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誰にも媚びない孤高のS級ヒロインが、最近なぜか俺にだけ優しいのだが ~ドS級美少女の瑛理子先輩は、俺が好きすぎてデレを隠し切れない~  作者: みなもと十華@書籍&コミック発売中
第2章 瑛理子先輩は俺にだけ優しい

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第54話 修羅場な夜

 俺と真美さんが別荘に戻ると、凄い勢いで瑛理子先輩が向かってきた。


「俊く……大崎君! 無事なの!? 何かされなかった……って、えっ?」


 勢い勇んで迫った瑛理子先輩だったけど、俺と真美さんの空気がおかしいのを察した。


「えっと、真美さん……外は暑いので、中で涼みましょうか?」

「うん……」


 俺は瑛理子先輩に目配せすると、真美さんを促して別荘に入った。



 マズい。俺のせいで場の空気が……。


 真美さんは、すっかり元気がなくなって、ソファに座ったままボーっとしている。

 瑛理子先輩は、張り合う相手を失ったかのように戸惑いを隠せない。


「いいかお前ら、私は少し部屋で休むから、不純異性交遊をするなよ」


 操ちゃんは、先生っぽいことを言い残し、寝室に入ってしまった。

 慣れないウォーキングで疲れたのだろう。



「あんたねえ、また何かやらかしたでしょ!」


 困り果てた俺のところに、雅先輩がやってきた。

 いつもは元気なメスガキっぽいのに、こういう時は頼りになる。


「メスガキ先輩」

「あんた喧嘩売ってるわけ? この生意気後輩が」

「すみません、素で間違えました」


 俺は襟を正し、雅先輩に向き直る。


「雅先輩、俺に男女関係の心理を教えてください」

「えっ、そ、そんなの、雅が知ってるわけないでしょ」


 しまった。相談する相手を間違えた。

 雅先輩がキョドリ始めたのだが。


 見た目に反して大人な先輩かと思っていたのに、やっぱり見た目通りだった。


「おぉい、俊っ! どうすんだよぉ、このギスギス展開」


 メアリー先輩が俺に抱きつき、それまで静かに座っていた真美さんの目が見開いた。


「俊くん♡」

「あの、真美さん……」


 真美さんは立ち上がり、俺のところまでやってきた。


「俊くんって、万里小路さんだけじゃなく、黒森さんとも仲が良いよね?」


 しまった。真美さんの告白の返事を躊躇《ちゅうちょ》して、瑛理子先輩との仲を疑われていたのに。これじゃ俺がハーレム野郎みたいじゃないか。


「真美さん、これは違くて……」

「俊くん、やっぱりお仕置きが欲しいのかな?」


 怖い! やっぱり真美さん怖い!

 普段は優しいお姉さんなのに、怒らせると一番女王様かもしれない!


「あの、真美さん。ごめんなさ――」

「謝らないでって言ったでしょ」

「は、はひぃ」


 やっぱり怖い! 顔は優し気なのに雰囲気がドSなんだけど!


「はぁ、やっと調子が出てきたみたいね」


 それまで静かに見守っていた瑛理子先輩が、やっと口を開いた。


「望月さん、何があったのか知らないけど、あなたらしくないわよ。いつものあなたなら、どんな険しい障害が待ち受けようと、自力で破壊して突き進む女でしょ」


 瑛理子先輩の言葉で、真美さんの目に活力が戻った気がする。


「そうね、私らしくないよね。俊くんに一度振られたくらいで」


 ピキィィィィーン!


 真美さんの一言で、場の空気が凍った。


「えっ、ふ、振ら……」

「ば、爆弾発言っスよ!」


 メアリー先輩が絶句し、雅先輩が右往左往する。

 そして瑛理子先輩は、頭を抱えてうずくまってしまう。


「あああぁ……何で私は、敵に塩を送っているのかしら……」

「瑛理子先輩、大丈夫ですか?」

「今、大丈夫じゃなくなったわよ!」


 瑛理子先輩が俺に掴みかかってきた。


「お、落ち着きましょう!」

「これが落ち着いていられるかしら!」


 瑛理子先輩までヤンデレっぽい目つきになった。


「優しく一晩中抱っこしてくれたかと思ったら、今度は他の女に告白されたですって! それわざとなの!? わざと私の心を弄《もてあそ》んでるのかしら?」

「ひぃいいいいいい!」



 俺は四人の先輩にこってり説教されてから、やっと解放された。

 若干、メアリー先輩と雅先輩は楽しんでいただけの気もするが。


「よし、お待ちかねの王様ゲームをするか! 顧問の操ちゃんも寝ていることだし!」


 待ちきれないとばかりに、メアリー先輩が声を上げた。その手には、先ほど使ったくじ引き箱を持っている。


「メアリー先輩、この状況でやるんですか? ヤバくないですか?」


 俺の言葉に、瑛理子先輩が気色ばむ。


「あなたに拒否する権利があるのかしら? 女たらしの大崎君」


 瑛理子先輩が刺々しい。最近は丸くなったと思ってたのに。


「私はやります。俊くんとエッチなことできるなら」


 真美さんの口から「エッチ」とか出てきたのだが。おかしいな、真美さんは清純なはずなのに。

 そして、この言葉に瑛理子先輩が噛み付いた。


「あなたにだけにはエッチさせないわよ!」

「ふーんだ、俊くんは万里小路さんに渡しませーん」

「なんですって!」

「私と俊くんは、熱い本気キスをしてるんですー!」

「わ、私だってキスくらいしたわよ! ラブラブよ」

「何ですって!」

「何よ!」


 しまった。二人の調子が戻ってきたのは嬉しいけど、暴露大会が始まったのだが。もう居たたまれない。


「おい、俊! どういうことだよ! あたしの知らない内に、他の女とキスしやがったのかぁー!?」

「この生意気後輩、片っ端から先輩女子を堕としまくってるんですけどぉ!」


 メアリー先輩と雅先輩までキレた。もう修羅場確定だ。


「お、落ち着きましょう! 王様ゲームやりますから!」




「じゃあ始めるっスよ。王様だーれだ」


 雅先輩の掛け声で、王様ゲームが始まった。

 文句を言っていたはずなのに、始まったら意外とノリノリだ。


「あっ、私だ」


 真美さんが、印のついた割り箸を高らかに掲げた。


「じゃあね、王様の命令は……俊くんが私にキスをする。きゃっ♡」


 真美さんは、恥ずかしそうに頬を染めた。

 他のメンバーは呆気に取られてしまったけど。


「あ、あの、真美さん。王様ゲームは割り箸に書いてある番号を指名するんですよ」

「それじゃ俊くんとキスできないよ」


 えええぇ、そういうゲームじゃないような……。


「望月さん、勝手なルール変更は認められないわ!」


 すぐに瑛理子先輩が立ち上がった。


「最初に明確なルールの規定はなかったでしょ。王様がルールなんでーす」

「何ですって! ぐぬぬぬぬぬ!」


 また真美さんと瑛理子先輩が一触即発に。


「俊くん、お願い……」


 真美さんが俺をジッと見つめる。

 告白に答えなかった心苦しさからだろうか。心がチクチク痛い。


「えっと……で、では、頬なら」

「うん!」


 俺が首を縦に振ると、真美さんは笑顔になった。

 どうしてだろう。振ったみたいになったのに、やっぱり真美さんに微笑んでもらえると嬉しい。


「じゃ、じゃあ、いきます」

「うん♡」

「って、真美さん、何でスマホを構えてるんですか?」


 俺がキスをしようとしたら、真美さんがスマホのカメラを向けているのだが。


「えっ、既成事実?」

「そんなの認めないわ!」


 瑛理子先輩は、必死に真美さんの撮影を防ごうとしている。若干《じゃっかん》、楽しそうに。

 仲が悪そうでいて、本当は仲良しみたいだ。


「では……」


 俺は、そっと真美さんの頬にくちびるを寄せた。


「「「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!」」」


 他の先輩たちから睨まれながらのキスとか、どんな地獄展開だよ。

 めちゃくちゃやり難いのだが。


 続いて二回戦に入った。


「やったわ! 今度は私が王様よ! やったやった! よしっ!」


 次は瑛理子先輩が王様を引き、珍しくハイテンションだ。


「じゃ、じゃあね、お、大崎君が私を優しく抱っこして……き、きき、キスぅ……」

「は? 瑛理子先輩、頭大丈夫ですか?」


 しまった。あまりにも衝撃的発言だったので、素でツッコミを入れてしまった。


「あなたねえ、何で私の時だけ態度が違うのかしら!?」

「つ、ついビックリして」

「こういうゲームなのよ、しょうがないじゃない! 王様の命令は絶対なのよ!」

「瑛理子先輩は王様じゃなく女王様ですよね!」


 プリプリと怒った瑛理子先輩に、強引に押し切られてしまった。


「じゃあ、行きますよ」

「ええ……」


 瑛理子先輩を抱き寄せると、彼女は耳まで真っ赤になって震え始めた。


「うくぅ、は、恥ずかしい。皆の見ている前でなんて、恥ずかしくて死んじゃいそう」

「瑛理子先輩が命令したんですよね!?」

「あ、あなたも恥ずかしがりなさい! 不公平だわ」


 そんなこと言われましても。めちゃくちゃ恥ずかしいのですが。


 プルプルプルプルプル!


 俺の胸の中で震える瑛理子先輩が愛おしい。

 やっぱり可愛い人だな。

 このまま――――


「くっそぉおお! 瑛理子め、意外と大胆だな」

「欲望丸出しっスね」

「ああぁ、私の俊くんがぁ……」


 やり難い。人前でキスとか恥ずかしすぎる。


「しゅ、俊君、もう許してぇ」


 瑛理子先輩も限界だ。俺の腕に抱かれながら、生まれたての小鹿みたいに震えている。

 ああ、普段怖い瑛理子様を調教しているみたいで、何だかクセになりそうだ。


 俺は、そっと彼女の頬に口をつけた。



 ◆ ◇ ◆



 俺はシャワーを浴び終わり、就寝の準備をしていた。


 王様ゲームはといえば、何度やっても王様になれないメアリー先輩がブチギレて、結局ゲームはお開きになった。

 まあ、まるでチキンレースのように過激化していたので、ゲーム終了は仕方がない。


 俺が寝室に入ろうとした時だった。


「俊くん」


 背中に温もりを感じて、俺は足を止めた。

 この声は真美さんだ。真美さんが俺の背中に手を置いている。


「あの、真美さん?」

「ご、ごめんね。なるべく迷惑はかねないから、もう少しだけ好きでいさせて」


 そう言い残してから、真美さんは戻っていった。



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