17話 未来のスターホース
後日挿絵追加します
【午後1時40分頃 厩舎前】
目の前の光景に僕は帰る厩舎を間違えたのかと二度見、三度見した。
家の前にフェラーリやロールスロイスが停まっており、家のドアの前には黒服のSPらしきそれはそれはごっついムキムキのゴリマッチョが4人立っていた。
(え?てか車多くね?8台止まってるけど。)
てっきり3人か4人くらいのつもりだったのだがこの規模は理解が追いついていなかった。
が、多分(?)自分の厩舎なので玄関に向かう。
「止まれ。何者だ。」
「いや、ここの厩舎のトレーナーなんですけど・・・。」
一応ライセンスを見せると態度が急変した。
「失礼しました!ナナ様のご主人さまでしたか!どうぞお通り下さい。お嬢様もいらっしゃいます!」
「お嬢様って?」
「私はサトノ家の護衛兼運転手の村谷と申します。」
「私はメジロ家の古川です。今日はナナ様とお時間を過ごされるとの事で僭越ながら護衛任務を仰せつかっております。」
(サトノ家とメジロ家って名家じゃねえか・・・・。)
実際の競馬の話になるがサトノとメジロは冠名になっており、数々の中央で結果を出し続けている名馬が多い。
メジロならまずはメジロマックイーン【日本中央競馬会の顕彰馬】である。
史上初めて祖父父仔による三代連続天皇賞制覇を達成した。
GI級競走を4勝するなど重賞を9勝、日本競馬で史上初めて獲得総賞金10億円に到達した。
また、GⅠ宝塚記念を勝ったメジロライアン。
GⅡトライアルレースを含む6連勝をした史上初の牝馬三冠メジロラモーヌ(三冠馬は史上7頭しか存在しない)。
メジロパーマーはGⅠ宝塚記念、有馬記念と【グランプリ連覇】を達成している。
他にもドーベルやアルダンなど数々の名馬が存在している。
一方のサトノ家はメジロ家に次ぐ第二位につけており、メジロ家よりも私財を投じがちである。
メジロ家と比べるとまだ歴史の浅い新興の家系ではあるが、競走ウマ娘界の発展に並々ならぬ力を注いでいる一家。
「サトノはGⅠを勝てない」という呪いを打ち破ったサトノダイヤモンドやサトノクラウン、サトノレーヴなどが存在している。
なお、メジロ家とは良好な関係を築いているらしく、メジロマックイーンがサトノ家の事情に詳しかったりと、両者共にお互いの家風には詳しいようである。
(原作から)
リビングに行くと少女たちがずらりとテーブルに座ってボードゲームをしたりテレビゲームをしていた。
「あ!ぱぱおかえり!」
明らかに高級そうなケーキを食べながらナナが声をかけてきた。
「お邪魔してますわ。」
「初めまして~。」
等声をかけられながらリビングを見るとナナを含む9人のウマ娘がいた。
「お、おう?初めまして。ずいぶん連れて来たなナナ。」
「はなしのながれであそんでたらさとのちゃんたちとあったから、あそぼってなったにゃ!」
何というか、ナナらしい。
大人になると家柄や立場といったしがらみがあるが、子供にそんなものはない。
子供ってすげえな・・・。って思いながら声をかけた。
「あまり遅くならないようにな。じゃあ、ユキヒメとクロの午後のトレーニングをしてくるよ。」
「つくよみおねえちゃんもはしってるにゃ!」
「え?マジで?」
ツクヨミは今日はゆっくりと休みを・・・と思っていたのだが目の前の9人の少女たちを見てすべてを察した。
きっとさぞ騒がしかったので寝れなかったのだろう。
※画像はイメージです。
「分かった、行って来るよ。楽しんでな。それとこれ。まさかこんなに来ると思ってなかったから少ないかもだけど。」
そう言って右手に持っていた買い物袋をテーブルに置いてから、玄関で靴を履いていると後ろでは「じゃがりこって食べたことない」「うまい棒って美味しい!いくら?100円かしら?」「15えんにゃ」「うそでしょ!?ふるかわ!いますぐこのうまい棒をかいしめなさい!」とSPが大急ぎでどこかに連絡していた。
会社(株式会社やおきん)ごと買い占めそうな勢いである。
ダートコースに行くとすでにツクヨミとクロとユキヒメが走っていた。
極力ツクヨミを避けつつレースを控えているクロをメインに特訓していると、ナナのお友達が集まってきた。
それと同時にSPも随行して来る。相変わらずの威圧感である。
「なんだい、興味あるのかい?」
「ええ、お姉さまたちの特訓している姿を見たことがほとんどないので。普段はトレセン学園にいますから。あ、わたくしはサトノレーヴと申します。」
「そうか。色々あって中央で走れないからな。もちろん将来的には走らせるつもりだが。」
「ああ、あの前トレーナーの事ですね。中央委員会が頭が固いせいで。」
「君、本当に小学1年か?大人と話してるのかと思ったぞ。」
「お褒めに預かり光栄ですわ。私達なら何とかできない事はないんですけどね。」
「【家の力】か。凄いな。」
サトノ家はメジロ家と同じく中央への貢献と功績が何代にも渡って続けられている。
それはもちろんレースの結果だけではなく、おそらく運営資金等にも影響があると見ていい。
「ですが、今のこの厩舎では正直私の家の力を持ってしても中央復帰は難しいと思います。実績が必要かと。」
「あのさ。本当に小学生?」
「小学生ですよ?」
「あの銀髪のお姉さんのお名前は?」
今度は違うウマ娘が話しかけてきた。
「ああ、ツクヨミか。この前地方重賞を制覇して、元はオープンクラスの中央馬なんだ。重賞も2勝してるし、弥生賞にも入着してGⅠ桜花賞走る前にアレがあってな。」
「やっぱりですか。明らかに脚が違いますもんね。というか凄い気迫ですね。何かあったんですか?」
「さあ、何でだろうな。」
バチバチにブチギレているツクヨミである。
朝からバイク、昼は子供の声で起こされてロクに寝ることすら出来ていないのだ、当然である。
「あの・・・端っこで良いので走っても良いですか?」
あれ、この子どこかで見たことがある。
数秒考えて思い出した。シュヴァルグランだ。子どもだから分からなかったが帽子で気づいた。
「別に端っこじゃなくていいぞ。芝コースなら好きに使っていい。SP達もいるしな。」
SP達が芝コースの各地に移動していく。これで怪我が発生しても監督責任は問われない。多分。
「ありがとう、ございます。運動会近いので。みんな来るから。」
「ああ。親とか親戚な。」
「いえ、それだけじゃないんです。学園からも。です。」
人と話すのが恥ずかしいのか帽子で若干顔を隠しながらシュヴァルが続ける。
どうやらただの小学校の運動会ではないらしい。
運動能力や協調性、リーダーシップ、そして何より競争能力も見られるらしい。
確かに理に適っているとは思う。
というのも子供の頃から原石を発掘し、英才教育を施す。
そして中央にて走らせる。
野球のリトルリーグやサッカーのカンテラ(下部組織)みたいなものか。
とはいえウマ娘の本能かやっぱり走るのが楽しいのだろう。
9人のこれから先花開くウマ娘たちが小さな体で一生懸命走っている。
ダートコースではクロとユキヒメ、そしてツクヨミが次のレースに向けて調整している。
果たしてクロは初勝利出来るのか。
2週間後のレースが刻一刻と近づいていた。




