魔獣を包み込んでしまった。

 いとも簡単に見えるが、あんなにたくさんの水を簡単に出すなんて普通はできないし、それを維持したままふよふよと浮かばせるなんて芸当、王国広しといえどフェリオくらいにしかできないだろう。


 その証拠に、ディグムートもダリアもただ黙ってフェリオの魔法を見つめるばかりだ。

 ふよふよと水に包まれたまま魔獣は運び込まれ、水槽に戻された。

 ここでもフェリオが指先を軽く振るえば、ひび割れていた水槽はいとも簡単に修復された。


「どうなっているのですか?」

「水魔法の応用だ。氷で一時的に補修したが、新しい物が必要だろう……それにしてもどうして壊れた」

「急に割れたのです……」


 ぶつかったわけではない。だが、ガラスとは壊れやすい物だろう。

 しかし、フェリオの表情は浮かない。


「――破片を見たが、普通のガラスではなく強化魔法が厳重にかけられていた。よほどの力を加えるか、細工でもしなければ壊れないはずだ」

「……」


 そうこうしている間に、ラランテスや教師たちが集まってきて、しばし、現場は騒然となったのだった。

 

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