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妖精と王子様のへんてこルンバ(へんてこワルツ6)  作者: 魚野れん
順調って良いね!

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3/82

3

 柔らかい生地だと、少女趣味みたいになっちゃうみたい。エルフリートは似合わなすぎて、一周まわって可愛く見えてきた彼女の姿にくすりと笑う。

 ドレスをあてるだけなら時間はかからない。ならば……と一見似合わないかもしれないと思うものも、あてているのだった。

 用意されたドレスはかなりの量だ。準備するのだって大変だっただろう。


「こういう生地は難しいか……ところで、どうしてこういう雰囲気のものも用意したのかな?」

「期待していただいているからです。その期待に応えられるよう、よりいっそう励みたくなるというもの。

 もちろん、採用されなくとも好評だったデザインを今後のストックにしたいという下心もあります」


 どうやら、この無茶ぶりの裏にはエマの職務的な事情も過分に含まれているらしい。何着目になるのか分からない、可愛いドレスをあてられたロスヴィータの姿を鏡越しに確認しながら二人の会話に耳を傾ける。


「あら、ちょっと見てください。このドレス、少し工夫をすればいけそうですよ!」

「ふむ……確かにこれは胸元がシンプルだから悪くはない――という感じだろうか」


 ロスヴィータがエマの言葉に頷いている。エマが手にしているのは、ベアトップのドレスである。デコルテを見せるタイプで、筋肉質なロスヴィータでも意外に似合ってしまうデザインである。

 上半身はシンプルになっているが、ベルトのように大きなリボンの装飾がある。そこから下のスカート部分は上半身のタイトな雰囲気と対照的にシフォン生地をふんだんに使った甘くてボリュームのあるデザインになっていた。

 固めの生地で作られたリボンがポイントなのだろう。甘すぎないようにバランスを取ってくれている。


「……まだ私にはリボンは早い気がする」

「では、これは今後のドレスデザイン候補にしましょう!」


 ロスヴィータが困ったような顔でリボンは早いと口にする。女の子っぽいリボン恐怖症なのかな。というより、可愛らしい雰囲気の姿をする事が想像できなくて後込みしちゃうのかも。エルフリートはロスヴィータの気持ちを想像した。


 女性用のドレスに使われるリボンと言えば、彼女が似合わないとされるひらひらのふりふりばかりである。髪をまとめるようなシンプルなものが使われていたとしても、狭い間隔でつけられていたり、リボンを主役にするかのような使われ方がされている事が多い。

 自然と避けたいと思うようになってしまっても仕方のない事だろう。


 気分の切り替えの早いエマは、未練の欠片も見せずにそのドレスを今までの“似合わなかったドレス”を置いているのとは違う場所へ持っていく。

 エマが向かっていった一つもドレスが存在しない一角には、ドレスを着せてもらうのを待っているトルソーが並んでいる。そこの守人よろしく待機しているスタッフに彼女がドレスを渡す。

 今回はトルソーに着せられた状態だった為、裸のトルソー達はそのまま放置である。


「お次はこちらですよ」


 ドレス選びの再開である。作業を再開させたエマは引き続きロスヴィータに似合わぬドレスをあてる。エルフリートは今日だけではドレス選びは終わりそうにないな、と思いながらファッションショーを眺めるのだった。




 ロスヴィータのウェディングドレス選びは難航した。が、その代わりに、ロスヴィータが着られそうなドレスのデザインは増えていく。悪い話ではなかった。ロスヴィータは似合わないドレスを試着させられ続けているが、特には気にしていないらしい。

 ロスヴィータが嫌でなければ良いのだ。エルフリートはロスヴィータのドレス選びにとことん付き合った。妥協できないものだから、これは仕方がない。最初のワクワク感や決まらない事への不安などはどこへやら、とにかく満足のいくデザインのドレスを見つける事ができればいい、という考えへと変わってしまっていた。

 現時点では、エルフリートはあまり口出しをせずにひたすら見守るだけである。が、遂に「これだ」というデザインのものが現れた。


「しっかりした布地のもので大きなドレープを作って装飾にしています。結構大胆なデザインですけれど、ロスヴィータ様がしっかりとしたお顔立ちですので、逆に丁度良いのかもしれませんね」

「今の化粧で問題ないならこのドレスに合わせて化粧をすれば、もっと良くなるだろうな」


 大きく頷くロスヴィータの姿に、エルフリートはこれで決まりだなと安心する。ロスヴィータはそのまま試着をする為に姿を消し、すぐに戻ってきた。


「……似合ってるよ」

「そうか? そうだと嬉しいな」


 ドレスを身につけたロスヴィータは、凛々しさをそのままに、女性らしさを醸し出している。

 大胆なドレープがベアトップを飾り立ているが、ロスヴィータの彼女らしさを損なうことはない。この大きなドレープは、彼女の自信を示しているかのようにも見える。それがアシンメトリーになるようにベルトに挟まれている。

 ベルトの下はスカート部分になるが、こちらにも大きめなドレープが作られている。飾りになっている布地の下にも大きなドレープが。

 ボリュームのあるスカートであるにも関わらず、ロスヴィータをちぐはぐにさせない。素晴らしいバランスだった。

2026.1.31 一部加筆修正

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