第六十五話 匹敵
グロと暗い言葉注意
バンッ!
国のトップが集まる会議室。その会議室に慌ただしく入室してくる人物が現れた。会議室の扉の大きな音にトップの十二魔騎士は一瞬顔を顰める。
「報告します!!国の貴族の中でも上位貴族のゲス侯爵の館が何者かの襲撃に合いました!」
慌てて会議室に入ってきた伝令の言葉に十二魔騎士達は一斉に席を立つ。
「動いたな、行くぞ」
「へ?行くとは?」
伝令は今この場にいる者達の実力の強さをよく知っていた。そして知っていたが故に全員が席を立つ意味が分からなかった。
「ま、まさか十二魔騎士の皆様全員で行かれるおつもりですか?」
「ああ。あいつらを倒せるのは、俺達十二魔騎士だけだ」
「し、しかしルーク様!」
「安心しろ、すぐに集団を縛り付けて晒してやるから」
「・・・」
「そんな不安そうな顔するなよ、それとも俺達の実力を疑ってるのか?」
「い、いえ・・・そんなことは」
伝令は目の前にいる者達がどれだけ強く、どれだけ素晴らしい人物かをよく知っていた。もはや心酔しているといってもいいほどに尊敬していた。しかし心酔しているからこそ自らの盟主達を僅かでも死ぬ確率がある場所に送りたくなかった。しかし伝令は思う、このような思いは自らの盟主達の実力に対する侮辱ではないのか、と。そう思えば不安は和らいでいく。
「・・・・皆様、ご武運を」
気づけば自然に伝令の口からはそんな言葉が漏れ出していた。
「おう、任せておけ」
そう言ってルーク・ランスロットは伝令の肩を一つ叩いて会議室を後にする。それに倣うように十二魔騎士はルークに続いた。
「うわー!助けてくれー!」
「どけ!!」
襲撃されたゲス侯爵の近くにいた者達は当たり構わず噴き出す煙に完全なパニック状態に陥っていた。ある者は人を投げ出し、ある者は投げ出された人を気づかず踏みつけて躓いたり、ある者は腰が抜けてしまいその場でへたり込んでいた。
「ヒ、ヒィ!!やめてくれ!!」
ゲス侯爵の館内、寝室の中では一人の青年が侯爵を見下ろしていた。
「ふん、名は体を現す。アレスの国の諺とやらはよく言っている。お前はその名に違わぬ下種だぞ、侯爵様」
「た、助けてくれ!何でもする!!だからこの命だけは!!」
「・・・」
トールは無言で寝室の中を見渡す。その場にいたのはもはや瞳に生気を失くし虚ろな瞳を見せるまだ年端もいかぬ裸の少女。少女の体には白い液体がこびりついて洗われていないことを容易に思わせる体をしていた。
「トール」
「ハデスか」
ハデスと呼ばれた青年は脇に大きめの麻袋を持っていた。そしてゆっくりとその場に袋を下ろし、開いて中身を見せた。
「・・・・」
トールは無言で目つきを鋭くし、侯爵を睨み付ける。
麻袋の中にあったのは四肢の欠損した女性、左手薬指を切断されている妙齢の女性、体中に火傷の痕が残る女性など様々な女性が詰め込まれていた。そしてその女性達は全ての一点で共通していた。
「この袋が置いてあった場所、Breakablesって看板が張り付けてあったよ」
「Breakablesか・・・侯爵、お前は今助けてくれって言ったよな?この少女達も当然助けてくれって、やめてくれって言ってなかったか?」
「そ、それは」
「言ってたよな?そう言った少女や女性達にお前が返した返答はどうだ?」
「改める!これからはこんなことはしない!!過ちを正し、誠実に生きると誓うから!だからどうか」
「それを聞いてこの女性達は許すと思うか?」
トールは目に更に嫌悪を現し自分の手に握る槌を思わず振り下ろしそうになる。
「だが好都合な事に俺の仲間には死に関する魔法を使える奴がいてな。そいつにこの女性達の意見を聞こうじゃないか。タナトス!」
「は、はい!」
寝室の扉が開かれ奥からビクビクと怯えながら一人の美少女が入ってくる。
「頼めるか?」
タナトスと呼ばれた美少女は無言で頷き麻袋に包まれた女性達の死骸に駆け寄り語りかけ始める。そして対話が終わったのか結果を言った。
「・・・絶対に許さないって」
「だ、そうだ。じゃあな、侯爵」
「ひ、ヒィィィ!!!」
トールは無言で槌を振り下ろし、元々肉塊に近かった肥えた体は完全な肉塊と化した。
「よし、これでまた害虫を駆除出来たな。あとはこの国のトップの十二魔騎士の奴らが動くかどうか」
そう呟いた途端寝室の窓から大きな歓声が聞こえてきた。
「どうやら到着したようだな、この国の英雄様達が。さて、顔くらいは見に行ってやるか」
ゲス侯爵の館の前は市民たちの恐慌状態に近い声で埋め尽くされていた。しかし市民たちは気が付いたようだった。自分達の英雄が目の前に到着していたことに。
「じゅ、十二魔騎士だ!」
一人の市民がそう言った途端辺りには爆発に近い歓声が降り注いだ。
「よっと」
窓から一人の青年が飛び降りる。
「お前が組織のリーダーか?」
ルークは目の前の青年に問いかける。
「まあ正確には違うがリーダーみたいなものかな」
トールは認める。そしてルークの顔をよく見つめる。
「それでは逆に問うとしよう。お前が十二魔騎士のリーダーか?」
「一応ランスロット家の次期当主、まあもう当主みたいなものか。ここにいる全員はもう時間次第で当主する者達だ。次期当主の最後の仕事として貴様ら反逆者を捕まえるとしよう」
その言葉に十二魔騎士の全員が自らの武器を抜く。
「抜いたな?ならばこちらも、それ相応の態度で答えるとしよう」
その場に気付けば八人の青年と女性が揃っていた。そして各自自分の武器を手に持っている。
「ハッ、国賊どもめ」
「ハッ、偽善者どもが」
二人そろって呟いた後ルークの剣とトールの槌がぶつかり合った音が開戦の銅鑼のように鳴り響き、互いに襲い掛かった。
「消し済みにしてやりますわ!」
「させると思う!?」
レアの雷撃を纏った鞭が暴れ狂う。しかしそれに対抗するかのようにモルドレット家の次期当主であるリリィの蛇腹剣が雷撃を纏ってぶつかり合う。そして辺りに激しい雷撃の爪痕が刻まれていく。
「しょうがないな、十二魔騎士相手だと、僕もちょっと手を抜けないかな」
そう言ってハデスはザクロの実を口に含み背中の大剣を抜く。
「強そうだ、君の相手は俺がさせてもらうよ」
そういうのはガラウェイン家次期当主レオン・ガウェイン。ルークとセレナに匹敵する剣と魔術の腕前を持つ豪傑である。
「アアアア!!!」
「ふっ!」
互いの大剣と長剣が激しい剣戟の音を鳴り響かせる。
「それじゃ私も!」
そう声を発するヘスティアの手には両手持ちのハンマーが握られていた。そのハンマーを地面に叩き付け地形を思いっきり壊そうとする攻撃を一人の女性と獣が阻止する。
「させませんよ」
「ガルァ!!」
ヘスティアには百獣の王であるアンガラが襲い掛かり、地面に手を添え土魔法を使用しておるのはユーウェイン家次期当主であるアリア。
「うわぁ、でっかいライオンさんだねぇ!」
ヘスティアは襲い掛かられているのに楽し気な声を出す。
「全く、確かにこれは私達じゃないと苦労しそうですね、ルーク」
アリアは苦笑交じりにルークに声をかける。
「そうだろ?っと!」
「よそ見してる暇はないんじゃないか?」
すぐにルークは顔を目の前のトールに移し、彼の槌を防ぐ。
「っこの馬鹿力!」
「ありがとよ!」
互いに武器をぶつけ合う。
「射抜く」
セレナはどこからとまなくとびかかる矢を避け、弾き、あるいは逸らしていた。
「いったいどこから・・・」
「見抜かせないわよ」
一人の女性の声は聞こえるのだがその声の主の居場所までは特定できない。
「全く!」
セレナはそれでもこちらに飛来してくる矢に一か所も傷を負うこともなく対処していた。
「私の矢は必中よ?」
「私も守りに関しては要塞と称されているわ。矢が砦を落とせると思って?」
「試してみる?」
そして一つこれまでとは異なる音が鳴り響いて一本の矢が飛来する。
ギュオッ!!
そんな異音が鳴り響いたと思った途端セレナは自分の盾をほぼ反射的に突き出し全魔力を守りに使わなければならないということを悟る。
「光壁!金剛石七つ!!」
セレナの前に光の壁と極大なひし形の金剛石が七つ並び立つ。
「セレナ!?」
十二魔騎士全員がセレナの放った魔法に驚愕を隠しえなかった。彼女の持つ最大防御技が2つ、それも同時に展開されたのだ。当然十二魔騎士全員はセレナの持つ防御系統の魔法の堅牢さをよく知っている。それ故に驚いたのだ、彼女がその二つを同時に展開したことに。そして全員で悟る、今セレナが相手にしている敵はセレナが最高峰の防御魔法を使わなければ防げないと考えた程の攻撃を仕掛けようとしているのだ。そしてそれはトール達にも誤算だった。
「まさかアルテミスの奴、あれを放つ気か!?」
八人の鴉は全員後ろに下がる事に全力を注いだ。
十二魔騎士は全員セレナの後ろに下がる事に全力を注いだ。
ォォォォ・・・
一本の矢は一度爆縮を起こしそこから広大な光を発生させた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
普段大人しい人ほど怒らせるととんでもないことをしでかす・・・アルテミスがやったことですかねwさて、今回で遂にというべきか八人の鴉と十二魔騎士の戦闘です。どちらが強いのか・・・それは読者の皆様のご想像にお任せしますが互いにまだ5,6割の実力しか出しておりません。秘密兵器はそうやすやすと見せられるものではありませんからね。
また、登場人物が随分と多くなり混乱しておられる読者様もいらっしゃることでしょうし一度登場人物一覧、みたいなの作ったほういですか?その辺の事もお聞かせいただけると幸いです。
それと、これが年内最後の投稿となります。今年もこんな虚ろで投稿ペースも遅く、話も短い作品を読んで頂き、ついてきてくださって本当に感謝してもしきれませんが感謝を述べさせてください。本当にありがとうございますm(__)m
それでは読者の皆様方、よいお年を!




