30、観劇に誘われました
ミサが終わると、クライドはベティに言った。
「週末に行われる劇の席が取れたのですが、一緒に行きませんか?」
「まあ、劇ですか? 素敵ですこと。どのような劇ですか?」
クライドは俯いて、顔を隠しながら言った。
「素敵な恋物語と聞いています。ベティ様がお好きかと思いまして」
ベティはそれを聞いてにっこりと微笑んだ。
「ロージーも呼んでも良いかしら?」
「まあ、私は構いませんが……遅い時間ですから子どもには辛いかも知れません」
クライドがそう言うと、ベティは悩んだ。
「そうですわね。それなら二人で見ましょうか」
ベティは首をかしげてクライドを見上げた。
「では、今週末にお迎えに参ります」
「ありがとうございます、クライド様」
クライドはベティを連れて教会を出た。
ベティはクライドに送られて、屋敷の前まで歩いて行った。
「おかえりなさいませ、ベティ様」
「ただいま、ロージー」
「ロージー、週末はクライド様と二人で観劇にでかけようと話しておりましたが、ロージーはお留守番でもよろしいですか? それとも一緒に行きたいですか?」
ロージーは困ってしまった。
「私には選択権はありません。あえて申し上げるなら、お二人で過ごされた方がくつろげるのでは無いでしょうか」
「では、クライド様と二人で劇を見に行きますわ。その日の夕食は、いりませんから」
ベティは少し寂しそうに微笑んだ。
クライドはロージーに言った。
「もし劇を見てみたければ、一緒に行っても良いですよ。ロージーさん」
「私には仕事もありますから」
ロージーはそう言って、ベティに暖かなスカーフを渡した。
「それでは今週末、ベティ様をお借りします」
クライドはそう言って、自分の屋敷に帰っていった。
「観劇なんて、久しぶりですわ」
「カール様とは一緒に行ったのですか?」
「あの方はお仕事で忙しくて、それどころでは無いとおっしゃっていましたわ。ですがもう、カール様は関係の無い方。気にすることはありませんわ」
ロージーはぽつりと呟いた。
「劇場でお会いしたりしなければよいのですが」




