125 新たなる問題
「宰相、陛下の食事に毒が盛られました!」
一報が伝えられ、室内に緊張が走る。
今の王は権力を取り上げられて、軟禁状態だ。その王に毒を盛って得るものなどない。
むしろ王が亡くなった方が、早急に王位移行ができるぐらいだ。
「それで、王の容態は?」
「一命をとりとめ、医師がついております」
皆の手が止まり、報告に耳をすましている。
アルチュールが首をかしげる。
「王を弑して、メリットのある人物がいるとは思えません。
むしろ、面倒が増えるだけです」
「そのとおりだな。だから、殺さず弱い毒で生かしたのではないか?
その方が、周りに手間を掛けさせられる」
父親であるヴィスタル侯爵も、アルチュールの意見に賛成をあらわす。
「宰相、王妃の監視を強化した方がいいのではないか?」
イースデン公爵に賛同するかのように、宰相は騎士を呼び出した。
「犯人の目的、その面倒を狙っているかもしれない」
宰相の言葉に、補佐官達が悲鳴をあげた。
「これ以上、忙しくなると滞るとこが増えます。
王が服毒されて、後回しにするわけにいきませんよ。人員をさいて回すことになる」
補助金の横領事件、偽造紙幣製造、実行犯は公開処刑にされて処理はすすみ、再発防止は新体制の要綱に組み込まれている。
王妃の関与は証拠が不足しており、監禁状態が続いている。
クーデターで国が安定していない隙を狙ってデセウス王国が進軍してきたが、デセウスは苦戦させられ、戦争が長引けば兵数の差があきらかにでていた。
「こちらを混乱させる為に、王に毒を盛ったということですか?」
「可能性があるだけです」
証拠はない、と誰もがわかっている。
ナーディアとイレーヌがそこにいるのを気づいていないかのように、宰相室は動いている。
会話しながら必要書類を用意し、必要部署に連絡を出している。
ナーディアとイレーヌは知識を身に付けていても、実務はない。
見逃すまいと、人の流れ、かけひき、手続き、全てに神経を集中している。
時々、ユークリッドの代理ということでイレーヌに書類が回ってきて印を押すことになる。
それは、緊急に法改定をするものだ。
戦争時の物資の手配でさえ、指定業者を選定しなければならない。戦争中に、選定などの時間をかける余裕はない。
古い体制は無駄が多く、早急に実行するには法改定が必要なのだ。
王の容態を確認するためと、警護の要員の選定が始まる。
犯人の思惑通りとなるのは悔しいが、犯人を捕まえるまでは王の安全を確保するのを優先せねばならない。
それを見ているナーディアとイレーヌも腹立たしい。
皆が寝る間を削って働いている。
それは、少しでも早く戦争を終わらせて被害を抑えたいからだ。
王妃が一番疑わしいのに、証拠がない。
デセウス王国から嫁いで20年程。その間に、王妃の手足となる子飼いを幾人も作ったのであろう。
「アーニデヒルト様、王妃の証拠を探すことはできますか?」
ナーディアは小さな声で石に問いかけると、アーニデヒルトの返事が聞こえた。
『期待の証拠が得られるかは分からないけど、人知れず探すことはできる』
読んでいただき、ありがとうございました。




