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3、お茶会

 ベティはクライドのお茶会の誘いに乗ることにした。

「いつまでもくよくよしていても、仕方の無いことですし」

「そうですね。では、こちらからお茶会への参加のことはコールマン家に伝えておきます」

 フローレス男爵はそう言うと、召使いを呼んで手紙を渡した。


 一週間が経った。


 ベティはお茶会にローズピンクのドレスを着ていくことにした。

「クライド様は怖いと評判ですが、大丈夫でしょうか……」

「ベティ、心配せずお茶会を楽しんできて下さい」

「はい、お母様、お父様」


 ベティは馬車に乗ると、コールマン家に向かった。

 風が心地よかったので、ベティの心は直ぐに晴れた。

「今日はなんだかよいことが起こりそうな気がしますわ」

 ベティは一人呟いた。


 コールマン家につくと、応接室に通された。

「まあ、立派なお屋敷。壁に掛けられた絵画も素晴らしいし、庭も素敵」

 ベティは目を丸くして、辺りを見つめた。

「何か、おかしな物がありましたか?」


 声がした。その方向を見ると、つり目につり眉をした、クライド・コールマンが立っていた。ベティは18才、クライドは7才年上の25才だった。

「はじめまして、クライド様。私ベティ・フローレンスと申します」


「初めてではありませんよ? ベティ様。先日の舞踏会でお会いしております」

 クライドは冷たい言葉とは裏腹に、笑顔を浮かべた。クライドは笑うと目尻が下がって、表情が柔らかい印象に変わった。


「この度は、婚約破棄されたとのこと、お気の毒です」

 単刀直入に言われて、ベティは表情をこわばらせた。

「あの、何故私をお茶会に呼んだのですか? それに参加者の皆様が見当たりませんが?」

 ベティも率直に話をした。


「ああ、それは私がベティ様と直接お話をしてみたかったからです」

「何故ですの?」

「貴方はいつも舞踏会で微笑んでいらっしゃったからです」

 ベティはその言葉の真意が分からず、首をかしげた。


「私は不機嫌なときは、つい表情に出てしまいます。ですから、いつもにこやかにしている貴方を少し尊敬しているんですよ」

「はあ」

 ベティは気の抜けた声を上げてしまった。


「貴方は気取らないのですね」

「そうですか? 私は何を考えているのか分からないと言われて婚約破棄をされてしまったのですよ?」

「そんな酷いことを言われたのですか?」

 クライドの眉が、ひくりと上がった。


「もう、終わったことですから、仕方有りませんわ」

 ベティは優しく微笑むと、クライドは目を丸くした。

「何故怒らないのですか?」

「貴方に怒っても仕方ないでしょう?」


 クライドはまた、優しい笑みを浮かべた。

「貴方はやはり素晴らしい人ですね」

「そうですか? それよりもそろそろお茶会を始めませんか? 執事の方が困ってらっしゃいますわ」

 ベティはそう言って、執事を見ると会釈をした。


「そうですね。気が利かなくて申し訳ありません」

「いいえ、こちらこそ出過ぎたことを申し上げてしまって」

 クライドはベティの椅子を引いて座らせると、自分も席に着いた。


「ベティ様は読書が趣味と伺っております。どんな本を読まれるのですか?」

「そうですね。その日の気分によって変わりますので、色々な本を読みますわ」

 話していると熱々のスコーンとアイスクリームが運ばれてきた。


「まあ、素敵。かかっているのはラズベリーソースかしら? 赤い色が可愛らしいですわ」

「どうぞ、召し上がってください」

 ベティはスコーンを頬張った。

「美味しい」

 ベティの笑顔に、クライドの動きが止まった。


「貴方は実に楽しそうですね。良いことです」

 クライドもスコーンを頬張った。

「実は、舞踏会でお会いしたときから、貴方に興味を持っていたのです。ベティ様」

「まあ、そうでしたの? 私全然気付きませんでしたわ」


 ベティは口元にラズベリーソースをつけたまま、きょとんとしていた。

 クライドは、ハンカチを取り出しベティの口元を撫でてラズベリーソースを拭き取った。

「ベティ様、口元にはお気をつけ下さい」

「ありがとうございます」

 ベティは顔を赤くして、俯いた。子どものようだと思い、クライドは微笑んでいる。


 しばらく、身の回りの話や、町の話、本の話をして、二人は打ち解けていった。

「あの、あんなことがあった後でこんな話をするのも何ですが、ベティ様はまだカール様のことを思っていらっしゃるのですか?」

「いいえ。もう、関わることも無いと思いますわ」

 ベティの表情が暗くなった。


「それでは、新しい婚約者候補に私を加えて頂けますか?」

「ええ!? 私、特に取り柄が有るわけでも有りませんし退屈しませんか?」

 クライドは少し悲しそうに微笑んだ。

「ベティ様は、おおらかで優しい方ですよ? それに今までお話ししていて退屈は感じませんでした」

 ベティは、困ってしまった。


 ベティとクライドは無言でお茶を飲み、スコーンを食べ終えた。


「もう少し、考えさせて頂けますか?」

 ベティの申し出にクライドは優しい笑みで頷いた。

「ええ、ゆっくり考えて下さい」


 クライドはベティの手を取って、屋敷の門まで送っていった。

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