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26、栗のお菓子作り

 ベティとロージーは夕食の前に、栗を洗って水につけた。

「明日の朝には皮が柔らかくなっているはずですわ」

「そうですね、ベティ様」


 夕食になった。


 ロージーは食事の際は脇に立っていて、ベティ達の食事が終わってから他のメイド達と夕食を取るようになった。

「ロージー、この家には慣れてきましたか?」


 ベティの父親がロージーに話しかけるとロージーは微笑を浮かべて答えた。

「はい。ベティ様が色々と気遣って下さっておりますので、大分慣れてきたと思います」

「ロージーはよくやって下さってますわ。今日も栗を沢山拾って下さいましたし」

 ベティは笑顔でロージーを見つめた。


 ロージーは曖昧な笑みでお辞儀をした。


「そういえば、クライド様はロージーに少し厳しく当たっているように感じますわ」

 ベティは父親と母親にそう言うと、スープを飲んだ。

「そうですか。クライド様は幼い頃から英才教育を受けておられるようで、ずいぶんと厳しく育てられたらしいからかもしれないですね」

 

 父親の言葉に、ベティはふとクライドのつぶやきを思い出した。

「そうですね。私はお父様とお母様に守られて幸せに生活してきておりますから、恵まれてますわね」

 ベティはそう言って、二人に微笑みかけた。


 夕食を終えると、ベティは部屋に戻ろうとした。廊下ですれ違ったロージーは、家の仕事をしていた。

「ロージー、明日は栗のパウンドケーキとマロングラッセを作りましょうね」

「はい、ベティ様」

「おやすみなさい、ロージー。今日は疲れたでしょうから早めに寝て下さいませ」

「……ありがとうございます」


 ベティは自室に入り、ベッドに入ると今日の出来事を思い返していた。

「クライド様はあまり幸せな子ども時代を過ごされていなかったのかしら?」

 散歩に栗拾いと歩きづくめだったベティは、疲れていたのか直ぐに眠りに落ちた。


 夜が明けた。


「おはようございます、ベティ様」

「おはよう、ロージー」

 ベティは起きるといつものように身支度を調えてから、台所へ向かった。


 台所に着くと、ベティは水につけていた栗を一つつまみ上げて指で押してみた。

「栗の様子はどうかしら? 皮は柔らかくなっているようね」

「そうですね。一つ剥いて見ましたが、よく身がつまっていました」


 ロージーはそう言って、剥いた栗をベティに見せた。

「まあ、素敵。栗は沢山有るから、午前中に剥き終わると良いのですけれど」

「頑張りましょう」


 ロージーは慣れた手つきで栗の皮をナイフで削り落としていく。

 ベティも落ち着いた手つきで栗の皮を剥いていった。

「ロージーはずいぶん慣れているようですね」


「はい。毎年教会のバザーで、栗のタルトを焼いて売っておりましたから。懐かしい気持ちになります」

 ロージーは微笑みながら、栗を剥いている。

 ベティは少し嬉しくなった。ロージーが微笑んでいるのが珍しかったからだ。


「アーロン神父は栗が大好きで、この季節には、よく焼き栗にして食べていました」

「そうですか。では、栗のお菓子が出来たら修道院に持って行きましょうか?」

 ロージーはベティを見つめた。

「良いんですか?」

「ええ、だって、栗はまだ沢山ありますから」


 ベティとロージーは昼食までにすべての栗をむき終えた。

 昼食が済むと、今度は栗のパウンドケーキと、マロングラッセを作った。

「もう夕方になってしまいましたね。まだ修道院は間に合うでしょうか?」

「急げば間に合うと思います」


 ベティとロージーは馬車に乗り、修道院に行くと栗のパウンドケーキとマロングラッセを孤児達に分け与えた。

「ありがとうございます、ベティ様。ロージー、栗なんて懐かしいね」

「うん」

 ロージーは孤児達と談笑をしていた。ベティはその様子を見て、すこしホッとした。


「次はクライド様のお屋敷に行きましょう。まだ夕食の時間にはなっていないはずです」

「はい、ベティ様」

 馬車は駆け足でコールマン家に向かった。


 クライドの屋敷に着くと、メイドが出てきた。

「こんばんは、ベティ様。クライド様がおまちです」

「あら、申し訳ありません。急ぎましょう、ロージー」

「はい、ベティ様」


 ベティ達は馬車を降りると、バスケットに入った栗のパウンドケーキとマロングラッセを持って、メイドの案内で屋敷の中に入っていった。

「これはベティ様、ロージーさん。いらっしゃいませ」

「栗のお菓子をお持ち致しましたわ、クライド様」

 ベティはそう言ってバスケットの中身を応接室の机の上に並べて得意げに微笑んだ。

「ロージーは栗の皮むきがとても上手でしたのよ」


 クライドはロージーを見て、軽く微笑んだ。

「ありがとうございます。お疲れでしょう、お茶でも飲んで行かれませんか?」

「いいえ。今日はもう遅いので、これで家に帰りますわ。ね、ロージー」

「ベティ様のおっしゃるとおりに致します」

 ロージーはクライドに会釈をすると、ベティの後ろに隠れた。


「それでは、ごきげんよう。明日はベティ様とロージーさんの作ったお菓子でお茶会をいたしませんか?」

 クライドの提案にベティは頷いた。

「素敵ですね。そう致しましょう」


 ベティとロージーは明日の約束をして、フローレス家に帰って行った。

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