3、ポロワン
(今日のモンスターはおかっぱ先輩も気に入るはず!)
レイアは見回りを終えて訓練場に走って行った。ネストは他の隊員と剣で訓練をしていた。
「先輩、今日もお願いします!」
レイアの声に、訓練をしていたネストたちは止まった。
「じゃあ俺は休憩に入るわ」
「ありがとうございました」
相手をしていた先輩隊員が手を上げてその場を離れた。ネストはまたレイアと対戦することにした。
「今日は一番かわいいモンスターを持ってきましたよ! かわいくて、しかもモフモフです!」
(モンスターを禁止すればよかった……)
ネストは剣を構えた。レイアは掌を前に出した。
「いでよ! ポロワン!」
今度は大きなピンク色のうさぎが現れた。一八〇センチぐらいはある。ずんぐりとして腹と手足の先は白く、後ろ足で座った姿勢で、両手を前で突き合わせていた。額にモンスター特有の角が一本あり、目は赤く、耳は長くて垂れ下がっていて、毛足が長くてフワフワだ。
(このモンスターは見たことがないな。確かに見た目はかわいい)
ネストはその容貌に感心した。レイアはポロワンの首に下がった、オレンジ色の小さな箱を掌で指し示した。
「それに今回はモンスターの声を聞くために、魔法使いにモンスターリンガルを作ってもらったんです!」
箱には細い溝が数本と、その下に赤い丸いボタンが二個付いている。レイアがボタンを押すと、箱から高い声が流れてきた。
『こいつ弱そうだな。頭かち割って、脳みそからエネルギーを吸い出すぜ!』
それを聞いてネストは絶句した。
(子供が聞いたら泣いちゃうだろ。これは流してはいけないやつ)「こいつ凶悪すぎるだろ」
「え!? そんなことないですよ」
「今の聞いてただろ。俺をやる気満々だぞ」
レイアはポロワンを見た。ポロワンは拳を左右にシュッシュと突き出していた。
「……ヤル気はあると思います」
「そっちのじゃないから。そいつは危険すぎるからダメだ」
「そんな~。こんなにかわいいのに」
『ちっ』
「今そいつ舌打ちしたぞ」
ネストがポロワンに注意を向けると、ポロワンは微動だにせず口から長い舌を出してレイアの頬を舐めた。
「この子ったら!」
レイアはくすぐったいと笑ったが、頬は唾液でびっしょり濡れていた。
(うわぁ……。今の、エネルギーを吸い取ったんじゃないか?)
ネストがげんなりすると、ポロワンはネストを見て笑った。
『ウヒヒヒ』
その声にネストはゾッとした。
「笑い方も見た目と合ってない……。大体何でそんなものをつけたんだ。まったく金の無駄遣いだ。
——はっ! もしかして、俺に精神的ダメージを与えるためか!?」
準魔鉱石は魔法使いが加工して、魔道具にしたりするが、魔道具は高価だ。
「何か言いました? 独り言ですよね」
「俺は今、お前に話してたんだが……。もういい、さっさとそいつをしまえ。今日はここまでだ」
「はい……」
レイアはおとなしくポロワンを石に戻すと、石もその場から消した。
(転移魔法は高度で魔力消費も激しいが、魔鉱石は元々消える性質を持っているから、それほど魔力はいらないだろう)
ネストは独学で魔法を学んでいるので詳しい。そろそろ見回りの時間なので、ネストはレイアを置いて練習用の剣を片付けに行った。
(よくもまあ、変なモンスターばかり集めたな。そういえば——)
『私、モンスターを百体集めてるんです。ゆくゆくはドラゴンを捕まえるのが夢です!』
(ドラゴンは一国に匹敵する破壊力を持つといわれてるから、さすがのレイアでも無理だろとか思ったけど、なんで百体なんだ。友達百人とかのノリなのか?
それなら恋愛結婚、絶対無理だろ。相手がそれを知ったら、裸足で逃げだすぜ。逆立ちして手で逃げだすかもな。それだと遅いからこいつに掴まるか。……ん? あいつの結婚なんか俺にはどうでもいいんだよ)
ネストは我に返って考えるのをやめた。レイアは黙っていればかわいらしい令嬢だが、中身はポロワンと同じで凶悪だと思った。




