第55話 大崎凛の悶々4
毎度おなじみ皆のお姉さん、大崎凛よ。って、もうそれどころじゃないのよ!
俊と……キス……しちゃったし。
ああぁ、私はブラコンじゃないはずなのに、もう頭の中が俊のことでいっぱいだ。
もう、俊に責任とってもらうしかないのかな? 一生、私を甘やかしてもらうとか?
「凛ちゃん! 凛ちゃん! 凛ちゃんってば!」
さっきから真美の声が聞こえるかと思っていたら、突然肩を揺すられた。
「凛ちゃん! 聞いてる?」
「えっ、あ、真美……」
目の前にドアップの真美がいる。
そうだ、私は真美に呼び出され、いつもの喫茶店で一緒にお茶してるのだった。
「ごめん真美。ちょっと考え事をしてた」
私は両手を合わせ謝った。
すぐに話の続きを聞こうとする。確か、文芸部の夏合宿から帰ってきたばかりなんだよね。
「それで夏合宿の話だっけ?」
「それがね、私……またやっちゃったの」
また? もしかして、地獄の尻車とか? それとも、○○○白玉あんみつとか?
聞くのが怖いけど、私はそっと問いかける。
「合宿で何かあったの?」
真美が文芸部の合宿先に押し掛けたのは知っていた。
どうやって調べたのか分からないけど、真美は文芸部の合宿先や宿泊場所も把握していたのだ。
初日に押し掛けると部活の邪魔をしちゃうからと、一日置いてから出掛けたみたいだけど。健気だよね。
「そ、それがね……ううっ、わた、わたし……ああぁ」
真美が泣き出して、私は慌ててハンカチを差し出した。
「真美、どうしたの?」
「ごめん、私、また暴走しちゃって……」
「うん」
「抑えようと思ってたのに、ううっ、仲が良さそうな俊くんと万里小路さんを見てたら、もう言わずにはいられなくなって、ぐすっ」
真美はハンカチで目を押さえ、嗚咽を漏らしながら話し続ける。
「違うの。ホントは謝ろうとして……。無理やりキスしたのを謝ろうとしたのに、気持ちが抑えられなくなって、こ、告白をしちゃったの」
「こ、告白?」
えっ、ついに真美が告白を。
「でもね、俊くん、困った顔をしてたの……」
「真美……」
「分かっちゃったんだ。俊くんの中に万里小路さんがいるって」
真美の感情が止まらない。次から次へと溢れ出るように。
「どうして私って、いつもいつもタイミングが悪いのかなぁ? ここじゃないって時に暴走しちゃう。だってしょうがないじゃない、男の子のこと全然分からないんだもん」
真美……。
「小学生の時は『乳デカ女』とかってイジメられて。でも、中学生になると告白されたり。胸しか見てないのに『前から好きでした』って。全然分かんないよ」
分かるよ。イジメてたくせに、急に手のひら返すとか考えられないよね。
「でも俊くんは違うの。ずっと私を守ってくれた。すっと優しくしてくれた。こんなの依存だって分かってるよ。優しい俊くんに依存してるって。でも諦められないの。私には俊くんしかいないんだから」
俯いてしまった真美に、私は手を差し伸べた。彼女の手をギュッと握る。
「真美」
「凛ちゃん」
どうしたら良いんだろう。ちょっと前だったら、確実にくっつくと思ってたのに。
「やっぱり、万里小路さんを闇討ちするしかないのかな?」
真美が物騒なことをつぶやいた。
「ちょ、お、穏便に……」
「冗談だよ」
「真美の冗談は分かりづらいのよ」
この子、普段は凄く良い子なのに、俊のことになると危険なのよね。変なスイーツを食べさせようとしたり。
「はぁ、万里小路さんって可愛いよね。いつも怖そうなオーラ出してるのに、俊くんの前でだけ可愛くなるの。あんなの反則だよ」
確かに。あの孤高の女王が、俊の前でだけ壊れ気味にデレてるのよね。何で気づかないのかなあ、俊のやつめ。
「もう私には万里小路さんに勝つ方法が無いよ」
「そ、そんなことない! 真美は幼馴染でしょ。ずっと仲良くしてきたんだから」
「でも、幼馴染は負けヒロインって聞いたから」
誰が余計なことを吹き込みやがったんだぁああ!
でも、確かに俊の持ってるラブコメ漫画では、幼馴染ヒロインが負けてたわね。
「あっ、そうだ、一つだけ勝つ方法があった」
真美は、何か思いついたように手を鳴らした。
嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
「凛ちゃん、結婚しよ」
「は?」
今、結婚と聞こえた気がしたのだが? 聞き違いじゃないよね?
マイフレンドよ、キミはどうして思考が飛躍するのだい?
「凛ちゃんと私が結婚すれば、私と俊くんは義理の姉弟になれるよね」
「えっ? その……」
「姉弟なら一緒にお風呂とか添い寝とか合法だよね♡」
「そんな訳あるかーい!」
しまった。ついツッコミを入れてしまった。
「だって、凛ちゃんは俊くんと一緒にお風呂や添い寝をしてるんでしょ?」
「ギクッ!」
「凛ちゃん、今ギクッて言った?」
しまったぁああああ! 予期せぬ方向に飛び火して、怪しい反応をしてしまうなんて!
真美は訝しむような顔をしている。
「凛ちゃん、今日の凛ちゃんって、何か変だよ?」
「へ、変って、ふ、普通だよ」
「俊くんと何かあった?」
「ギクッ!」
「ほら、またギクッて言った」
マズい! マズい! マズい! 私が俊のキスしたのだけは隠し通さないと!
「安心して、凛ちゃん。姉弟なら普通だよ。キスくらい」
「だ、だよね~普通だよね~」
「やっぱりしたんだ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
あれっ? 何で?
私は真美の誘導尋問に引っかかったのか?
真美の威圧感が激増しているのだが?
「凛ちゃん、やっぱり俊くんとキスしたんだ?」
「えっ、そ、その、何で?」
「気づくよ。凛ちゃん、恋する乙女みたいな顔で物思いに耽ってたから」
「ええっ!」
「私が俊くんのこと妄想する時と同じ顔してたよ」
待って待って待って! 私、そんな顔してた?
「凛ちゃん」
「ひゃい」
「結婚しよ♡」
真美が私の手をギュッと握り、ヤンデレ気味な瞳で見つめてきた。
「ちなみに拒否は認めませ~ん♡ 姉弟でイチャイチャしてる凛ちゃんが悪いんだよ。先ずは地獄の尻車と○○○白玉あんみつの練習台になって♡」
「たぁ~すぅ~けぇ~てぇ~」
こうして、私は真美と百合ルートに入りそうになってしまった。このままじゃ私、真美に堕とされちゃう!




