what happened
story NO.8
小学校に着くと校庭にはお父さんも誰もいなかった。
さっきのおじいちゃんの会話が不吉で不気味な気分に加えて校庭でひとりぼっちの寂しさに思わず大きな声で叫んだ。
「お父さーん!どこおるん!?」
返事はセミの鳴き声しか聞こえてこない。
もうすぐにでも家に帰りたくなった時だった。
お父さんが激しく息切れしながら自転車に乗って校庭へやってきた。
来るなりグローブを俺に渡すと怒りを堪えきれてないトーンでキャッチボールを始めると言いだした。
俺はもうキャッチボールより今日はみんな変な気がしてたまらなくなっていた。
だが、お父さんは気合いを入れて投げて来いとグローブを叩いている。
そして持っているボールを思いっきり投げてきた。
「おえ!優!本気で投げてけぇ!」
お父さんはホームベースのど真ん中にグローブを構えて怒鳴っている。
もう俺はヤケクソになってお父さんに向けてボールを思いっきり投げた。
「バシッ!!」
ボールがグローブを弾くいい音が校庭に鳴り響いた。
「もう一発思いっきり投げてけぇ!」
お父さんの返球も全力だ。そしてもう一度投げようとしたその時だった。
「ピーポーピーポーピーポー」
小学校の前の道路を救急車が通りかかって来た。
俺は投げようとしたボールを投げず救急車を見てモーションを止めてしまった。するとお父さんがまた大きな怒鳴り声で
「なんしょんなら!」
と怒りながら俺の方へと近づいて来ている。
俺は救急車の助手席を見るとなぜかおばあちゃんが乗っている事に気付いた。
「お父さん!救急車におばあちゃんが乗ってるよ!」
お父さんはパッと立ち止まり、怒りが戸惑いへと変わっていくように小さな声で呟いた。
「オフクロが救急車!?なんでな。どうゆう事な!?」
俺はもしかしたらおじいちゃんに何かあったかもしれないと思うと胸がバクバクしてきて喉が締め付けられるような苦しみを感じたら泣きそうになってきた。
「優、すぐに家に帰るで!早よグローブ、チャリのカゴに入れて俺の側から離れるな!!」
俺とお父さんは急いで校庭を出た。
お父さんは自転車を手で押しながら俺を守るように車道側を歩きながら周囲を警戒して家に帰った。
俺は不安で胸がいっぱいになっていたから帰り道は何も話せなかった。
セミの鳴き声さえ耳には入ってこないような、心が凍りつきそうな帰り道だった。




