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25/55

25、帰宅

 クライドとベティは昼食を終えると二人で散歩をした。


 ロージーは昼食の片付けをした後、ベティに言われて先に馬車に戻っていた。

「クライド様、ロージーにもう少し優しく接して頂けませんか?」

 クライドは意外な顔をしてベティに問いかけた。


「ベティ様、私はそんなに冷たく当たっていますか?」

「ロージーはまだ子どもです。物事を間違えることもあると思いますわ。しかも、今はアーロン神父が亡くなったばかりで、心が傷ついているでしょうし……」

 クライドはそれを聞いてため息をついた後、微笑んだ。


「ベティ様、ロージーさんを子ども扱いするのは逆に失礼だと思いますよ」

「え?」

 ベティは振り返った。思ったよりも近くにクライドの顔があり、ベティは戸惑った。


「ベティ様の優しさは、時によっては残酷になります。失礼を承知で申し上げますが、今ロージーさんに優しい言葉をかけても届かないのではありませんか?」

 クライドはそう言って、ベティの耳元でささやいた。

「ベティ様、優しくするのは貴方が優越感に浸りたいからでは無いですか?」


 ベティはきょとんとした顔で、クライドを見つめた。

「何故、私が優越感を抱くのですか?」

「何もかもロージーさんより恵まれているから、優しく出来るのでは無いですか?」

 クライドはそう言って、意地の悪い笑みを浮かべた。


「確かに、私は恵まれていますわ。でも、ロージーとは関係の無いことではありませんか?」

 ベティは分からないという素振りで首を振った。

 クライドは自分の疑り深い目で人を見てしまうクセに気付き、苦い気持ちをかみしめた。

「クライド様はロージーがいると、なんだかいつもよりも冷たいような気がしますわ」

 ベティは悲しそうな顔で、クライドを見つめた。


「ロージーさんを見ていると、人の嫌な部分を思い知るような気がするのです」

 クライドは素直に心の内をベティに話した。

「そうなのですか? ロージーは良い子ですのに」

 ベティはそう言って、クライドの頭を子どもをかわいがる時のように優しく撫でた。


 クライドは小さく呟いた。

「私自身が無邪気な子ども時代を送れなかったせいかもしれませんね」

 ベティはクライドのつぶやきには気付かず、そのまま歩いて行こうとした。


「そろそろ遅くなってしまいますね。ベティ様、馬車に戻りましょう」

 ベティはクライドの言葉で辺りを見回して、静かに頷いた。

「そうですわね。クライド様、戻りましょう」

 ベティはにっこりと微笑んで、クライドの手を取った。

 二人は手をつないで、馬車に戻った。


「おかえりなさいませ、ベティ様、クライド様」

「やあ、待たせたね。ロージーさん」

 クライドは少しこわばった笑みを浮かべてロージーに話しかけた。


 馬車に乗った三人はぎこちない会話を交わし、やがてベティの屋敷に着いた。

「それでは、栗はベティ様とロージーさんで料理するということでよろしいでしょうか?」

 クライドは確認するように聞くと、ベティは笑顔で頷いた。


「明後日にはきっと美味しいお菓子が出来ますわ。そうしたら、クライド様にもお届けに参ります」

「それではご厚意に甘えることにしましょう。ロージーさんもお疲れ様でした」

「いいえ、クライド様。仕事ですから」

 ロージーはそう言って、ベティの荷物とバスケットと栗の入った袋を抱えて屋敷に戻っていった。


 ベティはクライドの頬にキスをした。

「クライド様は色々と難しくお考えすぎなのですわ。あんなに素敵な紅葉を見て、栗も沢山拾えて、私は楽しかったですわ」

 クライドは咳払いをして、気まずさをごまかした。


「……ベティ様にはかないません」

 クライドはそう言ってから、馬車に乗って自分の館に戻っていった。

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