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探求者ロジタールの苦悩  作者: 石たたき
第二章 糸を引くもの
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第41話 ロビニィの話

「ロジタール、さしあたってここに危険は無さそうだな。さて、貴様の屋敷ならば、以前俺が出入りした部屋があるはずだ。上手くいけば俺はそこから帰ることが出来るかも知れん。この老婆は貴様に任せて、俺はそこを見て来よう」


 更にフィッシャーが割り込む。


「その話、気になるな。俺は異世界というものにまだ親しみがない。ロングランの世界が見れるのなら、是非とも見てみたいものだ」


「おおそうか、別に減るものでもないし、それなら招待してやろう」

 

 そう言って二人は部屋を出ていってしまった。


「……」


 僅かな沈黙ののち。


「まあ、その、立ち話もなんだから、こっちへ来てくれ」


 俺は屋敷の主人らしく、最低限のもてなしでもと思い、二人をテーブルと椅子のある部屋へ案内した。俺とルルーゼが隣で、向かいに老婆という形で、三人が互いに微妙な適度な距離をとって着席する。


「色々と聞きたいことはあるが……。改めて、俺はロジタール、よろしく」

「ルルーゼよ」


「うむ、よろしく。私はロビニィ」


 まずは謎に満ちたロビニィ自身のことを聞くべきだろう。それとなく誘導しながら相手に話を進めてもらう方が良さそうだ。


 俺はちらりとルルーゼを見た。ルルーゼも俺の意図を読み取ってくれたのか、聞き役に徹することに努めていた。はじめこそ気難しそうに見えたロビニィだが、時を置くにつれて柔和な表情へと変化していった。周囲の空気も緩み、和やかなムードが漂い始める。


「そう改まって話を聞こうという姿勢をされると、私も気持ちいいからな。さて、どこから話そうか。……時にロジタール、この屋敷についてどこまで知っている?」


 思えば、ルルーゼはこの不可思議な屋敷に対しほぼ知識がない。彼女に聞かせる為にも、改めて話をするには最適な話題かも知れない。


「色々と確かめている最中ではあるが、確実なのは、ここが数多くの異世界に繋がっていること、内部と外面の形が合わないこと、そして、あとは不思議な生物らしきものがいる、ということかな、他にもいろいろありそうだが……」


 言われてみれば、しっかりと自信を持って確認したと言えることは少ない気がする。実際、俺が屋敷で過ごしたのは約十日あまりと言った所だろうか。また、屋敷そのものより、いつも現れる異世界者に対して注意を割いてばかりだったというのが実情だ。


 ロビニィは俺の様子をじっと観察しながら、どうにも何かを考えているようだった。俺の内面を見透かすような、穏やかでありながら、力強い、青みを帯びた瞳。双眸には力強い輝きが見えて、なるほど、これは確かに老婆の見せるものではない。俺はロビニィに対して、美女であるかは不明ながら、見た目と中身とが違うものだと確信するようになっていた。


 僅かに空白の時間が過ぎたのち、ロビニィがゆっくりと口を開く。


「私もそこまで詳しい訳ではないが、それらはこの屋敷の特徴とも言える点だろう。屋敷にとって大事なのは、屋敷と契約をしたあるじ、もしくは主人と呼ばれる存在がいて、それが屋敷の根幹をなしているということだ。つまり、大事なのは屋敷ではなく、それらの存在だ」


「主人……。それは俺と、そして先のロングランのことだな」


「む? それはどういうことだ?」


 それまで感情の起伏をほとんど見せなかったロビニィの顔が、わずかに曇ったように感じた。ロングランは異世界の者であり、そこの屋敷の主人である。そして、まだ未確定ながら、俺たち二人はいずれ屋敷の正当な主人という立場をめぐり、衝突する可能性があることも知っている。もちろん、そうでないよう注意していくつもりだ。


 ただ、屋敷の主人であるメリットやデメリットが分からない以上、全てがまだ可能性の話であり、そういう必要性があるかすら分からない。何かと不透明な状況の中で、うまく協力してやっていける方がいいと思いながら、これもまた先が見通せない。


 つまり、俺たちは互いに力と存在を認めつつ、どこか不器用な間柄のままで、なあなあで来ているのだ。


 俺はそれらを掻い摘んでロビニィに伝えた。ロビニィは何事か考えながら話を聞いていた。


 こうして改めて向き合ってみると、彼女は聡明な感じがして、今までのどのタイプとも違う趣を持つ人物であった。それは肉体的に困難を切り開いていくタイプの仲間と比べると、また違った頼もしさを持っているように見える。


「屋敷が複数あるとは思っておった。だが、それらは素性こそ分からないが、不可思議、そして類稀なる力を持っている。数十、数百と存在することはないだろう。その点で奴が本物かいささか疑問が残るな。お主は奴の屋敷を見たことがないということだが、その点、きちんと確認しておいた方がいいのではないか」


 ロングランを信じたいと思いつつ、完全な信頼を寄せていないのは俺も同じだ。その点でロビニィの言葉は十分に理解できる。とはいえ、特にこの点に関して嘘をつく必要もないと思うし、そういう奴でもないだろう。


「ちょうど今、ロングランにフィッシャーが同行しているから、その点を確かめてくれるのではないだろうか。ああ見えてフィッシャーもなかなか好奇心が強い」


「それならば待つしかなさそうだな。さてロジタール、話は変わるが、お主は先代とは出会ったことがない、これに間違いはないか?」


 イメージでしかないが、屋敷というのは、各時代、各世界において、多くの時を重ねて存在しているのだろうと感じている。そして屋敷が複数存在しているとして、それぞれに各主人がいただろうことも予測できる。


「ああ、俺は主人についてはロングランしか知らない。他の屋敷はともかく、今はロビニィが前回ここを訪れた時の話を詳しく聞きたい。その時、この屋敷の主人はいたのだな」


「そうだ。気のいい壮年の男性だったよ。とはいえ会ったのはほんの数回になってしまったがな」

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