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パーティーは最高何人までなんだろう。 Ⅴ

二十五



 日が暮れる頃まで訓練を続け収穫は上々。グングニルの詠唱から発動までにかかる時間を大分減らす事が出来た。それと下級魔法を一つと、上級魔法を一つ新たに登録した。この二つもそこそこ使いこなせるように練習したけれど、少し特殊な意識制御を行うので少し難航している。だけど手ごたえは感じた、もっと訓練すればきっと強力な魔法になるだろう。


 やっぱり魔法って楽しいと改めて思う。頭の中で魔法の訓練を繰り返しシミュレーションしながらニヤニヤと部屋へと戻る。いくら考えても飽きる事が無いほど魔法って魅力的だ。


 説明書をテーブルにスフィアをソファーに置くと、そのまま脱衣所へ向う。全部脱ぎ捨てて洗濯機へ放り込むと、恒例である訓練後のシャワータイムだ。このスッキリサッパリ出来る瞬間は非常に気持ちがいい。


 ムニムニの石鹸とシャンプーは相変わらず触り心地抜群で、泡まみれになりながら心安らぐ一時を迎える。頭の中では今日一日の出来事を思い返し、これから経験していくであろう大冒険の数々に期待を馳せる。

 



 全身程よい石鹸の香りに包まれながらバスルームを後にする。髪をバスタオルで拭いながら洗濯機から衣服を取り出し下着だけを装着。考え事をしながらシャワーを浴びていたので身体が火照り過ぎたから暫らく放熱する事にした。


 制服を小脇に抱え、バスタオルを洗濯機に放り込み脱衣所からソファーへと真っ直ぐ向った。座り込むと同時にテーブルの隅に置いてあるノートとシャーペンを手に取り、早速今日登録した分の魔法を書き込む。


「えっと……、セイクリッドヴァルチャー……っと」


 新しく登録した下級時魔法、セイクリッドヴァルチャー。基本的にはセイクリッドトリガーと同じだが、総威力が全然違う。クロスクロイツよりも威力は高い。更にブレットで登録してあるのでランスで登録したクロスクロイツを遥かに凌ぐ威力となっている。その分発動までに時間は掛かるが……。


 そしてこの魔法の特徴は、五つの光弾を一発ずつ飛ばすというところだ。意識制御により可能になるのだが、これがまた難しい。一発ずつ飛ばしたつもりが三つまとめて飛んでったり、四方八方に飛び散ったりする。でも今のところ二回は五発全ての制御に成功しているので不可能というわけでもない。要は努力次第だ。


 この魔法の利点は、一度詠唱してしまえば打ち切るまで詠唱無しでの連続攻撃が出来る事。一発目を囮にして二発目を入れるとか、避けられた後の反撃を迎撃したりと活躍の場は幅広い。場合によっては単発ずつでも全弾まとめて撃つことも出来るので火力の調整も自在だ。ただ今のところこの魔法を使うと十五秒のリキャストタイムが発生してしまう。下級魔法による詠唱の短さとかなりの破壊力を持っているから、しょうがないと言えばしょうがない。



「それと……、イージス……っと」


 新しく登録した上級魔法、イージス。防御用の上級魔法バージョンだ。属性は雷、ドライブδ(デルタ)で設定しているため、雷の障壁を長時間留まらせておくことが出来る。強力な電撃により敵から自身のみでなく、大きさを調整することで仲間も守れる。距離を取ったり、もしもの時のための逃走用の時間稼ぎといった使い方も出来るので、これもしっかりと練習あるのみだ。


 仲間、いつか私にも仲間が出来るのだろう。きっと素晴らしいパーティーになるに違いない。これも今から楽しみだ。


 書き込んだ分を読み返し、間違いが無い事を確認してからノートを閉じる。「ふう…」とソファーの背もたれに身体を預け、両手を上げてうーんっと伸びをする。


 さて、一段落着いたので腹ごしらえでもしようか。立ち上がり夕飯の準備を済ませる。といっても、缶詰とお箸を持ってきて、コップに水を注ぐだけなんだけど。


「では、いただきまーす」


 今日の夕飯はカツ丼だった。


「すんません刑事さん、私がやりました」 


 呟きながら頬張るカツ丼はやはり、缶詰とは思えないほど美味でした。




 夕飯に大満足した後、再びシャーペンとノートを手に取りソファーに深く身体を預ける。食べてる最中に思いついた事だが、魔法の設定を項目毎に書き出しておけば、頭の中でうにょうにょ想像するよりもイメージしやすいかもしれない。


 思い立ったが即行動、ソファーにうつ伏せになると両肘で上体を持ち上げた格好でノートを開く。


 まず始めに密度、次に範囲、形状と続けてその下にブレット、ランス、スクエアと書いていく。


 そして、距離、括弧をつけて大きさと続けて、最後にそれぞれの項目に下限と上限の数値を書き込めば完成だ。


「うんうん、なかなかいい感じじゃない?」


 仰向けに転がるとノートを持った両手を天井に向けて高く上げる。


 では早速、このノートを活用して魔法の考察でもするとしましょうか。


 起き上がり背もたれに寄りかかりながらノートを睨む。実を言うと一つだけ試してみたいことがある。しかもそれは、近接用の魔法。いうなれば光の剣だ。


 これを思いついたのはセイクリッドヴァルチャーの練習中のことである。意識制御により一定時間光球を停滞させて、その後目標に向けて飛ばすという事が出来るのなら、ランスで出現させた光の槍を飛ばさず薙ぎ払うように操作出来るのではないか。そう思った。


 考えていると夕飯で落ち着いていた魔法欲が再び騒ぎ始めた。すぐさま手を伸ばしスフィアを掴み、下級魔法入力の状態にする。まず、密度は五、形状ランスの一、大きさが二だ。


 そして、魔法名入力。光の剣だから、それっぽい名前にしなくては。


「ルナティックソード」


 ───……登録完了しました……───


 いつもの音声が無機質に響き、登録できたことを確認する。それと同時に靴を引っかけるように履くと部屋を飛び出した。


 研究施設エリアを抜けて階段を上がりながらパスワードを呟くと、右手に魔方陣が現れる。


「ルナティックソード!」


 階段を上りきると同時に叫ぶと、前方の空間を輝く光が袈裟斬りにした。


「くふふふふ、完璧だ」


 右手を振り下ろした状態でにやつく私。余りの出来栄えに自然と笑みがこぼれた。


 その後、唐竹、袈裟、逆袈裟、右薙、左薙、右切上、左切上、逆風、刺突と一通りの太刀筋を試してみたところ、ほとんど思い通りの軌跡を描いた。刺突だけは真っ直ぐ飛んでった。問題は出現時間がそれ程長くはなく、一回につき一太刀が精一杯だ。


 そして、全てにおいて右手を太刀筋と同じ軌跡で振り下ろしたり振り上げたりもする。これが非常に有効で、イメージのしやすさが飛躍的に上昇した。


 やっぱり、魔法にはそれに合ったポーズも必要だと思った。他の魔法分も今度考えておこう。


 とにかくこれで近接戦の対応力も上昇したと思う。とても素晴らしい結果で余は満足じゃ。


「ふう……」


 一息ついて、石球の門を開き外へ出る。なんとなく夜風にあたりたくなったのだ。


 無音だった内部とは違い、外は様々な音が混じり合って一つの空気感を創り出している。少しひんやりとした風に髪が揺れた。


 暫らくの間、森の囁きに包まれながらボーっと森を見つめていた。


 時々、魔法の訓練をしている時に今の状態が夢なんじゃないかと思う事がある。でもそれは、その後に響く轟音にかき消されて、魔法に夢中になっている私がいるのだ。


 全身を撫で回す風と蒼く香る森の匂い、目に映る黒い木々。この質感は夢じゃない。


 改めて確信すると、ブルリと震える。少し身体が冷えてきたみたいだ。そろそろ戻るとしようか。


 スフィアをポケットに戻そうとした手が中空を泳ぐ。


「あ、ああーー……」


 そういえば、下着姿で飛び出してきてしまったんだった。お恥ずかしい……等と思うわけも無い。誰も見ていないのだから。


 右手の中で淡く光を反射するスフィアを見て、空を仰いだ。そこには真ん丸お月さんが私を見つめていた。


 私の知っているお月さんとは違い大きくて、足元には影が出来るほど明るかった。


「こんばんは!」


 月明かりに照らされながら両手を広げ初対面のお月さんに挨拶をする。これからこの世界に暫くお世話になりますよと。


 石球の中へ戻り門を閉じると、再び辺りが静寂に包まれる。快適な温度は冷えた身体には少し温かく感じる。階段を降りる足音が、私の機嫌を表すよう軽快に響く。


 まだまだこれからも忙しくなりそうだ。訪れる予定の遺跡に思いを馳せながら白い廊下を進む。


「今度は入れる遺跡がいいなぁ」


 そして、その遺跡の中ですっごいマジックアイテムを手に入れるのだ。


 膨らむ妄想に一喜一憂しながら部屋の扉を開いた。 

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