126 王妃への疑惑
ナーディアとイレーヌは宰相室を出て、イレーヌの部屋に集まっていた。
『王妃は室内で読書をして過ごしています』
冤罪で処刑されたアーニデヒルトにとって、王妃というキーワードは複雑である。
ナーディアの疑いが王妃にあることが冤罪ではない、と証明が必要だ。
『王妃の部屋には、それらしい物を見つける事はできなかった』
ゆっくり時間をかけて王妃は準備したのだろう。証拠を残すようなことをするはずがない。
戦争は起こり、たくさんの兵が死傷している。
どこかに、何かはあるはすだ。犠牲者たちを弔うためにも、真実をみつけだしたい。
「アーニデヒルト様、お願いです。探すのを諦めないでください」
『わかったわ』
アーニデヒルトは力を温存するために、声だけで姿は現さない。
ナーディアの様子を見ていたイレーヌが、そっと紅茶の入ったカップをテーブルに置いた。
両手でもって口に運ぶ。
その香りと温かさに、身体が包まれるようである。
「美味しいわ」
「それは、ようございました」
ナーディアとイレーヌは視線を交わして笑顔を向ける。
王妃の堅牢な守りも、男性文官達の反発も分かっていた。
でも、この戦争を一刻も早く終わらせたいのだ。
「イレーヌ、私達がこうやって壁に突き当たっているように、王妃陛下は嫁いできた時に、大きな壁があったはずだわ」
自国とは大きく違う女性の扱い。
大事にはしていても、政務に参加させることはない。
それを納得していれば幸せに暮らせるだろうが、自分の能力に自信があるなら認められたいと思うはずだ。
「お父様たちに、王妃陛下が嫁いでこられた頃のことを、お聞きするべきだわ」
「イレーヌ、もしかして」
ナーディアが言葉を止める。
イレーヌが頷いたのを確認して、ナーディアは続けた。
「デセウス王の指示で王妃が動いていた、と思っていたけど反対かもしれない」
「王妃陛下が主導権をもって、デセウス王が従っていた、ということ?」
イレーヌも、ありえると考えた。
「それなら、監禁されている今も連絡を取っているはずだわ」
監禁されている王妃が、外部と接触することは難しい。
食事を運ぶ侍女はクーデターに加担した貴族の令嬢で、裏切る可能性は低い。
王妃の部屋にいるのは・・・。
「アーニデヒルト様、王妃陛下の部屋を扉の外で立ち番をしている騎士を探って欲しい」
『分かったわ』
「ナーディア、王妃陛下が何らかの手段で外部に連絡をとっていても、さらにデセウス王に繋がるルートが必要だわ」
王妃が20年かけて築いたルートを、少し考えただけで見つけられるとは思っていないが、何かがあるはずだ。
王妃が監禁になる前から、秘密裡にルートがあったはず。
「慰安?」
政務をしない王妃だが公務は多岐にわたる。
社交、外国からの要人接待、教育支援、病院・孤児院への慰安。
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