表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/141

119 つながる感覚

アルチュールの腹の傷は完治していない。

戦地でバーミリオンと対決した傷の療養の為に王都に戻ってきているのだが、宰相がたやすく静養させるわけもなく、宰相室で書類と格闘しながら療養しているのだ。

「アーニデヒルト様の石の欠片が急ぐのは理解してる。

そこが戦場でなければ、僕も反対はしない。とても危険なんだ」

アルチュールはナーディアを止めるべく、包帯が巻かれた腕を見せる。無理をしているせいで、アルチュールの傷の治りは遅い。


「アーニデヒルト様の身体は河原で崩れたと言っていたから、河原にたくさんあって、河の流れにのって海に流れたのはわかるけど、デセウスとの国境も、北の地も遠いわ。どうしてそこに?」


「確かな事は分からないが、鳥や獣に運ばれた可能性が多いな」

あまりに昔のことで、欠片が全部でどれほどあるかもわからない。

アルチュールはナーディアの手に手を重ねた。

「焦る気持ちはわかるけど、今は無理だ。他にも欠片があるかもしれない」


宰相室で、国境のユークリッドから手紙が来ていたことを知っているが、それをナーディアに言うわけにはいかない。


ー休戦の可能性ありー

バーミリオンが使者として、休戦の申し出にきている。


戦争が始まって1週間余りで、両国とも被害は甚大である。

デセウス王国としても、予想以上の苦戦となっているのだろう。

アーニデヒルト様が地中深くにあった欠片の気配を感じる程、戦場の地形は様変わりしている。


「きゃああ」

突然、ナーディアが身をよじって苦しみ始めた。

アルチュールが侍女を呼びに行こうとするのを、ナーディアはアルチュールの腕を掴んで止める。


夢の中でアーニデヒルトの処刑の場面でシンクロしたように、アーニデヒルトの感覚がナーディアに流れ込んできたのだ。

痛みと喪失感。

戦場にある欠片が砕けた痛感。

「アーニデヒルト様が苦しんでいる。欠片が砕けたみたい」

はぁはぁ、と身体を両手で抱きしめ、ナーディアはアルチュールに伝えようとする。


アルチュールが()めてしまったお茶の入ったカップをナーディアに手渡せば、ナーディアは一口飲んで息をついた。

「欠片はアーニデヒルト様の身体の一部だから、感覚が繋がっているみたい」

ナーディアがアルチュールにもたれかかると、その身体を支えるようにアルチュールの手がそえられる。


「顔色が悪い。アーニデヒルト様が痛みを感じているのか?」

アルチュールの問いかけに、ナーディアは頷いて答える。

「そうか」

欠片が砕けると痛みを共感するなら、違う意味で戦場は危険だ。


アーニデヒルトは姿を現さなかったが、ナーディアのすぐそばにいるように感じていた。



読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ