29、オーレリアとクライド
夜のミサで、ベティはクライドと会った。
「こんばんは、クライド様」
「こんばんは、ベティ様」
「今日は少し冷えますわね」
「そうですね」
クライドはそう言うとベティが風に当たらないよう、さりげなく風上に立った。
「あら、クライド様、ベティ様、ごきげんよう」
「オーレリア様」
ベティは驚いて声を上げた。
「まあ、お二人とも仲のよろしいこと」
オーレリアは扇子を口元に当てて微笑んだ。
「今日のお昼には、クライド様の噂話をしておりましたのよ」
「そうですか?」
クライドは方眉を上げて、オーレリアの方を見た。
「ベティ様は、クライド様に首ったけのようですわよ」
オーレリアは悪戯っぽく、クライドに囁いた。
「それはどうも」
クライドは噂話には興味が無いようだが、少し耳の端が赤くなっている。
「クライド様もベティ様には、かなわないようですし」
「ははは」
珍しくクライドが笑い声を上げた。
ベティはオーレリアの袖を引いて、たしなめる。
「オーレリア様、そろそろミサが始まりますわ。お静かに」
「はいはい、邪魔者は去りますから、後はご自由に」
オーレリアは扇子をひらひらと振りながら、前の席に歩いて行った。
「オーレリア様は悪い方では無いのですけれど、噂話が大好きですから」
ベティは困りながら、オーレリアをかばうように微笑んだ。
「そうですか。ベティ様が私に夢中とは初めて伺いました」
クライドは悪戯っぽく微笑んで、ベティの腕を優しく掴んだ。
「もう、クライド様! ほら、ミサが始まりますわ」
ベティは腕を掴む手に、自分の手を重ねた。




