027 公開:火竜討伐記~復讐の焔とリボンの騎士~②
「僕達は見てるだけだけど、殿下は8回アニマ・メドゥスを打たなきゃいけないから大丈夫かな」
「イラストの拡大魔法投影魔法も殿下がしてるんだっけ」
「本人は大丈夫と言っていましたが……少し心配です」
200人近く視聴者がいる中、本来のオスカーが作るイラストでは小さすぎて全員が見ることができない。そこで使うのが拡大投影魔法だ。
元々アニマ・メドゥスと平行して使う魔法で作戦立案図を不特定多数に見せるために図を拡大し、大きな用紙に投影をすることができる。今回も大きな用紙にイラストを投影することで大きなスクリーンとしてアニメを上映することが出来ている。
本来拡大投影魔法は別の魔法使いが担当する予定だった。しかし。
今回、準備に時間が取れないためリハーサルも最低限だった。絶対に失敗できないためレオンが自ら行うとかって出たのだ。
皇子主導のプロジェクトで失敗を犯したらというプレッシャーが発生しては意味がないからである。
「あっという間だったな。見入ってしまった」
「アニマ・メドゥスを使ってキャラクターを動かし、音楽と声を吹き込む。凄い技術だ。だがそれでも帝国楽劇の凄さには遠く及ばないな」
「そうかぁ。楽劇見たことないから分からないけど馬の動きとかも凄かったじゃないか」
「ヨノエル様は帝国楽劇場の中で乗馬をされたんだぞ。それに比べればこの程度じゃな」
『ガアアアアアアアアッッァ!!!』
「ひぃっ! ドラゴン!」
:巨大な火竜が現れた、火炎弾を吐き出した。
:轟音と地響きが世界を揺らしていく
「な、なんて迫力なんだ」
「おい。ヨノエル様は帝国楽劇場で火竜を手懐けたことはあるのか」
「さすがにそれはなかった気がする」
:火竜の強襲により、砦は火の海となる。
:エルヴィンは剣を掴み、部屋から飛び出す。
:アデライードもまた鎧を着て部屋を出た。
『何事ですか!』
『やっと見つけた……!』
『エルヴィン? エルヴィン! 突っ込んでは駄目です!』
:火竜を見つけ、突き進むエルヴィン。しかし高度があるため攻撃は届かない。
:火竜が口を開く。 喉の奥で赤い光が渦巻く
『みんな伏せてください!』
:火竜のブレスにより砦の塔が炎に包まれ、 石壁が崩れていく。
『くそっ!』
:エルヴィンが弓を使って矢を放つが、強靱な鱗を持つ火竜には効果がなかった
:エルヴィンは剣を抜き、火竜に近寄ろうとする。
『エルヴィン、無謀です!』
『離せ!あれは俺の仇なんだ! あいつだけは!』
『仇……?』
:火竜が再び口を開く。 喉の奥で光が渦巻く。二度目のブレスが放たれた。
『うわあっ!』
『きゃあっ!』
:何とか直撃は避けられたものの、二人は吹き飛ばされて気を失う。
:火竜は高く飛び上がり、去って行った。
:騎士団の完全な敗北だった。
再びグラウンドホールが暗転する。
「すげぇ迫力だったな……。俺達ワイバーンくらいしか戦ったことなかったけど、でもあれくらいの迫力あったよな」
「二十年前に別の遠征中隊が火竜と戦ったことがある。想像を絶する戦闘だったらしい」
「音楽も竜の動きに合わせて響いてた」
「エルヴィンが仇って言ってたけど、タイトルの復讐の焔はエルヴィンを指すのか。リボンは当然アデライードだよなぁ」
「うぅ……ドキドキする。早く続きを」
2枚目のイラストが巻き取られて、3枚目のイラストが表に出た。
レオンは拡大投影魔法とアニマ・メドゥスを発動し、3枚目のイラストを動き始める。
(今、ちょっと魔法が揺らいだような……)
ずっとこの魔法見てきたセレスだから気付いたこと。セレスはテーブル席からすっと離れた。
:夜明け。 炎上した砦。煙が立ち上る。 崩れた壁、焦げた地面。
:死傷者はかなりの数に昇った。
『ここにはもういられませんね』
『近隣に村がある。そこへ行くぞ』
:騎士達は近隣の村へと向かう。
:アデライードが足を滑らせる。
『あっ……』
:エルヴィンが咄嗟に腕を掴む。
『大丈夫か』
『……ええ。すみません』
:村に到着したエルヴィン達。村人が出迎えてくれた。
『まあ、騎士様たち!どうなさったんです。そんな傷だらけで!』
『火竜に襲われてしまい、手当をしたいのです。手を貸して頂けませんか』
『まぁ凜々しいお嬢さんね。村長を呼んでくれるのでちょっと待ってね』
:村長のマルタがやってきた。エルヴィンの姿を見て驚く。
『エルヴィン……久しぶりですね』
『ああ……世話になる』
『気にすることはありませんよ。あなたはまだあの頃の……」
『火竜は俺が必ず討つ』
:夕日が村を染める。 エルヴィンとアデライードは村の外れに座っている。
『……エルヴィン』
『何だ』
『昨日はありがとう。ブレスからわたくしを庇ってくれたでしょう』
『……知らんな』
『わたくしあなたのことを誤解していました」
:アデライードは俯く。
『あなたはとても優しい人。まだ出会ったばかりだけど、それだけは分かるのです』
『……』
『教えてくれませんか?あなたが、なぜそこまで火竜を憎むのか』
:エルヴィン黙り込んでしまう。
『気が向いたらな』
『……分かりました』
『あんたそのリボン……ずっと付けているな』
『ええ、思い出のリボンなんです。これがある限りわたくしは戦っていられる』
:アデライードはエルヴィンの手にそっと手を重ねる。
『アデライードと呼んでください、エルヴィン』
『……アデライード』




