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第二日 高知 3/5


 そのまま14号を走り、浦戸《うらど》湾の手前で北上した。本日のメインは高知市内の観光である。中心部である帯屋町《おびやまち》にバイク用の駐輪場を見つけ、二人は街へ繰り出した。

「さーて、何を奢ってもらおかな」

 まずは早めの昼食を摂りに向かう。

「一本釣りのカツオっていくらぐらいするんやろ……あら、数千円? こんなもんか」

 楓はスマホをいじりながら不穏なことを呟く。

「マグロみたいに何百万とかせえへんねんな」

「ほとんどのカツオは五、六十センチぐらいやから」

 そもそも一尾まるごと買ったところで捌《さば》けないだろう。

「ここはもう佛跳牆《ファッチューチョン》を出してくれる店を探すしか……」

「高知関係ないやん」

 財布に不安を覚えながらも、ひろめ市場へ到着した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

○ひろめ市場

高知城にほど近い巨大なフードコート。

数十の出店から好きな料理を注文し、適当な席に座りいただく。

食器は専門のスタッフが回収してくれるので、席に置いたままでよい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 予想はしていたがべらぼう(・・・・)に混んでいる。市場というわりには、業者より旅行客に向けた施設だ。

 人波に揉まれながらも店を回り、鯨のタタキ・鯨カツ・ウツボのタタキ・あおさの天ぷら・芋けんぴを購入した。どうにか確保した席に向かい合って腰を下ろす。

「鯨ってウチ初めてかもしれんな……食ったことあったっけ?」

「俺も記憶にございませんやな」

 かつては日本人に広く親しまれていた鯨。時代の潮流により、今となってはすっかり希少な食材となってしまった。

 タタキをひと切れつまみ、ゆっくりと口へ運ぶ。

「お、わりとあっさりしてる」

「でも美味いな」

 続いて鯨カツにも箸を伸ばす。

「んー……サバのフライに似てる?」

「せやな……つーかなんで鯨のフライやなくてカツなんやろ」

 タタキとカツを交互に味わい、無料の水で口の中をリセットした。

「あおさもいってみるか」

 サックリとした歯ごたえと同時に、磯の香りが口の中に広がった。

「まさに海藻って感じ」

 続いてウツボのタタキに箸を伸ばす。

「ウツボは確実に初めてやな」

「ウチはここに来るまで、ウツボが食えるってことを知らんかったわ」

 テレビかネットで観たことがあるが、太い蛇のような体を持つ、逞《たくま》しく獰猛《どうもう》な魚といった印象を受けた。

「おお、プルプルしとる」

「本来の見た目とのギャップがすごいな……」

 皮は香ばしく、肉の食感はもっちりと弾力に富んでいる。あとから調べたところ、ゼラチン質がやたら多いため独特の舌触りになるとのこと。

 デザートの芋けんぴはとにかく硬かった。

「顎の鍛錬かこれは」

「毎日食ってたらジャックになれそうやな」

 作業のようにガリンゴリンとけんぴを噛み砕き、最後の一本を楓が口に含む。

「っ……!」

 それを飲み込んだところで、急に姉は目を見開いて固まった。

「なんや、喉に刺さった? 芋けんぴ殺人事件か?」

「髪に付ける分を残しとくん忘れとった」

「アホか」


 そろそろピークに差しかかろうという時分だった。周囲には、料理を手にして遠巻きにこちらをうかがう人の姿が見られる。もしかしなくても席が空くのを待っているのだろう。

 二人はいそいそと席を明け渡し、高知城へ赴いた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

○高知城

江戸時代初期、山内一豊《やまうちかつとよ》によって建てられた城。

日本で唯一、本丸の建造物群が当時の姿のまま残っている。

日本三大夜城のひとつにも選ばれている。

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「アンタ、歴史や城に興味あったっけ?」

「いやあんまり。姉貴は?」

「ウチも……まあ普通やな」

 このままでは自分の考えたプランにダメ出しされてしまう。こすい知恵を働かせ、渚はここを訪れるに値するような理由をひねり出した。

「でもここって現存十二天守? のひとつらしいやん? 一応観とこかと思て」

「その理屈やったら伊予松山城と宇和島城と……あと丸亀城も観なあかんことにならへん?」

「細かいなあ姉貴は……」

 追手門《おうてもん》を過ぎた二人は板垣退助の像を撮り、石樋《いしどい》や忍び返し、石落としといったギミックを見物した。石樋は石垣から突き出た樋のことで、雨水を効率良く排水することによって地盤の緩みや石垣の崩壊を防いでいるそうだ。

 本丸へ入り、大河ドラマで仲間由紀恵が着用したとかいう衣装の展示を眺める。天守に上ると、高知の街を全方位見渡すことができた。

「高い建物なくない?」

「……多分あれや、景観条例みたいなやつで規制されとんよ」

「ほんまかいな?」

 地上に戻り、城郭の南側へと抜ける。渚は正面と後方を交互に見て言った。

「ここって城のすぐ横? 裏? に県庁があるんやな」

「福井県庁なんか福井城の本丸跡に建っとるんやで」

「何それ、石川とか岐阜が攻めてきたときのため?」

「ああ、それとバイオテクノロジーで秘密裏に蘇らせた恐竜で防備を固めとるらしいわ」

「アホか」


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