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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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シレーネの問い 後編

「どうもこうも……おもっていない?」


 俺の言葉に……。

 シレーネさんはややショックを受けたような様子となる。


「そうです。

 より正確に言うならば、あなたを捕虜にしてからここに至るまで、どうもこうも思う余地はなかった」


 そんな彼女に対し、今度はこちらからほんの少し――一センチだけ、顔を近づけた。


「んゅ……」


 そうすると、当然ながら、ユカタの薄い布越しに先端を触れさせ合っている彼女の胸が、それだけやわらかに……あるいは液体のごとく沈み込んでいくわけであるが、酔っているせいかなんなのか、いまいち触覚が薄くなっているため、特に構う気持ちは起きなかった。

 なぜかくすぐったそうな……物理的にあり得ない現象だが、お腹の奥でもくすぐられているかのような顔を見せるヨーギル王国の第一王女殿下に、これだけはハッキリと告げておく。


「大前提としてですが、私があなたを捕虜としたのは極めて偶発的な戦闘の流れによるもの……。

 たまたま、あなたの搭乗する王立連合主力M2(ピノキオ)が最後の一機となっており、むやみに女人(にょにん)の命を取りたくはないという感性が働いた結果に他なりません」


 彼女との初対面時……。

 つまり、今は宮内(くない)省のSPによってどっかへ連れていかれている第三皇子(ヴォルフ)と、その配下たちを救うべく行った戦闘が思い出される。

 あの時、俺が知っていたのは、九機いるピノキオの内、指揮官の立場にある機体のパイロットが、女性であったということのみ。

 その女性が、よりにもよってジンバニア王立連合を形成する五王国の一つ――ヨーギルのお姫様であったと知ったのは、戦闘後の尋問で羊羹を食べさせた時のことだ。よいこのみんな、捕虜には和菓子を食べさせよう!


「そうだな……。

 あのときにいただいたようかんは、ほんとうにおいしく――」


「――イセタウン名物の赤福やういろうもクッソ美味いですよ」


「――たべりゅううう!

 じゃなかった。

 たしかに、すくなくともであったじてんでは、ころしころされのかんけいせい。

 ゆえに、あたしもぶかたちが、きくんにころされたけんについては、サッパリとながしている」


「そうしてもらえると、助かりますよ。

 そのことは、少し、しこりになっていたから」


 苦笑いしながら、答える俺。

 どうでもいいけど、シレーネさんのお胸は彼女が何か言葉を発するたび、肺呼吸の反動を受けてムニムニと俺の胸へと押し付けられてくる。

 他人の呼吸を測るのは格闘技における重要な能力であるが、まさか、このような形でそれを感じる日がこようとは夢にも思わなかった。


「では、そのごはどうだ?」


「その後……?」


「その……あたしをつうじて、こんいんがいこうをするってきまってから、あたしのことをどうおもうようになったか……とか……」


 もじもじと、形の良い唇を下に突き出すような形で告げるシレーネさん。

 ああ……。


「それこそ、どう思うもこう思うもないという言葉に集約されます。

 俺とて、銀河帝国の第四皇子。

 臣民の税金によって生かされている身であることは、よくよく承知しておりますし、その結婚は、市井の男子が当たり前のように考えるものではあり得ないこともまた、よく理解しています。

 だから、今回のように敵対勢力との婚姻外交で利用される形になるだろう未来も、当然ながら想定していた。

 だと、してもですよ?」


「だと、しても?」


 その気になれば、キスすることすら可能だろう超至近距離。

 やや濃い色合いをした彼女の青い瞳を見据えながら、こう言ってやった。


「見合いの席すら、設けていない」


「見合い……」


 ポカンとした顔つきで、俺を見つめるシレーネさんだ。

 確か、地球文明時代のジャパンでは、ホテルとか料亭とかで親同士が若い男女を引き合わせ、結婚前提の挨拶をさせるお見合い文化があったのだったかな。

 似たような文化は、それこそ、人類が宇宙へ進出する前の各国家に存在していたし、現在でも、それは強く根付いている。

 ことに、俺やシレーネさんのような皇族王族ともなれば、より顕著。

 政治制度的に後退する形で王侯貴族による(まつりごと)が敷かれた結果、家同士の結びつきというものはより重要視されているのであった。


「はは……」


「ははは……」


「「ははははは……」」


 何がおかしいのかは、よく分からない。

 ただ、とにかく面白おかしく思えて、自然と笑い声を漏らしたのは、確かだ。

 そして、どうやらそれはシレーネさんも同じだったらしく、二人揃って笑う。

 そうしていると、笑い声の振動で震える彼女のお胸が、こちらのお胸も揺らしていて、重ねた笑い声以上に感情を重ね合わせている気がした。


「そうだな……。

 たしかに、そうだ。

 あたしのほうこそ、イラコでんかがどういうにんげんなのかを、まったくしらない」


「ええ、そうです。

 俺は、シレーネ・ヨーギルという女性のことを、何も知らない。

 ただし、我が国が貴国に対して申し込むこの婚約が、これから死にゆくはずだった数多くの兵を救うことは知っている」


 キリリと顔を引き締め、言い放つ。

 こればかりは、彼女が俺を知らなかろうと、その逆に俺が彼女のことを知らなかろうと、疑いようのない事実。


「それだけじゃない。

 泥沼だった戦線が、貴国と我が国との友好によって崩れれば、ジンバニア王立連合を形成する他の主要四王国や、小さな諸勢力たちも立場を考えざるを得ない。

 この惑星レクから、あちら側で繰り広げられている人類史最大規模の戦いが、大きな転換点を迎える。

 間違いなく――終結に向かって。

 ゆえに俺たちは、決して私情を挟まない。

 他の外交路線もあるにはあるが、最終的に親父殿が決したように、王女と皇子の婚姻ほど分かりやすくはないし、即効性もない」


 なんで最終的に親父殿が婚姻外交路線でいくことを決したんだっけ?

 確か、ペーター兄さん辺りが、俺の気持ちを慮って反対してくれてたような、そうでもないような……。

 まあいいや、今は思い出せない。


「しじょうをはさまない、か。

 はさめない、ではないのだな?」


「だって、あなたは……挟まないでしょう?」


 おかしな言葉尻の捉え方をしてきたので、つい聞き返す。


「そうなら、お姫様自らが敵地深く潜入する隠密隊に志願したりはしない。

 国民の士気向上のため、自分の命をもいとわない。

 あなたがそういう人であることくらいは、分かっているつもりだ」


「ほかには?」


「他に?

 えーと、ヨーロッパ系の人種なのに和菓子というか小豆菓子への抵抗がなくて、牛が好き?」


「ほかには?」


「他は……えーと……思いつかないです」


「……ふふん」


 何に満足したのだろう?

 とにかく、満足げにたっぷりとお胸を揺さぶり、その柔らかさと振動を俺の胸に伝播させてきたシレーネさんが、そっと体を離す。

 俺の下半身へと半ば馬乗りになる形での問答だったため、そうすると大きく開かれているユカタの下部分から、彼女の下着が覗き見えてしまった。

 うーん、何かがもったいないような? そうでもないような?


「――わぷ」


 と、そんな俺の頭をいきなり抱きかかえてきたのは……小さなお手ての感覚から考えて、エステか。

 ママに押さえつけられていたが、解放されたらしい。


「イラコ、話は終わった?

 いや、終わり。わたしが決めた」


「んな、理不尽な」


 ううむ。

 12歳児のやわい腕で押さえ込まれているせいで、何も見えんな。


「うふふー。

 なかなか、面白いお話でしたよー」


 視界が塞がれた中で聞こえるのは、ママがくすくすと笑う声。


「イラコ殿下!

 そんなことより、殿下も楽しく遊びましょう!」


「――うおっと!?」


 エステと反対側から、追加で頭を抱きかかえてきたのは――マミヤちゃんか?

 鼻先をくすぐる黒髪から漂う柑橘系の香りが、くすぐったい。


「そーよ! そーよ!

 あんたも一曲、披露しなさい!」


 いつの間にか演歌を歌い終えていたらしいディートが、ケラケラと笑う声も聞こえてくる。


「ようし! それならば、あたしもうたうぞ!」


「お、いいわねー!」


 だが、俺に代わって立候補したのはシレーネさんで、マイク代わりのシュワシュワする麦のジュース瓶を渡された彼女が、間を置かず歌い始めた。

 それから……。

 それから……。

 うん……。


 楽しい時間だった。

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ディート「呑み比べはどうなったーーー?」(へべれけ)
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