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27、2人のお茶会

 ロージーは早起きだった。それは、フローレス家には小さな図書室があり、そこの本は自由に読んで良いと言われていたからだった。仕事前の朝の時間にロージーは簡単な本から読み始めていた。


 時計を見る。そろそろベティの起きる時間だとロージーは思い本を閉じてベティの部屋に移動した。


「おはよう、ロージー」

「おはようございます、ベティ様」

「今日は午後からクライド様の所に伺いますよ」

「はい」


 ベティは起きて身支度を調えると、町の様子を見に散歩をしたり、庭の花を愛でたり、刺繍をしたりして午前中をのんびりと過ごしていた。

「やっぱり貴族は優雅だな」

 ロージーは誰にも聞こえないように呟いた。


 午後になった。


 馬車に乗り、コールマン家に向かう。

「ロージー、家での暮らしには慣れましたか? 朝早くから本を読んでいるようですが、本は面白いですか?」

「ええ、ベティ様。知らなかったことが多いので大変勉強になります」


「ロージーはクライド様のことは怖くありませんか?」

「いいえ、普通だと思います。ベティ様の方が怖いです」

「まあ、何故ですの?」

「急に冷たくなるかも知れないからです」

「……そんなことはありませんわ」


 ベティはロージーに微笑みかけた。ロージーはベティが苦手だった。


「そろそろつきますわね」

「はい」


 ベティとロージーはコールマン家に着くと馬車を降りた。

「こんにちは、ベティ様、ロージーさん」

「こんにちは、クライド様」

 ベティと一緒にロージも挨拶をした。


「栗のお菓子はまだ手をつけておりません。三人がそろってからのお楽しみにしようとおもいましてね」

 クライドはそう言うと応接室に向かって歩き出した。

「ありがとうございます。ロージー、一緒にお茶をいただきましょう」


 ロージーは首を振った。

「いいえ、ベティ様。私は召使いの身です。遠慮させて頂きます」

「それでは、二人でお茶をいただきましょう」

 クライドはさして重要では無いと言う風に歩みを止めなかった。


「ロージーがいないと寂しいですわ」

「私は馬車で待ちますから、ご心配せず楽しんできて下さい。ベティ様」

 ベティは後ろ髪を引かれる思いで、クライドの後について行った。


 応接間につくと、クライドは椅子を引いてベティを座らせた。

「ロージーのことは気にしなくて大丈夫ですよ、ベティ様」

「でも……」

「こうして二人の時間が取れるように、配慮しているんですよ、ロージーさんは」

「そうですか?」


 クライドも席に着くと、執事が紅茶と栗のパウンドケーキとマロングラッセを運んできた。

「これだけの量を作るのは大変だったでしょう、ベティ様」

「いいえ、ロージーが手伝ってくれましたから。栗の扱いが大変上手なんですよ、ロージーは」

 クライドは微笑んだ。


「ベティ様はロージーさんがお気に入りなんですね」

「そうですか? そうですわね。ロージーは働き者で真面目ですわ」

「そうですか」

 クライドは紅茶を一口飲んで、ケーキをフォークで突いた。


「いただきます」

 クライドは栗の味が口の中に広がるのを感じた。

「おいしいですね。ロージーさんにも美味しかったとお伝え下さい」

「ええ」

 ベティもマロングラッセを一囓りして紅茶を飲んだ。

「良かった。ちゃんと味が染みておりますわ」


 クライドは、にこにこと微笑みながらも時折馬車の方を気にするベティを見て言った。

「そんなに気になるのでしたら、ロージーさんを部屋に呼びましょうか?」

「いいえ。ただ、ロージーが退屈していないか心配で」

「ロージーさんも一人になりたい時間があるでしょう」

 クライドはそう言って、紅茶を飲んだ。


「クライド様は色々考えていらっしゃるんですね」

 ベティは感心して、クライドの瞳をじっと見つめた。

 クライドは微笑んだ。


「これでも仕事で、色々な人間を見ておりますから」

 クライドはそう言ってマロングラッセを食べた。

「ベティ様もお仕事をなさっているんですか?」

 何気ない言葉に、ベティは固まった。


「私は刺繍をしたり、家の仕事を手伝ったり程度ですから、仕事というほどではありませんわ」

「そうですか」

 クライドはベティが申し訳なさそうにするのを見て、首をかしげた。

「ベティ様は今まで通りで良いのでは無いでしょうか」

「本当はもっと仕事をした方が良いのかも知れませんね」

 ベティはしゅんとして、俯いた。


「気にすることは何もありませんよ。ベティ様がくつろいでいらっしゃるだけで、家の空気が柔らかくなる気がします」

 クライドはそう言って、ベティの手を取った。

「ありがとうございます。そう言って頂けると気が楽ですわ」


 ベティはクライドの手を優しく包み込んだ。

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