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誰にも媚びない孤高のS級ヒロインが、最近なぜか俺にだけ優しいのだが ~ドS級美少女の瑛理子先輩は、俺が好きすぎてデレを隠し切れない~  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売
第2章 瑛理子先輩は俺にだけ優しい

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第44話 夏合宿

 ミーンミンミンミンミンミン――


 夏休みに突入したばかりの七月二十七日。目を覚ました俺は、電子音を響かせている目覚まし時計を止めた。

 今日もいい天気だ。窓の外では蝉がうるさい。


「よし、準備しないと」


 俺はベッドを出て洗面所へと向かう。

 今日は文芸部の夏合宿初日だ。

 熱海にある瑛理子先輩の別荘で、二泊三日の合宿をする予定である。途中、海水浴をしたりバーベキューをしたり……。


「くぅー、瑛理子先輩と海で遊ぶだと。水着姿を拝めるのだろうか。ま、マズい、想像しただけで刺激が」


 そんな不純な想像をしながら洗面所の扉を開けると、朝っぱらからゲンナリした表情の凛がいた。


「うわっ、な、何だよ姉ちゃんか。脅かすなよ」

「きゃっ♡ しゅ、俊♡」


 肩を落としていた凛だが、俺を見たとたん恋する乙女みたいなリアクションをした。

 俺は肘で姉をどかしながら顔を洗おうとするのだが。


「姉ちゃん邪魔」

「こ、こら! 姉に対し何だその態度は」


 ジャバジャバ――

 凛を無視して顔を洗っていると、俺の腕を掴んでいる姉の力が強くなった。


「ぐぬぬぬ! こら、俊! 何だよ、私の初めてを奪ったくせに」

「ひ、人聞きの悪いこと言うなよ! あれは姉ちゃんから当たってきたんだろ」


 初めてというのは、夏休み初日で起こったキスアクシデントのことだ。ふざけた凛が俺にキスしようとして、誤って本当にキスしてしまったアレだ。


「こ、この愚弟! お、お、乙女の純情を何だと思ってるのよ!」

「知らねえよ。何だよそれ、清純派か!?」

「は、初めては結婚する人って決めてたのに♡」


 マジで清純派だった!

 いつも下ネタ連発していたり、隙あらば電気あんま仕掛けてくるエロ姉とは思えねえ。


「しゅ、俊♡ 責任……とりなさいよ♡」

「とれるか!」


 たく、このアホ姉は。朝から何を言っているのやら。

 実の姉弟で結婚とか、それ近親婚だろ。


 相変わらず変な姉を放置し、俺は準備を進めた。



 ◆ ◇ ◆



 待ち合わせ場所の駅には時間より早く着いてしまった。凛の求婚が激しかったから、早めに家を出てしまったのだ。


 まったくあのアホ姉は……。本気なのか冗談なのか?

 本気だったら困るけど。

 くっ、何だろう。実姉に迫られて、ちょっと嬉しい俺がいる。布団に潜り込んできたり、電気あんまで起こされたりして、俺の体が調教されてしまったのか?

 決してシスコンじゃないからな!


 くっそ、凛め。真美さんとギクシャクしているのに、これ以上俺を混乱させないでくれ。


「だぁ~れだ?」


 駅の改札口を眺めていると、突然、イタズラな声と共に俺の視界が遮られた。後ろから誰かが目隠しをしているのだ。

 ボーイッシュな感じの声でバレバレだけど。


「メアリー先輩でしょ」


 俺が答えると、声の主は目隠しを外してからハグしてきた。

 ピチピチのTシャツにデニムショートパンツ。ただでさえ露出度が高いのに、そんなに密着されたら。


「何だよぉ! もうちょっと楽しませろよぉ!」

「ちょ、当たってる! 胸が!」


 背中に凄い弾力のパイ圧が。メアリー先輩の巨乳だ。


「ぬへへぇ♡ 当ててるに決まってるだろぉ♡」

「そんなアニメのオヤクソクみたいな!」

「二泊三日オ○禁する俊に刺激を与えてやってるんだよ♡ ほれほれぇ、我慢できなくなっちゃえ♡」

「最悪だぁー!」


 メアリー先輩め、若い男の性欲を舐めるなよ!

 女子に囲まれ何日も我慢しなきゃならんのに、そんなオカズを与えられたらヤバいだろ。

 このまま三日間も○けない身にもなれっての。


「はぁ、はぁ、はぁ、この先輩は……。出発前なのに、もう我慢の限界に……」


 俺が前屈みになっていると、エミリー先輩は顔を寄せてきた。


「あそこが苦しかったらさ、あたしが○いてあげようか?」

「は?」


 エミリー先輩は右手で変なジェスチャーをしている。

 何だそれ、エッチな漫画かよ。


「じょ、冗談はやめてください」

「ちぇっ、冗談じゃないのにさ♡」


 何か今、メアリー先輩が問題発言した気がする。

 スルーしておこう。


「それより水泳部は大丈夫なんですか? 大会とか」


 運動部の夏休みといえば、大会出場などで忙しいはずだ。詳しくは知らんけど。

 そんな俺の言葉を、メアリー先輩は太陽のような笑顔で返してきた。


 ニカッ!

「大丈夫! インターハイは少し先だからさ」

「地区大会とかは?」

「ぶっちぎりで勝って全国大会決まってるよ」


 この人は……。


「ほら、あたしって才能あるから」

「才能だけじゃないですよね。その鍛えられた筋肉と日焼けした肌を見れば分かりますよ。人知れず努力してるって」


 ふと本心を告げたら、メアリー先輩の様子がおかしくなった。


「えっ♡ あれっ♡ そ、そういうこと言うの反則だぞ♡ ああぁ♡ あたしは努力を見せないキャラなのにぃ」

「隠さなくてもいいのに」

「ううっ♡ 俊のくせにぃ♡ いつも欲しい言葉をくれるんだから♡」

「何か言いました?」

「な、何でもない! くっそぉ、都合の悪いとこだけ聞き逃しやがってぇ!」


 メアリー先輩がヘッドロックを掛けてきた。俺の頭が、汗で湿った彼女の腋や胸に埋まる。


「ちょっと! だから当たってるって!」

「当ててるって言ってるだろぉ! くっそ、くっそ! この男はぁ! あたしとデートする話はどうなったんだよぉ!」


 ああ、メアリー先輩のムチ肉と匂いに包まれているようだ。思い切り、甘く蒸れた香りを吸い込んでしまう。

 こんなの我慢できない。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――

「大崎君、何をしているのかしら?」


 その時、俺の耳に冷徹な声が届いた。地獄の女王のような、ドSでクールで美しい声だ。

 ただ、俺の顔がメアリー先輩の肉に埋まっていて、声の主が見えないけど。


「え、瑛理子先輩? 瑛理子先輩ですよね?」

「だから何をしているのかって聞いているのよ。死にたいのかしら?」

「ひぃいいいい!」


 めちゃくちゃ重い女の瑛理子先輩から怖い言葉が出て、俺は震え上がった。


「こ、これは違うんです。メアリー先輩がふざけて」

「にっしっし♡ 俊ってば、あたしのこと好きだってさ♡」

「はあ!?」


 俺が必死に弁解しようとしているのに、メアリー先輩が問題発言をした。

 瑛理子先輩の声が、更に刺々しくなる。


「それはどういうことかしら?」

「ふへへぇ♡ 俊が体育祭の時にさ、『俺はメアリー先輩が好きだ』って告白してきて♡」


 やめろぉおお! それは言葉の綾だ!

 噂してる男子どもを黙らせるために言っただけだ!


「むぅううううううっ!」


 瑛理子先輩から変な声が出ている。

 怖いので誤解を解かないと。


「ち、違います! あれは他の男子にメアリー先輩の良さを布教しようとして」

「あなた、黒森さんのファンだったかしら?」

「そ、そうだ! 女王様! 女王様の素晴らしさをですね!」


 もう俺が女王様好きだという設定にするしかない。これなら安心安全だ。


「ふーん、やっぱり大崎君ってドMだったのね。もう容赦しないわよ」


 逆効果だった。瑛理子先輩のドSオーラが、更に強まった気がする。

 メアリー先輩の拘束から抜け出た俺は、もう一度だけ瑛理子先輩に念を押しておく。


「冗談ですからね、先輩」

「もうっ、大崎君って無意識なのかしら。私の心を乱してばかりいて……」

「何か言いました?」

「もうっ♡ もうもうっ♡ 何でもない!」


 瑛理子先輩はそっぽを向いてしまった。

 改めて見ると、今日も瑛理子先輩は超絶美しい。清楚なブラウスとスカートなのに、どこか妖艶さまで感じさせる佇まいだ。


「あの」

「おーい、待たせたな」


 俺が口を開こうとしたその時、向こうからみさおちゃんがやってくるのが見えた。

 ちびっ子先輩を引き連れて。


「そこで偶然、沢渡に会ったんだ。連れてきたぞ」

「お待たせしましたっス」


 雅先輩が、ちょことんと頭を下げた。

 まるで親子みたいだとか思ったが、言わないでおいた。

 女教師とちびっ子先輩の両方を敵に回すほど、俺はアホじゃない。


 瑛理子先輩が代表して、先生に挨拶をする。


「瀧先生、引率おつかれさまです。よろしくお願いします」

「何の何の。これも教師の仕事だ。仕方がない」


 仕方がないとか言いながらも、操ちゃんの格好は完全にバカンス気分だ。

 派手な色のワンピースに、麦わら帽子とサングラス。どこのセレブ女子(女子じゃないけど)だよ。


「先生――」

「ひぃ!」


 話しかけようとしただけなのに、操ちゃんがビクンと体を震わせた。

 慌てた操ちゃんは俺に顔を寄せ、小声で囁きかける。


「おい、大崎。誰にも言ってないよな?」

「何のことですか?」

「お、お前♡ 私を脅して調教する気じゃないだろうな?」


 ん? 調教? ドMかな?

 相変わらず操ちゃんは変な教師だ。


「ぐぬぬぬぬぬぬぬ――」


 俺と操ちゃんがコソコソ話をしていると、瑛理子先輩の視線が更に険しくなった。

 これから二泊三日の合宿。一体俺はどうなってしまうんだ。



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