067 リディアの誘い
「うーん、今日の収録もばっちりだった」
公開日まであと2週間。作業も大詰めといったところ。
イラストも脚本も音楽もほぼほぼ完成し、最後の収録を残すのみだ。
「セレス、ちょといいかしら」
収録室から出たところで声をかけられた。
「リディアさん」
ソノーラ魔法の使い手でアニメの音楽担当のリディアはほぼメインの担当を終わらせていた。
一時期は音楽室に篭り大量のBGMを制作していたが今はすっきりとした表情を浮かべていた。
「明日と明後日は収録はお休みよね」
「はい、編集作業を行うのでお休みを頂きました」
「もし良かったらなんだけど、……ノイマン家に遊びに来ない?」
◇◇◇
「ここよね……」
セレスはハルモニア家所有の馬車でノイマン男爵家屋敷に到着した。
ハルモニア家帝都屋敷もノイマン男爵家も帝都の下層の中にある住宅区画にあるが、当然所得の差で住んでいる地域も場所も変わってくる。
貴族であっても平民より所得が少ない家は山ほどあり、そういう家は下層の隅に追いやられる。
セレスの住むハルモニア帝都屋敷もそう大きくはない。
地方貴族であるため収支は割とカツカツ。帝都の拠点である屋敷を大きくするメリットがまったくなかった。
そして最近上級貴族からとんでもなく高価なドレスを贈られてしまったため保管場所や管理に苦慮することになった。
セレスは専属従者のリーゼにこう問いかけた。
「このドレスを売ったらいろいろ賄えるんじゃないかな」
「私はよく知りませんけど絶対にやったらまずいと思います」
「これ以上ドレスが増えたら管理できない!……仕方ない。私がドレス棚を作ってみせるわ!」
「お止めください。不器用なんですから無理ですよ。たまにお嬢様のことを聞かれるのでその時、それとなく伝えてみますね」
「うぅ……お願い」
(あんなイケメン二人に好かれているのにお嬢様ったら……。まぁそんな素朴なところが魅力的なんでしょうけど)
話は戻り、ノイマン家の玄関に到着したセレスにリディアが待ち構えていた。
「リディアさん、ご招待いただきありがとうございます。ふわぁ、とても綺麗な屋敷ですね!」
「ありがとう。大きい屋敷ではないけどさぁ、どうぞ」
(確かに大きくはないかもだけど……)
貴族街の上層と下層を繋ぐ好立地に家を建てており、下層に降りてくる上級貴族の目にも止まりやすい。
奥行きと高さを意識した屋敷となっており、堅実な裕福さを好立地でステータスを示す商家貴族といったところか。
(交易で財を成し、上を目指す商家貴族って感じ。この場所に家を建てるには相当な稼ぎがないと無理だわ。)
ノイマン男爵家がどういった商売をしているか見えてくるような気がした。
玄関口から中へ入る。
玄関には異国の品々が置かれており、客人を出迎えるように整われている。
「リディアさん、男爵様は交易品を取り扱われているのですか?」
「分かるの?」
「詳しいわけではないですが帝国外で作られた品が多いですよね。これとか外国のですし、これも」
「父と話が合うかもしれないわね。談話室に案内するわ」
その時、扉が開き一人の男の子が現れた。
「セレスちゃんだぁぁ!」
ばっと近づいてきて、セレスに抱きつく。
「こらっ、セレスティア様でしょ。いつも本当にごめんなさい」
「いいですよ。こんにちはエミリオくん。今日もいい子にしてましたか?」
「うん!」
リディアの息子のエミリオはまだ3歳である。
リディアがよくアトリエに連れてくることもあり、みんなから可愛がられている。
セレスやオスカー家のお手伝いであるエルが大好きでだが、顔の怖いオスカーやレオンは怖がられている。
「またあの声やってっ! 一緒にあそぼ」
「いいよ! 私もエミリオくんと遊びたいな」
セレスが特に懐かれたのは幼児の声を扱えるからである。
(あの姿のどこからあの声を出しているのかしら。あの音域の幅は天才としか言えないわね」
女性であれば幼児から老婆まで。男性でも中性的な青少年までも来なし、動物や効果音までこなす。
音を生業にしているからこそリディアはセレスの才を理解している。
「セレスティア様はお祖父ちゃんとお話しするからエミリオは向こうで遊んでなさい」
「はーい」
エミリオは寂しそうに去っていった。
「かわいそうなことしちゃいましたね。それに私にそんな大層な敬称は不要ですよ」
「でもあの子が大きくなる頃にはあなた、皇子妃か伯爵令息の夫人になってるでしょ」
「なんの話をしてるんですか!?」
セレスは顔を赤くして大声で訴える。
リディアが先導し、応接室へ入った。そこにはノイマン男爵と男爵夫人がいた。
そう、リディアの両親である。
「初めまして、ハルモニア子爵家のセレスティアです。本日はご招待頂きありがとうございます」
セレスの挨拶に男爵や男爵夫人から挨拶を頂き、ソファに座って話をすることになった。
「もっと早くセレスを招待したかったんだけど、父様がどうしてもセレスと話をしたいって言ってね。世界を飛び回ってるからなかなか帰ってこなくて遅くなったのよ」
「そうだったんですか!」
「セレスティアさんの噂は娘から良く聞いているのよ。凄く良い声をしているわ。楽器の音色みたい」
「母様は皇立吹奏楽団のメンバーだったの。今も時々、演奏会に参加してるのよ」
「本当ですか! じゃあグローリア・ハレにも」
「ええ、何度かね。結婚と出産で休職しちゃったけどね」
リディアの音楽のルーツは母親からであった。
男爵夫人の影響で音楽を始め、今に至る。
「今回、セレスティアお嬢様と話がしたかったのは商談を兼ねた繋がりが欲しかったのですよ」
ノイマン男爵はゆったりとした口調でセレスに声をかける。
(聞き取りやすくて穏やかな声だわ。こういう声色の商人って安心できるのよね)
「アウレアの咲く恋。私も中央広場で予告映像を見させていただきました。非常に先進的で商売意欲をかきたてられる映像だったと思います」
「商売意欲ですか?」
「はぁ……」
リディアがため息をつく。
「父様は口を開けば商売、商売だから気にしないであげて。私が殿下のアニメプロジェクトに関わってることを聞いて根掘り葉掘り聞いてくるのよ。もちろん家族であっても秘匿事項は話していないわ」
特に結晶関係の話はこれからの帝国の魔導研究の未来となるので機密事項となっていた。
なので人々はアニマ・メドゥスによるものと知っていてもどのようにして魔法を出したり、看板にイラストを出したりするかは分からないままであった。
「今回のアニメのタイトルのアウレア。あれはハルモニア市の名産物、アウレアの花の蜂蜜から来ているのではないですか?」
「男爵様、ご存じだったのですか」
「私は交易品を取り扱っておりますので。ハルモニア産のアウレアの蜂蜜は外国でも評価が高いのですよ」
「嬉しいです!」
「そしてアニメの予告映像にあったお城。あれは旧エルデンブルク王城をモチーフにしているのではないでしょうか」
「そこまでご存じだったのですか」
「商人ですから」
男爵はほっほっほと恰幅の良い体で笑う。
セレスはふとリディアに視線を向けるとこういう人なのという言葉が見えた。
「私の予測ですがこのアニメの成功の際にはとんでもない経済効果が生まれると思っています。特にタイトルにもなっているアウレアを人々は求めるでしょう。かつて帝国楽劇で題材になったことで財を成したケースがありました」
それはセレスも把握していた。聖地巡礼なんて言葉があるのはファンがこぞって集まり、求めるからに他ならない。ただあくまで成功が前提はある。
「本題に戻りましょう。私はハルモニア子爵家と取引を行いたいのです」
「子爵家とですか?」
「ハルモニア産アウレアの蜂蜜は、ハルモニア市ではよく見かけますが帝都では流通量がそう多くありません。他の地方の蜂蜜に押されているのが原因です。ですが私は品質を見るからに貴族夫人達には受けるのはハルモニア産だと思っています」
「……」
「それなのに流通してないのは商人達が帝都貴族の牙城に食い込めていないからではないかと思います。そこで帝国貴族向けに取引もできる、我がノイマン商団が帝都での流通をまとめましょう。悪い話ではないはずです。そこでセレスティアお嬢様には子爵様にお取次をお願いしたくて……、もちろん子爵様に確認する時間が」
「もったいないので早速動くことにしましょう。今夜、速達の文を父に送るので近日中に担当者を男爵様の元へ向かせます」
「え」
ノイマン男爵は驚いたような素ぶりを見せた。
想定ではお嬢様では判断できないと見てここで繋がりを作り、直接子爵家に行くつもりだった。
そこから話を詰めていく予定だった。
「ハルモニア子爵家も帝都での流通が進んでいないことが悩みでした。それをノイマン商会が担ってくださるならありがたいです。あ、私は子爵家当主からある程度事業について委任されているので判断することができます。すでに子爵家ではアニメによる経済効果を予想して増産体制に入っていまして、あとは帝都流通に強い商会と出会うだけだったんです。だから今回の話はかなりありがたく、できればすぐに動きたいのです」
「ほほぅ」
ノイマン男爵は声を上げる。
「娘がセレスティアお嬢様はただものではないと言っておりましたが……いやはや、むしろこちらの方に適正ああるのでは」
「あはは……社交が苦手なので経済の勉強ばかりしてたので」
「これはお嬢様と呼んではいけませんな。セレスティア様。是非ともよろしくお願いします」
双方、良い取引ができそうで会話が弾むことになる。
あっという間には時間は過ぎてしまった。
「ディナーもご一緒する予定でしたが、アウレアの流通のための資料作成をしたく失礼させて頂きますよ。セレスティア様、ごゆるりと」
男爵は立ち上がり、あっという間に去ってしまった。その動きにリディアはため息をつく。
「商売になるといつもああなの。仕事好きもあそこまでいくとね……」
「アウレアに目をつけたのはさすがですね。勉強になりました」
「セレス、ウチで良かったの? 帝都流通に強い貴族なら他にもいるし、多分殿下に頼んだらもっと良い条件の貴族を紹介してもらえたでしょう」
「そうかもしれません。でも」
セレスは自信を持った表情で答えた。
「先のことも考えるとノイマン商会に頼んだ方がいいと思います。他ならぬリディアさんがいますからね」
「わたし?」
「私はリディアさんに初めて会った時、ソノーラ魔法に可能性を感じました。アニメを通じてソノーラ魔法の凄さが知れ渡った時、ノイマン男爵家と繋がりがあったらハルモニア市に演奏会とかしてもらえるんじゃないかなって」
「そういうこと。確かにアニメ制作に誘ってくれた恩義もあるから格安で開いてあげてもいいわ。2回目からは正規の報酬をとるけどね」
セレスとリディアは笑い合う。年の差も少しあるが二人は確かに友人として心を通わせていた。
男爵夫人が二人の様子を見て微笑む。
「この子、一時期荒れてた時期があったの。でも良かったわ、理解者がたくさんいるのね」
「ちょ、お母様!」
母の言葉にリディアは恥ずかしがる。
「ええ、私も殿下もみんなリディアさんのソノーラ魔法が大好きですから」
男爵夫人の作ったディナーを召し上がり、セレスはエミリオと遊んでいた。
入口に扉が開く。
「ただいま戻りました」
「あなたお帰りなさい」
リディアが足早く玄関口へ行く。
(あの方が)
マルティン・ノイマン。リディアの夫で婿としてノイマンを名乗っている。
元は平民で年は30歳。ノイマン男爵の部下として働いており、リディアが一目惚れして押しに押しに押して結婚にごきつけたらしい。
ちなみにこの情報はリディアがことあるごとに伝えてくるので会ったことないのにセレスはほぼ知っていた。
マルティンがセレスに近づく。
「初めましてセレスティア様。マルティンと申します。いつも息子を可愛がっていただきありがとうございます」
メガネをかけた温和な表情をする男性に見えた。
「初めまして、お噂はかねがね、リディアさんから聞いています」
「そうですか……」
「セレス、殿下やジュリアン君は何してもいいけどマルティンだけは駄目だからね」
「出会ってからマルティンさんへの愛を聞かされてるので大丈夫ですよ」
「その口ぶりだと……上位貴族の方々にまで知られているのですね」
マルティンは天を仰ぐ。
リディアはセレスだけでなく、関係者すべてに夫への愛を語っている。
見た目が秀でているため、既婚者に言い寄ってくる男に対しての牽制と本人は言うがリディアを知れば知るほど本気で夫を愛していると分かる。
「パパお帰りなさい!」
エミリオも近づき、マルティンが子を持ち上げる。
そこへリディアが寄り添い、夫婦子供そろって仲睦まじい関係が見れた。
(なんか羨ましいな。私もいつか……)
セレスはリディアの私室で泊まることになった。
エミリオはマルティンに預け、二人で眠ることになる。
「セレス、何をしているの?」
寝る準備を整えていたところ、セレスは机で何かを書いていた。
「詩を書いてるんです。今日あったことを詩として書き留めてるようにしてるんですよ」
「いいじゃない。ちょっと見せてもらってもいい?」
リディアは詩帳を受け取り、ペラペラとめくる。
「いいじゃない。感情もこもってるし、才能あるわよ。音楽をつけたらいい歌になりそう」
「それはちょっと恥ずかしいですよ」
「ふむふむ、ちょっと前まで闇っぽい内容が多いわね。そんなに世間に絶望してたの?」
「アニメに携わるまではいろいろありましたから……」
声のことで婚約破棄され、バカにされ、あの時代のセレスの詩はもっとも過激だったに違いない。
リディアは内容的に突っ込めず、さらにペラペラとページを捲る。
「最近はなんかちょっと甘酸っぱい詩が多いわね。何かいいことあった?」
「うわぁっ! そのあたりは恥ずかしいので読まないでください」
ちょうどハルモニアに帰省した時と誕生日パーティに参加した時の話だった。
リディアはにまっとした顔をしてセレスに近づく。
「それで? 聞きたかったんだけど殿下とジュリアン君と何があったの?」
「……っ!」
突然の言葉、セレスの頬が赤く染まる。
「……聞いてくれますか。正直相談できる人がいなくて」
「殿下が関わってるならそうなるわよね。それで」
セレスはハルモニアの帰省であったこと、そしてジュリアンに誘われて誕生日パートナーに参加した時ことをリディアに話した。そして。
「ジュリアンに婚約者になってほしいって言われて」
「本当に! やったじゃない」
「で、でも! 私、混乱して考えて欲しいと言っちゃって」
「あら」
「ジュリアンに失礼なことをしたのに普段通り話しかけてくるし、怒ってないのかなって」
そんなセレスの様子をリディアをじっと眺めた。
「普通断ったりしないですよね」
「そりゃそうでしょ。ベルモント伯爵家なんて上級貴族よ。失礼な言い方だけど地方の子爵家からすれば雲の上の存在。後継じゃないから伯爵妻にはなれないけどそこまでは望んでないでしょう? 自由気ままにアニメに携わって、豊富なお小遣いで帝国楽劇も見放題。旦那はイケメン、イケボで理解もある。百二十点じゃない?」
「ぐぐぐ……私も同じことを考えました。じゃあ……もしリディアさんがジュリアンから声をかけられたら」
セレスはゆっくりとした口調で問いかける。リディアの回答はとても早かった。
「受けないわ。だってわたしはマルティンを心から愛しているから」
「……」
「セレスは殿下のことが好きなのよね。きっとわたしが夫だけしかかんがえられないように」
「……」
セレスはこくんと頷いた。
「だって……私の声を好きだと言ってくれたんです。そんなの好きになってしまいます」
「そうね。殿下はセレスの声が大好きだから」
「でも現実は甘くないです。レオン様は皇太子だから地方の子爵令嬢との身分の差がありすぎます」
さらに実家に帰ったときにかつてトップスタァとなった令嬢が皇子と結婚した時の話をリディアにした。
「私がプリマステラとなって侯爵位を得たとしても皇太子とは結婚できないと思います。結婚するなら」
「殿下に皇太子を退いてもらうしかないということね」
「そんなの言えるはずないです」
そもそも皇帝の子供は三人いて、皇子はレオンだけである。ヨノエルともう一人の子は女子だ。
この時点でレオンが次期皇帝になることはほぼほぼ決まっている。
「前例を取っ払って、殿下がセレスを妻にしたとしても皇妃の仕事をセレスにお願いする人ではないわね。あなたはアニメの声優であることが一番の望まれてることだから」
皇紀となった場合はとてもじゃないが声優などをやっている場合ではなくなる。
レオンがそれをセレスに強いるなんてセレスも思っていない。
「ジュリアンのことはとても好意的に思っているです。優しくて、尊敬できる人。声も……。でもどうしてもレオン様がよぎってしまって……私はどうしたら」
セレスは思い悩み、言葉を吐く。そんな問いにリディアはにこりとした。
「キープでいいんじゃないかしら」
「え」
とんでもないことを言い出し、セレスは止まってしまう。リディアの声は真剣そのものだった。
「あなたの年齢は適齢期ではあるけど、役者として考えるならまだ2、3年は猶予があると思う。3年もあればアニメがどういう方向になるか決まるわ」
「そうですね。帝国楽劇に匹敵する新しい興行になっているか、その逆か」
「帝国楽劇に匹敵する形ならプリマステラに価値は出ている。その頃にはレオン殿下は何かしてるでしょ。してなければ諦めてジュリアン君の想いを受け入れたらいいのよ」
「な、なるほど。そもそもレオン様が私のことをどう思っているかによりますけど」
(ベタベタでしょ。未婚の子を執務室に連れ込む時点で好意がない無理よ。でも殿下と結婚するのは多分修羅の道。ジュリアンくんと結婚する方が安牌だけど恋愛結婚したわたしにはそれは言えない)
「はぁ……」
「ごめんなさい、夜に重い話をしてしまって」
リディアの思った以上の重い息に雰囲気はどんよりとしてしまう。
「でもわたしは殿下やジュリアンくんだけが相手じゃないと思うのよね」
「へ?」
「アニメが流行れば流行るほど、セレスに近づく男は多いと思うわ。あなたモテるでしょ」
「そんなことないです! って思ってたんですがアレクサンダー様の誕生パーティに出てからたまに手紙をいただくようになって」
「誕生日パーティで綺麗にしてもらってからだいぶイメージ変わったもの。おまけに……」
リディアはセレスの体つきを舐め回すように見つめる。
「なんですかその視線!」
「さっき一緒にお風呂入った時に思ったけど……」
「お腹のお肉はこれから取るんです!」
「そっちじゃ……ってわたしには関係ないからいいか。アニメが落ち着くまで関係を進めないのはありだとおもう。第二回が終わってもすぐに第三回があるでしょう。今は貴族だけどアニメは平民を巻き込んだ興行を予定しているんだから次が一番忙しくなると思うわ。恋をする余裕ないかも」
「そうですよね。私もジュリアンも……殿下も」
「わたしもオスカー様も……オスカー様なんてどう? 侯爵家の後妻もありじゃない? オスカー様もイケメンでいいと思うけど。あ、エミリオはだめだからね。今はセレスのことが大好きだけどさすがに歳の差が十五近くも違うのは」
「もう恋の話は終わりです!寝ましょう!」
セレスとリディアのワイワイとした会話は夜更けまで続くことになった。
でもセレスの顔は少しだけ軽やかになった。誰かに相談したことですっきりとした感じだ。
(今はプリマステラを目指して頑張ろう。恋はそれからでも遅くないよね。……でも一度答えはちゃんとださないと)
セレスは目を瞑り、今後のことを考えながら眠りにつくのであった。




