光の騎士と2人目の召喚勇者
結。
「遂にここまで来ましたね。」
目の前には魔王の居城。
築100年に近い魔王城は、見るものを圧倒させる威圧感を放っていた。
「ええ。あと少しです。」
四天王の3人までを撃破し、残る幹部は少なく、魔王まであと少し。
魔王側も来るのを分かっているのだろう。
その扉は開け放たれていた。
「行きましょう。」
「はい。」
扉に近づくと、一人の魔族が佇んでいた。
「貴様らが勇者一行か。」
「……お前は?」
「我は魔族四天王が筆頭、リィル。魔王様第一の配下だ。ここまで来たのは褒めてやるが、通すわけにはいかん。」
「そうか、なら押し通るのみ!」
カティは特大剣でリィルに斬りかかる。
対するリィルも同じような特大剣を出してそれを受け止める。
「ぐぅ!人間にしては何たる馬鹿力!」
「くっ、よもや受け止めるとは!」
その後も2回3回と剣を合わせる。
お互いに身の丈ほどもある特大剣を難なく振り回していた。
「光弾!」
「闇壁!」
そして時には魔法も打ち合う。
拮抗した戦いはされど、徐々にカティが押し始めた。
何合かの打ち合いの後、リィルの特大剣が半ばで折れる。
カティの特大剣に耐えられなかったのだ。
「ちぃ!」
「覚悟!」
カティは特大剣を袈裟切りに斬りつけた。
「ぐぅぅ無念、あと少しで大陸の制覇が……魔王様、御無事で……。」
そう言うと、リィルは倒れた。
「……天晴な敵だった。小細工もせず堂々と。彼も騎士だったのだろう。」
「そうですね。」
殺し合い、なれど、互いに全力を尽くした死闘は清々しいものだった。
カティの頭は汗に濡れ、一段と輝いていた。
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魔王城は閑散としていた。
いや、静まり返っていたという他ならない。
カティ達に向かってくるものはいなかったが、隠れている者の気配が多くあった。
「……当然だが、非戦闘員もいるのか。」
「不思議な感じですね。魔族にも生活があるでしょうから、いろんな者がいるのでしょうが……。」
カティの独り言にアヤが反応する。
「そうですね。もしかしたら彼らも必死なのやも知れません。100年前、魔大陸は突如として現れたと言います。彼らもこの世界の住人ではなく、異世界からの者でここを彼らの安住の地とするために、我らに対して侵略を始めた可能性も考えられます。」
「それは……悲しいですね。」
「ええ。しかし、どんな理由であれ、我々も滅ぼされるわけにはいきません。とにかく侵略を是とする魔王を倒し、目下の脅威を除かねば。」
「……はい。」
しばらく魔王城内を歩くと、大広間に出た。
いや、謁見室か。
玉座には魔王が座っていた。
「……よく来た勇者と騎士。人間どもでここまで辿り着いたのは、貴様らで4組目だ。」
100年で4組。
そのチャンスの少なさに、カティは改めて決意を固めた。
「しかし、余はここにいる。貴様等も先達と同じようにここで朽ちよ。もう少しで、安全な大陸の統一という、余の悲願が叶うのだ。」
魔王は無手で立った。
しかし、その威圧はそれまで立ちはだかった魔族のどれとも比べ物にならなかった。
「行くぞ。」
魔王はカティに殴りかかった。
カティはそれを特大剣で受け止める。
しかし、カン、と音をたて、あっけなく特大剣は折れてしまった。
「な、私の剣が……。」
「どうした?終わりか?」
「まだまだ!」
カティは光魔法を全身にまとうと、同じく素手で殴りかかる。
奇しくも、騎士団で習った徒手空拳が生きていた。
厳しい訓練が無ければ負けていただろうと、カティは拳をぶつけながら思った。
「ふん、さすが勇者の騎士といったところか。だが、なぜ勇者は攻撃に参加しない?」
「サポート役やヒーラーに、殴り合いをさせるわけにはいかないだろう!」
「……確かに妙な力を感じるな。まぁよい。貴様から順に倒して行けば問題ない!」
その後も応酬は続く。
魔王の力は凄まじかった。
過去には、幹部を倒した記録がいくつかある。
しかし、それでも魔王と戦って帰ってきた者はいない。
100年の戦いの歴史を生きる魔王は、実力、経験共に段違いのものがある。
それでもカティは互角に戦っていた。
神の僕に与えられた力、そして無限ともいえる魔力のバックアップ。
殴り、裏拳を入れ、蹴りを避け、蹴りを避けられる。
肘を出し避けられ、殴られて、膝蹴りを入れるも、どれも有効打にならない。
カティは紙一重で避けていたが、それは魔王も同じだった。
「人間の分際でよくもここまで!」
「それはさっきの四天王筆頭とやらにも言われた!」
互いに拳を合わせ、一旦離れる。
「貴様、本当に人間か?その体力と魔力、なぜ尽きぬ!」
「私は人間だ。魔族の暴威を取り除き、人類が平和に暮らすため、魔王を倒す。」
「小癪!」
再び魔王はとびかかる。
しかし、ただとびかかるだけではない。
「闇手!」
闇の手を出し、さながら4本の腕を使っているように殴りかかる。
「光拳!」
一方のカティも負けていない。
光を拳に纏い、闇の手を打ち消す。
光と闇、互いに有利属性であり、弱点属性であるため、魔法を行使した殴り合いは、いつしか消耗戦になっていった。
カティと魔王が肉弾戦を繰り広げているころ、部屋の隅で勇者であるアヤはひたすらカティに魔力を送り続けていた。
魔力を送っているだけのため、肉体的な消耗はない。しかし、精神的には消耗する。
そして、カティと魔王が魔法を交えて肉弾戦を行い始めると、徐々にカティの魔力の回復量が消耗量に追いつかなくなってきた。
(まずい!魔力が足りない!もっともっとカティさんにおくらないと!)
しかし、願いは通じず、徐々にカティは劣勢に立たされた。
「なぜ、貴様はここまでやる? 余の大陸統一までもう少し。あと20年もあれば達成出来よう。滅びは確実なのになぜ王でもない貴様がそれを命がけで背負うのだ?」
魔王自身も少なくない傷を負っている。
しかし、それもカティと比べると大したことはない。
魔王は、ボロボロになっても戦い続けるカティに疑問と少しの恐怖を覚えた。
一方のカティは、既に利き腕が思うように動かなくなっていた。
魔力の回復量も、消耗量が多すぎて徐々に足りなくなってきている。
意識を少し朦朧とさせながらも、カティは答えた。
「それは、魔王に問われようと、神の僕、いや、神に問われても変わらない!なぜ、そんな理不尽を許容しなければならないんだ!王がどうしたというのだ!滅びがどうしたというのだ!そんな理不尽許してたまるか!」
いつもの冷静さを欠きながら、カティは叫んでいた。
同時に左足で魔王を蹴りつける。
しかし、光魔法の練り込みが甘かったのだろうか。
カティには左足が折れたのが分かった。
「ぐうっ!」
「そのような満身創痍になりながら良くやった。しかし、ここまでだ。勇敢なる騎士よ、名乗れ、覚えておいてやる。」
カティはそれがひどく腹立たしかった。
まだ自分は全くやれると思っていた。
オニルミア騎士団の教え、すなわち、――『剣が無くとも腕がある。腕が無くとも足がある。足が無くとも体がある。体が無くとも頭がある。』――それが骨の髄まで叩き込まれていたのだ。
そしてアヤは自分の無力を嘆いていた。
確かに最初は、カティを含めてこの世界の全てを憎んだ。
しかし、カティの誠実な人柄に触れ、徐々に心惹かれていった。
それは髪の毛が無くなっても変わらない。
むしろ、より惹かれるようになったと言ってよかった。
そのカティが目の前でボロボロにされている。
アヤは考えた。
自身に何が出来るのか。
元より自身は戦闘などできない。
ならば何が出来るのか。
――魔力の吸収と贈与。
結局、最初から最後まで変わらないのだ。
勇者は強く願った。
魔法はイメージであるという。
もし、自分の能力が魔力そのものに関することならば……
「沈黙せよ!」
アヤは魔法の無い世界で育った。
だから魔法の無い空間を想像し、創造するのは容易だった。
その効果は一瞬のみ。
たった一瞬。空間から、魔力そのものが、消失した。
一瞬である。
魔王は目の前が真っ暗になった。
勇者が叫んだのは分かる。
しかし何が起きたかは分からなかった。
その一瞬の隙をカティが見逃すはずは無かった。
カティは魔王に体当たりをすると、魔王を床に倒し、カティはのしかかった。
「魔王よ捕まえたぞ。この至近距離は避けられまい。」
「うぅ、何を……。」
魔王は思うように体が動かない。
「これで最後だ!!!」
既にカティも、両手両足が満足に動かない。
ならば、やることは一つ。
カティは光魔法を、己の全てを懸けるほどの光魔法を、頭に集めた。
カティの頭の輝きが増す。
力を手に入れて以降、よく頭が輝くようになったが、今の輝きはその比ではない。
「ま、待て! 余が死んだら……」
カッと謁見の間が光に包まれると同時に、頭突きの衝撃音。
光が落ち着くと、そこには上半身が無い魔王の遺体と、カティが倒れていた。
「カティさん!」
アヤはすぐに駆け寄る。
「ぅ、アヤ様……御無事で……。」
「カティさん!死なないで!い、今魔力を!」
アヤはこの時ほど魔法が使えないのを悔やんだことは無かった。
「アヤ様……最後までお供できず申し訳なく……しかし、魔王は倒しました……どうか人生に安息のあらんことを……」
「い、いやぁ、助けて誰か……お兄ちゃん……。」
「綾か!……カティさん!?」
そのときである、謁見の間の入り口にもう一組の勇者パーティが雪崩込んできた。
「お、お兄ちゃん!た、助けて!」
「任せろ!……サリア!回復魔法をかけ続けろ!俺もかける!アニルとルルトは水の調達!頼んだ!」
手際よく、勇者は指示を出し、パーティのエルフとともに回復魔法をかける。
徐々にカティは顔色を取り戻し、そして意識を回復した。
「……どうやら私は助かったようですね。」
「カティさん!良かった!私、私……。」
アヤは泣きじゃくる。
「勇者殿、貴殿のおかげですか。助かりました。」
「いえ、自分こそ、啖呵を切っておいて大事な時に間に合わず申し訳ありません。」
「それは、連絡を取る手段も無いし仕方ないでしょう。……しかし、何とか私は助かりました。本当に感謝しています。」
「カティさん……。」
「帰りましょう。今後の世界はどうなるか分かりません。しかし、魔王が敗れ去ったことをまずは伝えてあげないと。」
「ええ。」
その笑顔と頭は、これ以上なく、輝いていた。
光の騎士たるカティと、2人目の召喚勇者であるアヤは、魔王を打倒し、人類に平和をもたらした存在として、歴史に残った。
彼らの魔王討伐後の足取りは定かではない。
各種族の平和のために奔走したとか、魔王を喪った魔族の保護のために人生を尽くしたとも言われている。
しかし、確かなことは一つ。
黒髪のメガネをかけた女性の傍らには、生涯変わらず、眩しい光を放つ騎士がいたという。
本編完。
ちょっと設定。
・光の騎士
カティ・サーラーク
22歳。
超イケメン。性格よしのヒーローの体現者。
超性善説主義者。
サーラーク侯爵家の四男。
実家とは少し疎遠。
資産を孤児院とかに寄付して、自らは質素な暮らしをしている。
他人の幸せを願い、理不尽に抗おうとした結果、暴走する(笑)
必殺技は頭突き。
・2人目の勇者
アヤ・タカナシ
16歳。
巻き込まれた勇者。高校生。
当初は無能とされたが、
誰も使えない、「魔力回復」を使える。
ブラコン。
ハゲたカティに完璧に惚れる。
・勇者君
本編で15歳くらいと言われているが、実際は18歳。




