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誰にも媚びない孤高のS級ヒロインが、最近なぜか俺にだけ優しいのだが ~ドS級美少女の瑛理子先輩は、俺が好きすぎてデレを隠し切れない~  作者: みなもと十華@書籍&コミック発売中
第2章 瑛理子先輩は俺にだけ優しい

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53/53

第53話 告白

 昼間は普通の観光地だったのに、肝試しの時間になると不気味な空気感になるのは何故だろう。

 虫の鳴き声でさえオカルティックに聞えてしまう。


 月明かりに照らされながら、雅先輩は得意気な顔で説明を始めた。


「二人一組で、この岬まで行ってもらうっス。現地で写真を撮ったら戻っていいっスよ」


 一息おいてから、雅先輩は顔を強張らせる。


「気をつけてくださいっスね。ここ、出るんスよ」


 ゾゾゾゾゾゾゾ!


 雅先輩の言葉で、皆の顔が青ざめた。

 俺の腕を掴んでいる真美さんが、抱きつくように腕を絡めてきた。


「俊くん♡ こわぁ~い」

「ま、真美さん。ち、近いです」


 ガタガタガタガタガタ!


 そんな中、瑛理子先輩の怖がり方が尋常じゃない。膝がガクガクで、俺にまでガタガタする音が聞こえてきた。


「瑛理子先輩、大丈夫ですか?」

「で、でででで、出るのよ! 大丈夫なはずがないじゃない!」


 俺が声をかけたら、瑛理子先輩の震えがより激しくなった。


「瑛理子先輩、お化けなんて存在しないですよ。出るはずないです」

「そんなの分かってるわよ! 非科学的だわ! でも、出るかもしれないでしょ!」


 分かってるのか分かってないのか。瑛理子先輩のポンコツ感が否めない。

 瑛理子先輩は、俺に助けを求めるような視線を送る。


「しゅ、俊……お、大崎君! わ、私も一緒に連れていきなさい。め、命令よ」

「残念でしたぁ、俊くんは私のパートナーです。万里小路さんは、黒森さんに守ってもらってね」


 瑛理子先輩の前に真美さんが立ち塞がり、また一触即発の状態になってしまった。


「待ってください。喧嘩はやめましょう」


 俺が止めに入ると、瑛理子先輩と真美さんの威圧感が増した。


「はぁ、誰のせいよ! ほっんと腹立つわね! 踏むわよ!」

「俊くぅん♡ 悪い子の俊くんは、後でお仕置きね♡」

「何で!」


 何故か二人にお仕置きされることになってしまった。

 そんな光景を見た操ちゃんが、大きな溜め息を吐く。


「はぁああぁ、お前ら危険なことはするなよ。といっても、もう恋愛的に危険水域だけどな」

「ほらほら、早くスタートするっスよ」


 操ちゃんの話はスルーされ、なし崩し的に肝試しは始まった。


 一番手は瀧・沢渡グループ。操ちゃんに手を引かれる雅先輩が、まるで親子みたいで微笑ましい。


「じゃあ行こうか、瑛理子」

「ちょ、ちょっと、置いてかないでよ! きゃっ!」


 二番手は万里小路・黒森グループ。黒髪美女と金髪ギャルの女王様コンビだ。

 瑛理子先輩がメアリー先輩に抱きついていて、百合っぽい雰囲気を醸し出している。瑛理子先輩が恐怖で足が震えて、支えてもらっているだけとも言う。


「俊くん♡ そろそろ行こうか?」


 そして三番手は俺たち。大崎・望月グループ。真美さんが、俺の腕に抱きついていて落ち着かない。


「そ、そうですね。行きましょうか、真美さん」

「うん」


 緊張気味に答えた俺に、真美さんは不安気な視線を向けた。


 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――


 しばらく無言のまま歩き続ける。

 寄せては返すような潮騒と、時おり通りかかる車の音だけが流れ、二人の沈黙は続く。

 接触している肌だけが熱を持ち、心臓の鼓動を聞かれてしまうのではと気が気ではない。


 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――


 ど、どうしよう。無言になってしまった。

 俺の態度がぎこちないからだよな。

 でも、あんなことが……あった後だし。俺が真美さんとキスを……。

 真美さん、どうしてあんなキスをしたんだろ?

 俺と真美さんは幼馴染だったはずなのに。


「俊くん……あの、俊くん……」


 真美さん……俺はどうしたら?

 ずっと真美さんに憧れていたはずなのに、最近では瑛理子先輩が気になって仕方がない。

 俺はどうしちゃったんだ。


「俊くん!」

「は、はい!」


 突然大きな声が響き、俺は背筋を伸ばした。


「もうっ、俊くんってば、さっきから上の空で全然話を聞いてない」


 真美さんは口を尖らせそっぽを向いた。


「す、すみません。考え事をしていまして」

「どうせ万里小路さんのことを考えてたんでしょ……じゃなくて、そうじゃないよね」


 突然立ち止まった真美さんは、俺から離れ正面に回った。


「あ、あの……ご、ごめんなさい!」


 そう言って、真美さんは頭を下げた。

 肩をガタガタと震わせ、口をギュッと結び、その表情は思い詰めた感じだ。


「えっ、あの、真美さん?」

「本当にごめんなさい」

「な、何のことですか?」

「あの時の……キス……」


 キス……真美さんの部屋でのキスだ。

 俺は真美さんに襲われそうになって、そしてキスを……。そうだ、ずっとモヤモヤしてたんだ。あのキスは、どういう意味だったんだろうって。


「あの、真美さん」

「ごめんなさい!」


 再び真美さんは、深々と頭を下げた。


「あの時の私、どうかしてた。大切な俊くんなのに、無理やり襲うようなことを……」

「そんな、俺は気にしてないですから」


 本当は無茶苦茶気にしているけど。

 あのキスの意味を。


「わ、わた、私……」


 ガタガタガタガタガタ!


 真美さんの膝が音を立てて震えている。


「あの、大丈夫?」

「俊くん!」

「は、はい」

「好きです!」


 ん? えっ? 好き? 誰が……誰を? 俺? 真美さんが俺を好き?


「好きなの! 大好きなの! 俊くんのことが! お願い、俊くん。お姉ちゃんと付き合おう。私と付き合ったら、俊くんが望むこと何でもしてあげるよ。だからお願い。万里小路さんのところに行かないで」


 一気に告白した真美さんは、震える手を俺に差し出してきた。

 俺は………………。


「真美さんが俺を……」


 ずっと幼馴染のお姉さんだと思っていた。優しくて、眩しくて、憧れの存在で。

 でも、あのキスから何かが変わった気がした。

 そうだ、俺は気づいていたはずなんだ。なのに気づかないふりをしていた。

 真美さんが俺を好きだって。


「俺は……」


『俊君……』


 何だろう、瑛理子先輩の声が聞こえた気がする。

 どうして今?

 小さい頃からずっと憧れだった幼馴染のお姉さん。その真美さんから告白されたのに。

 俺が、俺があと一歩前に出て、彼女の手を取れば、全てが上手くいくはずなんだ。

 真美さんと付き合えて、相思相愛になって、幸せなスイートライフが……。


 なのに何で! 何で俺は躊躇ちゅうちょしているんだ!?


『私とあなたは同士ね。共に頑張りましょう』


 これは、中学の時に書店で出会った――――


『いつかまた会えると良いわね。今度はお互い小説家になって。じゃあ、またね』


 俺が初めて小説を書こうと思った時の……。あの書店で会った人。

 どうしてあの人と瑛理子先輩が重なって見えるんだ。顔も名前も知らないのに。


 そうだ、俺が初めて瑛理子先輩に会ったあの部室。あの時、初めてじゃない気がしたんだ。

 あの人に似ている気がしたから。

 俺は……あの瞬間から……瑛理子先輩に惹かれていたんだ。あのどうしようもなく不器用で頑なでポンコツな女王に。


 書店で会ったあの人や瑛理子先輩の虚像が消えると、暗闇の中に浮かぶ真美さんに焦点が合った。

 真美さんは、震える手をスッと下ろす。


「だよね……そうだよね……。最初から分かってたんだ。俊くんの心の中に誰が居るのかって」

「ま、真美さん」


 しまった。俺は何をやっていたんだ。

 せっかく真美さんが告白してくれたのに。

 俺はバカだ! 大バカ野郎だ!


「真美さん……ごめんなさ」

「謝らないで!」

「えっ」

「謝られたら終わっちゃう! これで終わりなんて絶対イヤ!」


 真美さんの瞳が揺れ、大粒の涙がポロポロと零れる。

 俺は何てことをしてしまったんだ。


「あの、真美さん、俺は……」

「…………だよね。そうだよね。諦めたら恋愛終了だよね」

「真美さん?」

「俊くんが振り向いてくれないなら、振り向くまで攻め続ければ良いんだよね」


 真美さんの目からハイライトが消えた。底知れぬ狂気を感じるヤンデレ目だ。


「俊くん♡ 私、絶対あきらめないから♡ 俊くんが振り向いてくれるまで、ずっと攻め続けるからね♡ もう手段は選んでいられないよ♡ 既成事実を作らないと♡」

「ええええっ!」


 真美さんが滅茶苦茶怖い。今までとはまた違う、底知れぬ恐怖を感じる。

 俺はやらかしてしまったのか。


「じゃあ、行こっか」


 そう言って顔を上げた真美さんは、怖いヤンデレ目じゃなく、少しだけ寂しそうな顔をしていた。

 俺が、真美さんの笑顔を曇らせてしまったのか。



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