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パーティーは最高何人までなんだろう。 Ⅰ

一週間訓練を重ね、少し遠出したすずめのお話です。

二十一




 その日は朝目覚めるとフルーツの缶詰で手早く朝食を済まし、二時間ほど石球の中で魔法の訓練をした。


 それから、出かける支度をして森へ分け入り今に至る。


 この世界に来てから一週間ほど経っただろうか。風邪は治ったようでダルさは無い。一週間前に少し早めに寝たのが功を奏し、その時点でほとんど治っていたようだ。なので今日まで毎日魔法の特訓やスフィアの説明書を読み込む事に明け暮れていた。十分な自信が付くまでじっくりと鍛えていたのだ。


「んーっと、この辺りなんだけどなー」


 見やすい様、四分の一に折り畳んだ地図を片手に周囲を見渡してみる。石球の広場から此処まで約一時間、生い茂る草やら何やらを掻き分けながら進み続けてきたのだけど、地図によればもうじき道のような場所に出るはず。しかし周囲は未だに木々に囲まれている。はてさてどこに。


 再び地図を一瞥してから振り向き、来た道を確認しながら照らし合わせる。


「こっからここまで来たんだから……、今ここで……、つまりこうなってと……」


 ちなみに方角の確認の仕方は、湖から真っ直ぐ石球の前へと走り抜けたハティを基準としている。つまり、あの石球へ着いた時、特に回りこむこともせずに門を開いたのだから、石球の門から出て真っ直ぐいけば、あの湖に到着するという算段だ。それに途中の川などを地図と合わせる事によって方角を確認した。


 くふふふふふ。私には、迷子スキルやドジっ子スキルなどという萌要素は無い。あーいうのは、サブキャラの役目だ。


「ふむ。こっちだ!」


 背の高い草や、顔に当たりそうな枝を手で払い除けながら進み、肩から斜めに下げたカバンを掛けなおす。この中には、説明書とノート、間食用のケロリンメイトと、キッチンで見つけた、白くスタイリッシュな水筒に水を入れて持ってきている。他に入っていた物は、重量軽減のために置いてきた。その際に、数学の教科書やら何やらと、教材まで出て来た事に、少しうんざりした。


 朝特有の涼しい風を肌で感じながら、さわさわとせせらぎのような葉擦れの音に包まれる。森の少し湿っぽい空気を大きく吸い込んでいると、お年寄りの方々が、どうして森林浴に勤しむのかが何となく分かったような気がした。


 こんな風に草木を掻き分けながら進むというのは、正に冒険だろう。ちょっとテンション上がってきた。そんな時、茂みが途切れ左右に伸びる道が現れた。その道の地面は、舗装されたというよりは踏み固められたというような状態で所々が凸凹しているので、雨が降ったら水溜りが大繁殖しそうだ。


 そのまま道の中ほどまで進んで立ち止まり、左を見て右を見てまた左を見てから、そのまま地図に視線をおとす。


「ふむ、予定通りだ」


 もうちょっと早く着くかとも思った。けれど、獣道ですらない森の中を掻き分けつつ突き進んだ結果といえば、そう悪くはないだろう。悪路によるタイムロスは計算に入れていなかった。とはいえ、この程度の誤差は許容範囲内、よって予定通り。


 地図ではそれ程大きくは見えないが、実際に着いてみると意外と道幅があった。四、五メートルくらいだろうか、これなら馬車も通れそうだ。


 剣と魔法の世界の定番の乗り物、それが馬車。私もいずれ、仲間たちと共に馬車に乗り冒険の旅をするのだろうか……、非常に楽しみだ。


 とりあえずざっと見たところ、現在は人っ子一人居ない。この世界の人達の服装等を見てみたかったが、いつかの楽しみにとっておく事にしましょ。


「さてと、ここからが本番だね」


 地図によると、湖とは反対側に真っ直ぐ行った所にあるこの道の更に奥、つまりここから再び茂みに入り込んだところに、正方形の人工的な何かがあるのが分かる。もちろん地図で見る限りでは何かは分からないのだが、やはりこんな森の中にある人工物といったら遺跡だろう。古代遺跡、それは乙女のロマン。


 地図を見て、現在地と遺跡の場所を確認する。「こっちだ!」茂みをビシリと指差し確認してから歩き出す。再び草や枝を掻き分けながら進む。


 三分ほど歩いただろうか、茂みの先に目標の物体らしきシルエットが見えた。


 遺跡は、エジプト等にあるピラミッドの変形みたいな形をしていた。大きく太い柱が四隅に佇み、森の木々よりも遙か高くまで聳えている。建造物はその柱に囲まれるように存在し石を高く積み上げて造られていた。ちょっとやそっとじゃビクともしなさそうなほど頑丈そうだ。


 とりあえず一回りしてみたけれど、隙間無く積まれた石には文字通り隙間など無く、入り口のようなものは見つからなかった。ただ、一辺の中央から階段が上に続いていたくらいだ。


「すっごいマジックアイテムでも見つかると思ったんだけどなぁ」


 遺跡の階段を上り天辺まで到着すると、辺りを見渡しながらながら呟いた。大体、地面から十五、六メートルほどだろうか、森の木々より少し高い程度だ。


 私の予想では、まず遺跡があり、そこには入り口から奥へと続く暗い通路が延びている。そしてその最深部には、秘宝を守る番人が居て激闘を繰り広げるのだ。と、そんな遺跡を想像していたのだけれど、ここはそんな所じゃなかったようだ。見た目からして、何かの祭壇だろうか。丁度私の目の前には、何かを捧げるような、人一人くらい横になれる台があった。


「まあ、すぐに見つからないってのも燃える展開だよね」


 こういうものは上手くいかないからこそ俄然やる気が出るという事もある。私の望む遺跡だって、そう易々とあるものだったら、その奥にある宝も何だか安っぽく感じてしまうかもしれない。なのだからこの位の障害どうって事ない。ならば私はその時のために、もっと魔法の腕を磨いておくだけだ。


 そうと決まれば早速修業だ。と思ったが、まずは腹ごしらえでもしておこうか。さすがにフルーツだけでは、腹持ちは良くない。それに、じっとしていれば汗はひいてくるけれど、それでも此処までの道のりで、発汗して失った分だけの渇きを感じる。


 目の前の御あつらえ向きな台に腰掛けると、肩に下げたカバンを置いて中を漁った。まず水筒を取り出し中蓋に水を注ぐと一息に飲み干す。


「ふー、生き返るー」


 使い古された一言と共に空を仰ぐ。太陽はほぼ真上で輝いていて、日差しの眩しさの割にはそれほど暑くはない。それでもやはり、少々の運動をすると軽く汗をかく位の気温だ。


 時折聞こえる小鳥の声と虫の音がやけに心地よく感じる。都会の喧騒を離れ、自然の声に耳を傾ける。うん、こういう暮らしも悪くないなぁ。


「やはり人工ではない自然のものには、人の身では到達できない域の芸術が溢れているな」


 『不機嫌な花嫁』コミック三巻より、聖域アマツカミに佇む主人公、エリカ・ワーデンバーグが、青く透き通る空を見上げながら言った一言を呟いてみた。私は、エリカになりきって両手を空に伸ばし、太陽に微笑む。うふ。



 ──────!!!──────



 それは突然、地響きと共に轟音を伴い響き渡ってきた。鳥たちが逃げるように一斉に飛び立つ。


 それほど私の微笑みは悲惨なのだろうか……。等と落ち込んでいると、森の方でチカチカと光が上がり。少し遅れて、再び轟音が響いてきた。


「なになに、なんなのさ?」


 光と音は何度も繰り返し、静かな安らぎに満ちていた森を激変させた。何だかは分からないけれど、これはちょっと気になる事態。急いでカバンに水筒を突っ込み肩に引っ掛けると階段を駆け下りる。光と音のする方へと急ぐが、歩き慣れたと思った茂みは、走るとなると結構厄介で思うように進めない。


 足元に注意しながら草を掻き分け進むと、響く音の他に人の声が混じっているのに気づく。まだ此処からでは何を言っているのかは分からないけれど、複数の人がいる事は間違いないだろう。


 前方に森の拓けた広場が見え始めた時、何度目かの光が輝き、爆発音が響いた。その輝きは赤々としていて、炎の光だったという事が分かる。爆風の残滓はほんのりと温かくそよぎ、髪を揺らした。


「……──…………──!!」



「──……──────!」



 前方から声が響いてくる。急いで広場に駆け寄ると、私があの日に襲われたアクゼリュスとかいうのと対峙している三人の姿があった。立ち位置は私から見て左側にアクゼリュス、右側には二人と、その後ろに一人という陣形だ。ここからの距離は大体二十メートルほどだろうか。


 ただ、私はその三人を見た途端、狂喜の余り踊り出しそうになった。なんせ私の憧れでもあるファンタジーそのものとも言える服装をしていたからだ。


 アクゼリュスに対し一番後方にいる一人は、胸元から裾まで大きな黄色っぽいラインが二本入り、丈の長く全体的にクリーム色のローブをその身に纏っている。両手には背丈ほどあるだろうか、先端に宝石のような球体の付いた杖をしっかりと握り締めていた。髪は後ろで束ねていて大き目のリボンが揺れている。なので多分女の子だ。


 そんな女の子を守るかのように、前衛で剣と盾を構える者は、鎧というほど重々しくないにせよ、ローブよりかは頑丈そうな帷子を身につけていた。胸部と肩部が鈍色に光っているところを見ると、その部分は金属製だろうか。私の知っているゲームやら何やらに出てくる軽鎧系とほぼ同一といっていいだろう。他にも篭手や腰鎧等も同じ素材で出来ているっぽい。


 剣は鈍く光り、その切っ先はゆらゆらと揺れている。前面に構えた盾は大きな円形で、見た目から木製だと思われる。金属のようなもので縁取りがされているが、余り防御力に関係は無さそうだ。


 それらを纏う者は見た感じ、クラスは騎士といったところだろうか。ただその少年のような背格好からは、余り貫禄というものが感じられない。かなり勝手な想像だとは思うが、私の見解では見習い騎士というところで落ち着いた。


 そんな見習い騎士の隣には、一回りほど背の低い者が二本の短剣を逆手に構えている。服装は、見習い騎士の帷子から金属板を外したような薄鎧で黒いフードを目深に被っている。機動性を重視しているようなので、多分クラスは盗賊といったところか。


 異世界住民の戦闘シーン、勉強させていただきます!

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