127 王妃の背景
王太子の婚約者として、王妃とは浅からぬ接点があった。
ナーディアの知っている王妃は、思慮深く、控えめな女性だった。
現場を抑えられてなければ、不貞など信じられなかったであろう。
「怖い。
結婚した最初から、デセウスの進軍の準備をしていたのかしら?」
イレーヌも王妃を知っているが、あくまでも貴族令嬢としての茶会や夜会でのことだ。
「わからないわ。
結婚前はデセウス王国で政治の中心にいたのかもしれない。
この国でも、王妃として国政に携われると思っていたのが、男性中心で女性は政治とは離れた役割に落胆したでしょうね。
そして王より宰相の方が決裁権を持っていて、高位貴族の権力強い。
この国の王家の存在に疑問をいだいたとしても不思議ではないわ」
「長い年月騙していた、というより二面性があるのかも。それも能力だと思う」
イレーヌはナーディアの言葉が真実かもしれない、と思っていた。
嫁いで来てこの国の体制に落胆して、変えようとしたけど王家の力は弱い。
祖国の力を借りようとしたが、祖国は小国で国力の差が大きい。
そこで考えたのが、祖国に力を付けるための横領による資金調達と、偽造紙幣製造なのかもしれない。
イレーヌが考え込んでいる様子に、ナーディアは単直に言う。
「どんな理由があろうと、目的があろうと、取った方法が間違っている」
「そうね、正道に近道なんてない」
アーニデヒルトは王妃を探りにいっているらしく、声はしない。
「ユークリッド様と結婚して私が王妃になっても、道を間違ったらナーディアが怒ってくれるのでしょう?」
「もちろんよ。
その代わり、石探しには一緒に行ってもらうから」
ナーディアとイレーヌが手を取り合って笑顔をみせる。
「二人でよかった」
私室に監禁されている王妃は、ゆっくり立ち上がると、控えている侍女に声をかけた。
「就寝にします、準備をお願い」
侍女の一人が王妃のドレスに手をかける。
ナイトドレスに着替えるのも、一人ではできない。王女として生まれ、嫁いで王妃となり、他人に
傅かれる生活をおくってきた。
だから、誰もが王妃が一人でできるわけない、と思っているのである。
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