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迷宮ダンジョンラビリンス。強力な魔法効果のある装備品希望。 Ⅰ

やっちまったーーーー!

盛大に取り違え。失礼しました。

七十一



 迷宮に向かう途中で、アカデミーの地下にある『準備室』という所に来た。ここは、迷宮を利用した戦闘訓練のために用意された部屋だそうで、多種多様な武器防具、そしていくつかのレリクトが常備されている。と、フユギリさんが言ってた。

 沢山の人形に装備一式が揃えて着せてあったり、壁一面に並んだ武器棚には剣や槍、斧等、多様な武器が立て掛けてある無骨な石壁の室内は、天井で光る玉に淡く照らされている。


 そして私達は今、そこで装備を整えているところだ!

 これはたまらない。非常にたまらない光景です。


 私は、立て掛けてある剣を手に取り鞘から抜き放つ。実用性だけを求めた様なその質素な金属の剣は、両手で持ってもずしりと重く、これぞ剣といった無骨なデザインで正に剣だ!


 嗚呼、ここで暮らしたい。


「すずめさんは、もう良い剣を持ってるのですからそれは必要ないのでは?」


「あ、ええ、まあそうなんですが。……剣っていいですよね……」


「何だかソラヅキ先輩みたいですー」


 服の上に革の鎧を着込んだカタハナさんとソラヅキさんの何とも面妖な格好に少しだけ現実に引き戻されるが、カタハナさんが手にしている大盾が目に入ると再び再燃してくる。

 剣といえば盾。カタハナさんはもう一目見ただけで騎士だ。それに対してフユギリさんの持つ盾は小さい。それは攻撃を防ぐというよりは、受け流すのに適した形をしているバックラーだ。


 ちなみに、ニコとゲンジロウさん、学長先生は外で待っている。ニコに装備は必要ないし、ゲンジロウさんはすでに色々と装備済み、学長先生も装備は学長室に常備してあったという事で、今は私たち女子組の出待ちという状況だ。


 手に持った剣を元の棚に戻すと、二人の様に防具を探す事にする。


 準備室内は前衛用と後衛用とで、置いてある場所が分けられている様だ。

 前衛は皆に任せる事にした私は、後衛用の集まる所へ移動し一着のコートを見つけた。

 そのコートは、黒地に青い十字の模様が描かれた物で、袖を通してみると丈も丁度いい位で尚且つ前を閉じなければ抜剣にも支障はなさそうだ。これにしよう。



 装備を整え終わって準備室を出て待ち組と合流したら、廊下を奥へと進んで行きゆっくりと左に曲がる階段を下っていく。


 地下に入った時から、廊下は石の壁一色となり装飾等は一切無くなっていた。等間隔でランプのような明かりが灯っており、私たちの足音だけが響き渡る。


 まるで強大な魔獣を封じている地下牢にでも続いている様な雰囲気が、心を更に湧き立てる。

 階段が終わり正面の重厚な扉を開くと、そこにはまたも石壁に囲まれた六畳程|(私の部屋と同じくらい)の空間があった。

 正面の壁には黒い長方形が張り付いている。穴でもなければイタズラ描きでも無さそうなそれは漆黒とも言える程で、何かの影の様にも見える。これが入り口なの……か?


 迷宮と呼ぶにはかなり地味な気がするのは、私の知識が偏り過ぎているからだろうか。もっとこう、大きな空間に宮殿みたいなのがドドーーンと佇んでいて、ここが宮殿ださあ行こう。みたいな感じだと思っていたのだけれど……。

 そういえば迷宮は神出鬼没とか言ってたっけ……。どでかい建物がデデーーンと現れるわけじゃなくて、こういう小さな入り口がチョコーンと出現するというものなのだろうか。少し残念。


「小さいですね」


「地下迷宮ですからこんなものですね」


「地下迷宮ですか。地上迷宮なんてのもあるんですか?」


「ええ、ありますよ。昔、何も無い草原に大きなお城の迷宮が出現した事があったみたいです」


「ありましたありました。いやはや懐かしいですな。十五年程前でしたかな。うちの方もあの時は大忙しでしたよ」


「お城の迷宮……! 地上万歳!」


 夢は潰えていなかった。地下だからチョコーンという事らしい。地上ならドデーーーーンだ。素晴らしい最高だ。やっぱり迷宮といえばこうでなくては張り合いが無い。


「さあ、行きましょうすぐ行きましょう!」


「いやはや、気合が入っとりますな」


「うむ、行くとしよう」


 学長先生が材質不明の黒い入り口の正面に立つとその壁がゼリーのように少しずつ揺らめき始める。やがて静かな水面に落ちた雫の波紋の様に波が広がっていくと黒に白が混ざり始め、ゆっくりと色を無くしていった。


 完全に透過したところで、学長先生が足を踏み出しその中へと消えていく。


「さあ、行きますぞ」


 ゲンジロウさんも学長先生の後に続く。


「冒険が私を待っているー!」


 もう堪らない。

 喜び勇んで、その始めて見るが王道の不思議系ダンジョンの入り口へ突撃した。


 透明な膜の様なものを抜けると、広大な空間が広がっていた。天井は高く等間隔に円柱形の柱が二列で奥の方まで並び、壁には剥き出しになった水晶の原石とでも言うのだろうか、それが光り輝いており等間隔に灯っている。


 どこか神殿の様な雰囲気を思わせるその内装は質素だ。しかし、この空気感こそ私の待ち望んだもの。森を散策しても見つけられなかった遺跡の代わりには十分な出来だ。


「ではでは、まずは最下層を目指しますか。今までの、ですがね」


 一行は、カタハナさん、フユギリさん、ゲンジロウさんを先頭にして、ニコと学長先生が殿となる。自然と私は中衛の位置だ。

 迷宮のアクゼリュスは私がまだ見た事も無いものばかりだった。大きめなネズミやクモ、程よく嫌悪感を抱けるヘビがちらほらと出現してくる。

 この辺りは話にあった通り学生でも問題無いレベルという事だ。つまり初級ダンジョンの様なものなので、実際に前衛三人が軽く蹴散らかしていく。私は出番もなく何も試せないまま、風化した様に塵になっていくアクゼリュスを見送り続けた。


 そしてある事に気付く。


「ラーイルカイト落とさないねぇ」


 そう、森で倒したネコ二匹と、ニコが倒したネコ一匹からはそれぞれラーイルカイトを入手できた。アクゼリュスの固有ドロップみたいなものだと思っていたけれど違うのだろうか。それとも弱いアクゼリュスはドロップしないとか?


「まあまあ、そうでしょうな。ここのアクゼリュスは弱いですし、よく学生たちに狩られていますからな」


「ラーイルカイトというのはアクゼリュスの体内で時間をかけて精製されるという話です。ラーイルカイト持ちのアクゼリュスはそれだけ長く生延びているという事にもなりますので、種類によらず結構強めですよ。

 すずめさんの持ち込んだラーイルカイトも見た限り、それなりの大きさでしたからアクゼリュスも強かったんじゃないですか」


 今まで三回戦って三回とも入手出来たのだから、そういうものなんだと思っていた。それともう一つ、コソコソ戦ったからというものあるが、それほど苦戦もしていないため強いとは感じなかった。訓練を重ねて切り札も用意していたから余裕を持って戦えてたという要素もあるだろうが、心の底からやばいとは感じてはいなかったのだ。


 三匹目に到ってはニコに瞬殺されていたので、計りようが無い。


「強かったのかもしれません」


「銀狼の森でしたら、きっとほとんどがラーイルカイト持ちでしょう。見せて頂いたすずめさんの魔法の実力からしたら大した相手じゃなかったかもしれませんが」


 カタハナさんは説明してくれながら、天井から落ちてくるヘビを一刀で切り分ける。更に勢い良く突き出された大盾の直撃を受けたクモは、何かが砕ける様な鈍い音を響かせて体液を撒き散らかし床を転がりながら消えていく。

 顔色一つ崩さず足を止める事もなく進んでいく前衛三人。フユギリさんも一突きでネズミやクモを確実に塵へと変え、ゲンジロウさんは大剣を片手で振るっている。


 私の出番はなさそうだ。というよりも、こうしてじっくりと見る機会があると、あの三人がどれだけの実力者なのかが再認識出来る。


 フユギリさんは街中で一度見たが、やはりその先輩ともなるカタハナさんの実力は素人目で見ても群を抜いている。剣閃が幾重にも重なり、その軌跡は時を忘れて見惚れてしまいそうになる程だ。

 二人に負けず劣らず、ゲンジロウさんも冒険者カンパニーの補佐官というだけあって相当なものだ。大剣による一撃は豪快な風切り音を響かせ、見た目通りの威力を大盤振る舞いしている。


 私は持て余した細剣の柄に手を置いたまま、そんな三人を眺めていた。


「物足りなさそうだな」


 私の雰囲気を察知したのだろうか、背後からニコが話しかけてくる。


「そりゃあね」


 振り返りながら不満を現すように表情を崩した私は、細剣の鍔をカチカチと打ち鳴らす。


「心配せずともいい。新しく見つかった奥への道、長い間手付かずなのだからどのアクゼリュスもラーイルカイト持ちとなっているであろうし、どれだけの力を蓄えているか未知数。きっと乱戦となるだろうな」


「それはまた、たっぷりと試せそうですね」


 学長先生の言葉に期待が高まる。いうなれば初のパーティ戦というわけだ。問題はパーティメンバーが若干強すぎる気もするが、そこは訓練の延長線と考えればいいだろう。私のパーティでの動き方を把握するいい機会だ。

同時編集は危ないと気付いた。

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