パーティーは最高何人までなんだろう。 Ⅳ
二十四
「おおう!? 何であの三人がここに……」
石球越しに見た三人の姿は元気そうで、しっかりとした足取りだ。きっとあの治療魔法のお蔭なのかなと思う。
とりあえず安否を確認できたのはよかった。しかしあの場所から此処までそれなりの距離があったはずだけど何か用でもあるのだろうか。
三人は手で触れたり叩いたりしながら石球を一周した。私も内側から彼らと一緒に一周してみる。壁一枚の距離で見たので二人の顔立ちや服装の細部もよく見て取れたが、レンジャーらしき者だけはフードを目深に被っているので表情はよく見えなかった。それぞれが持つ武器には、意外と細かい細工がしてあったり、右胸のところには同じデザインの紋章の入ったブローチを付けている。仲間の印とかそういう感じのものなのだろうか。
見習い騎士の手に提げている盾は大きく抉られて欠けていたので、きっと吹っ飛ばされたときの痕跡だと予想する。その痕が、アクゼリュスの攻撃力を無言で語っていた。
三人は絶え間なく口を動かしている。何かを話しているのは分かるけれど、この石球は音声を通さないようだ。
会話の内容が気になるところだが……、もしかしたら『さっきの美しい魔導師様は誰だったんだろう』『きっと神様が私たちを助けるために遣わした天使だったのよ』『天使か、確かにあの神々しさからして、違うとも言い切れないな』等と話しているに違いない!
「くふふふふ、崇め奉るがいい!」
両手を大きく広げ調子に乗ってみる。もちろん半分冗談です。
そんな事をしていると、更にもう一人この広場にやってきた。背は高く立派な髭を蓄え、堀の深い顔立ちなので一目で大人と分かる。
見習い騎士の軽鎧とは格が違うような白銀の鎧を纏い、腰に下げた白銀の鞘には細工の施された立派な柄が覗いている。左手に持った盾は、長方形の下の部分を尖らせるよう三角にした形をしていて、鈍く光るその表面に刻まれた無数の細かい傷が歴戦を物語る。
私の知る限り、見習い騎士の持つ盾はバックラーという種類で、この大人の騎士の持つ盾は騎士盾、ナイトシールドと呼ばれるものだ。
どうやら皆知り合いのようで、何やら話し始めた。見習い騎士が身振り手振りで何かを伝えている横で、ローブの女の子は落ち着かないのかキョロキョロと辺りを見回している。
小柄なレンジャーは、見習い騎士と大人の騎士の話を聞いているようで、時たま口を挿んでいる。
そんなやり取りが数分続いた後、四人は広場を後にして再び森の茂みの中へと消えていった。
「未知との接近遭遇」
あの大人の騎士、とても強そうに見えた。私の予想ではあの三人の隊長とか、はたまた誰かの父親とかそんなところだろうか。どちらにしろ心躍る光景だった。やっぱり剣の象徴たる騎士は格好いい。
きっと街にはあんな格好の人達がいっぱいいるのだろうか、楽しみになってきた。
ゲームで険しい山道を進み、村にやっとのことで辿り着いたあの感動。あれをもっと鮮明でリアルに感じる事ができるのだ。
「ああ、早く行ってみたい!」
興奮を抑えるなんて野暮な事はせずに、感情のまま走り回り魔法を連発して気持ちを表現する。期待は膨らんでいくばかりだ。きっと街には武器屋防具屋なんかがあって色々な武具が並んでいるのだろう。
「ああ、早く見てみたい!」
等と踊り続けている時にふと思いつく。そうだ、武器が欲しいなら武器屋に行けばいいじゃないか、と。そうするとまず必要なのはお金だ。これがないと店で何も買えない。
この世界の通貨が何か知らないが間違いなく持ってはいないので、金策から始めないといけない。ゲームなら街の人達からの依頼をこなす事で報酬としてお金を貰ったりするのだが、人見知りの私としては、大人しく街の人の依頼を聞く事が出来るかどうか怪しい。そもそもどこの誰とも知らぬ女子高生に頼みごとをする何てことあるのだろうか。……せいぜいパンツ見せてが関の山だと思う。
「もうちょっと大人っぽいの穿いておけば良かったかな……」
いや、別にそれで稼ごうって訳じゃないよ。ただちょっと大魔導師なら下着もソレっぽくないと格好つかないと思っただけだ。それに下着の予備が無いのも理由だと、誰にともなく言い訳してみる。
今はシャワーの時に洗濯機に放り込んでおけば上がる頃には洗い終わっているけれど、いずれは必要になるだろう。となると、一張羅の制服もどうにかしたい。私的にはあの女の子のローブが可愛いかったので着てみたいところだ。
結果。武器と服と下着を買いに行くことに決定。
そしてお金の問題だが……いくら位かかるのだろうか。そしてお金を得る方法だが、ゲームにはモンスターのドロップ品を売るという手がある。牙やら何やらを素材として売ったりするのだけど、この世界では買い取ってくれるのだろうか。そこらへんの情報も欲しいところだ。
それでふと思い出したことなのだけど、今日倒した猫の魔物の塵の中から見つかった、あの赤い結晶は売れないだろうか。見た目からしても無価値には見えないけれど、相場が分からなければどうしょうもない。
「うーん……どうしたものか」
一先ず、金策の仕方を考える必要がありそうだ。ゲームでもそうだけど、装備資金を貯めるために金策をするというのは、少し楽しくもある。
全ての装備を身に纏った自分を想像したらなんとも様になっているではないか。やはり私は大魔導師になる運命なのだろう。そしていずれは勇者すずめだ。
「くふふふふ」
勇者は何も剣士だけとは限らない。私は大魔導師勇者になるのだ。
膨らみきった街への期待はもう誰も止められない。しかし物価とか、私が欲しい物はいくらかかるのか分からない。換金できるアイテムとか買い取ってくれる場所などもあるなら調べておかねば。と、街へ行くための理由をつくる。そして二度目の来訪でショッピングを楽しむ。これが私の計画だ。
もしも素材買取などが出来るならば買取可能なアイテムを調べて、次に街へ行く時までにいっぱい集めなくては。そしてそれを売ったお金で装備を整えるのだ。やはり出来る事なら、ファンタジーっぽいやり方で金策出来れば最高だ。
「赤い結晶を換金できるといいんだけど……」
見た目は宝石っぽくて、しかもドロップアイテムだ。正直、期待せずにはいられない。
他の方法もある。遺跡で手に入れた良さげなアイテムを売るとかだ。これも私の知るファンタジーでは常識と言っていいほどメジャーな現金獲得方法だ。
まあもっとも、遺跡でレアな武器と防具が手に入るってのが最高ななんだけど。古代騎士の聖剣とか、古代神官のローブとか。でも、あったらラッキー程度で当てにしてはいけない。まずは確率の高い方法で戦力アップを狙わなくては。段階を踏むこと、これも王道だ。
とまあ、お金を入手する方法はこんなものだろうか。最悪、ここにある缶詰でも売るとしよう。まだまだいっぱいあるし、これだけ美味しければそこそこ売れるだろう。運ぶのが辛そうだけど……。
さて次は、街へ行くために必要な事の考察だ。
その一、経路の確認。これは地図があるのでどうにかなりそうだ。道順としては、今日出かけた時に横切った道を辿って街へ向う。地図上では全ての道が街へ繋がっているので、迷う事もないだろう。
その二、夜営の準備。これが一番問題だ。距離からしてここからでは一日で着くかどうか微妙なところだ。そうなると夜営をしなくてはいけないけれど、魔獣がちらほらといるこの森で暗い夜にか弱い乙女が一人で野宿なんてかなり危険だろう。一日で街まで着ければ公園かなんかで休めるんだけど、これは実際に歩いてみないと分からない。今日の遺跡までの往復距離から考えると、いつもより早足であるけばギリギリ行けそうな気もするのだが、やはり備えは必要だろう。
「あえて備えをせずに、身軽になって一気に突っ切るって手もあるか……」
夜通し歩くなんて方法も考える。体力勝負になりそうだけど、寝ているところを襲われるよりはましだろう。これも案に入れておこう。
それでは意気込み新たに訓練再開といきますか。やはりまずは強くなる。これが一番必要だろう。
「よーし、スターティングオペレーション、ドライブγ!」




