魔術精霊主義派と魔力革新派 1
――時代の転換期。
振り返らなければわかろうはずもない。
けれど、今こそがそうなのではないかとメリッサは思った。
アンナーティアの代わりに捕らえられたのは、フィアーレ公爵だ。
魔力のないメリッサを妻にしたフェリオが生きて帰ったことも。
もっと振り返ったなら、ローザ・フレデリカが王妃になったときから、それは始まっていたのかもしれない。
「……長かったわ」
いつの間にか、メリッサの隣に立ったフレデリカがつぶやいたのが聞こえた。
「……この先は、どうなるのでしょうか」
メリッサは思わず、そう口にしていた。
生まれたときから魔力がなく、周囲から馬鹿にされることもあったメリッサ。
しかし、家族はいつだって彼女の努力を認めてくれた。
伯爵家に生まれ、王妃に成り上がったフレデリカがどうであったのか、それはメリッサのあずかり知らぬところではある。
けれど、この瞬間を目指してきたフレデリカであれば、もしかしたら未来を予測できるのではないかと思ったのだ。
「そんなの、わかるはずないわ」
しかし彼女は、メリッサの質問にわからないと答える。
確かに、未来など誰にもわからない。
ただ、自分たちが目指す道に向けて歩んでいくだけなのだろう。
「でも、あなたはきっとこれからも時代の中心よ」
「中心? 私は……」
「しかたがないの、だって渦の中心は狭いけれど案外穏やかなものだから」
「英雄たちの帰る場所、ということでしょうか」
すでに英雄となったフェリオ。
次世代の英雄であろうルードとリア。
しかし、魔力だけがすべてではない世界になるのなら、ロイフォルト家は確かに時代の転換期の中心になるのだろう。
「さて、そろそろ曾孫を引き取ってきましょうか」
「レティシア様をですか?」
「ええ、孫も曾孫も私の大切な『家族』ですからね」
輪の中心で、レティシアが背を伸ばし佇んでいた。
たった六歳であっても、彼女は理解している。
フィアーレ公爵令嬢として、王家のスペアとして、彼女は生きているのだ。
「さて――何の罪もない私の曾孫! かわいそうに!」
フレデリカが最も言わなそうな台詞を口にした。
「あなたの父は罪を犯しましたが、あなたには私の――そして今は亡き先々代国王陛下の尊き血が流れています」
「……ひいお祖母さま」
「ふふ、あなたの父親は少々王家の尊き血が薄まってしまっていたのよね。でも、あなたは違うわ」
「……」
バサッと扇が広げられた。
彼女の扇に描かれた王座と虎。
それはこの国で誰も逆らうことなどできぬ権力の象徴だ。
「フィアーレ公爵家はいずれあなたが夫とともに継げば良い。それまでは、私があなたの後見人になりましょう!」
会場に、フレデリカの声が高らかと響き、その視線は……ルードに向いていた。
いかにも楽しそうに、その目が細められるのをメリッサは確かに見たのだった。




