フォーグレンの神官46
「カネリ!止めて!お願い!」
タリザの血を吐くような声が、神殿内に響く。
しかしカネリは目を閉じると、火の『神石』を握った。『神石』が杖に変化する。
「火の神よ!」
カネリの声に応じて、火の龍が杖から現れる。そして龍はまっすぐラズナンに向かった。
「火の神!!止めて!ラズナン様!」
悲鳴を上げるタリザの前で火の龍がラズナンを捉えるのがわかった。龍はラズナンをその口にくわえると空高く登った。
「カネリ。あなたをわたしは絶対に許さないわ。絶対に」
タリザはカネリにそう言うと背を向けた。そして振り返ることなく、城を後にした。
「カネリ、カネリ!」
目をうっすらと開けると、心配そうな顔でネスが覗きこんでいた。
「うなされていたぞ」
ネスはそう言いながら、カネリの額に浮いた汗を拭おうとした。しかしカネリは布をネスから奪うように取ると、ゆっくりと体を起こした。そして自分で汗を拭う。
いつもながら強情なカネリにネスは苦笑したが、その様子に回復しているのが見て取れ安堵もした。
ネスの視線の先でカネリは、眉をひそめ窓から外を見ていた。その横顔には皺が刻まれ、カネリの苦労が見て取れた。いつもの張りつめた空気は消え、小さく見えた。
「大丈夫か?」
ネスはカネリを抱きしめ安心させたい気持ちを押さえるため、小さく息を吐くとそう聞いた。
「タリザの夢みた……。あの時の……。嫌な予感がする」
カネリはベッドの上で布を両手で握りしめると、辛そうにそうつぶやいた。
「……タリザか…」
ネスは久々にその名前を聞き、十七年前のことを思い出した。
多くの者が犠牲になったあの時……。
カネリは友を失った。
そしてネスとキィラは多くの友と指導者を失った。
シュイグレンは王太子を失った。
嫌な記憶がよみがえる。
嫌な戦いだった。
ネスはカナリ同様、開け放たれた窓から空を見た。太陽が西の空に消えようとしていた。
パン!
ふいに破裂音が聞こえた。そして眩い光が部屋の中で弾ける。
「ごほっつ、ごほっつ」
「何よ、これ?!」
そんな声が聞こえて、光が人の形を取った。カネリとネスが見つめる中、煙が消え、人影がはっきりと見えた。
「セン、ターヤ!」
「ロセ、キィラか?!」
カネリとネスが思わぬ来客に驚きの声を上げる。
センの姿のアルビーナとロセの姿のミシノは、二人に微笑むと、神官らしく一礼をした。
「ただいま戻りました。大神官様」




