表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/65

035 馬車の中で二人きり

 ハルモニア市までは馬車で1日半ほど。適度な休憩は必要となる。

 休憩時は馬を休ませて、セレスもまた馬車の中で休憩をしていた。そんな中、外からレオンに声をかけられた。


「もちろんです。どうぞ」

「すまないな」


 セレスの対面の席にレオンはどっしりと座る。


「皇家の馬車に比べれば座り心地は悪いかもしれませんが」

「俺は軍属の時にいろんな乗り物に乗ったから気にしないさ。姉上はそのあたりうるさいから気をつけた方がいいかもしれん」

「ヨノエル様に乗って頂くのは恐れ多いです」


 思わず苦笑いをしてしまう。

 日暮れまでに宿場町へ行かなければならないので出発することになった。


「レオン様のこと、お父様にどう説明すれば良いでしょう。面識は無いですよね?」

「ないな。だが心配しなくていい。手は打ってある」


「そうなのですか!?」

「俺とディートリヒはたまたま立ち寄った放蕩貴族。接待は不要という形にする予定だ」


「大丈夫でしょうか……」

「あの男なら大丈夫だろう」

(あの男……?)


「それにハルモニア子爵は質実剛健、華美な暮らしは好まないと聞いたことがある。セレスもその意思を受け継いでいるのではないか」

「私の場合は目立つのが苦手だったのでそうなるのは必然的ですよ」


 セレスは声のこともあり、なるべく目立たないように振る舞っていた。

 なので子爵家の方針に思わずも一致していたのだ。


「もったいないな。着飾った君は絶対に美しいと思うのに」

「っ! 冗談がすぎます」


 レオンのような魅力的な男性にはっきりと言われて、セレスは顔を真っ赤にし顔を反けてしまう。

 こうやって馬車の中で二人きりという状況下ですら緊張してしまうというのに。

 少しだけ気まずくなり、無言が続く。レオンがセレスの方を向いた。


「俺はハルモニア市に行ったことがないんだ。案内してもらえないか?」

「あ、もちろんです! ハルモニアには良いところいっぱいあるので気にいっていただけると思います」

「打ち合わせで話そうと思っていたんだが、第二回のアニメの舞台は地方都市を考えている。もしハルモニア市を舞台にできそうならそれをネタに脚本を書きたい」


「あのハルモニアでラブロマンス……。正気ですか?」

「1発で表情が変わったな。あくまで参考にするだけさ。今、演者がセレスとジュリアンしかいない以上、たくさんのキャラクターを出演させることはできない」


 いくらセレスが七色の声を操れるといっても、主要キャラクター全部セレスにさせるわけにもいかない。

 演者の数と規模を考えると帝都を舞台にするのはまだ難しかった。


「前も話したと思うが第一回上演会はいわばトライアルだ。失敗してもリカバリーが効くようにしていた」


 対象を騎士団として、遠征部隊という貴族の中でも少し距離を置いたもの達を対象として披露をしたのだ。

 結果的には成功し、次につながる形となった。

 これはアニメだけではなく関係者もだ。

 オスカーとリディアはアニメを通じて自分のやりたいことがちゃんと世間に広まるか見ていた。

 第一回のアニメの成功を見て、第二回への参加も了承。

 ジュリアンも本来は1回だけという条件だったが主演を行えたことの喜びから第二回への参加も快く応じたのであった。


「だが第二回は相手を貴婦人と定めた以上、絶対に失敗はできない」

「そうですね。アニメが貴婦人達の気に召さなければ流行にはならないと思います」


 そうなればオスカーとリディアはアニメ制作から離れるだろう。

 ジュリアンもアニメを見限り、帝国楽劇一本に専念するかもしれない。


「そのためにはちゃんと脚本を作らなければな。貴婦人や令嬢達の心を揺さぶるような脚本を」

「レオン様ならきっと大丈夫です。第一回も大好評だったじゃないですか。アンケートでも脚本の出来を誉めている方ばかりでした」

「皇子に対しての忖度かもしれないが」


「私は殿下の脚本がすごく好きですよ。演じていてすごく楽しいです」

「……君の声で言われるとすごく嬉しいな」

(照れてるのかしら。なんだかちょっと可愛い)


 クスリとセレスは笑い、今度はレオンが視線を外す。


「でも今回私が主演なんですよね。前回はジュリアンが主演をやってくれたので気が楽だったのですが、かなり緊張しそうです」

「セレスなら大丈夫さ。あと一応言っておくがセレスは主演であり、ヒーローであるんだぞ」

「え、……どういうことですか」


「貴婦人向けなのだからロマンスラブも三角関係でなくてはならない。セレス、男性の声もできる君にヒーローも演じてもらう。君はジュリアンと対決して自分を勝ち取れ」

「ええっ! 主演だけでもいっぱいなのに、ヒーローまで」

「帝国楽劇のトップスタァも二つの役を演じることがある。プリマステラも主演とヒーロー、どちらも演じられるようになって欲しい」


 セレスはステラという芸名をもらっている。

 帝国楽劇のトップスタァであるヨノエルといつか対等できる日がくるようにレオンの恩人であるステラの名を頂いた。

 主演もヒーローもこなすことができればステラの名声は響くだろう。


(私のこの声でトップスタァと同等の価値となるプリマステラになってみせる!

 って言いたいけどまだ気持ちが追いつかないのよね……。演じるので精一杯だし)


「……レオン様?」

「何かいるな」


 突然レオンは表情を引き締めて、セレスに動かないよう手まねきをした。馬車の窓を空ける。


「ディートリヒ」

「複数の魔物の姿が見えます。馬車を止めさせますね」

「わっ!」


 馬車が急に止まり、慣性によりセレスの体が飛び出す。

 痛みを覚悟したが、レオンが咄嗟に受け止めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ