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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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P(ピンチ)3 後編

 なんということだ……!

 まさか、まさか……俺の入浴中に、そうと知らない女性陣が入ってきてしまうなんて……!

 なんたる悲劇!

 このままでは、何も知らず入浴してきた彼女たちの裸体を目撃してしまうことになる……!

 紳士として、曲がりなりにも銀河帝国の第四皇子である身として、それだけは避けねばならない……!


 ひとまず、俺は今()()の状態!

 当然、都合よく手ぬぐいや桶を持っていたりはしないので、この両手で下半身のイラコ君を隠さなければ!

 ブラブラするものを包み隠し、息と気配を殺して『岩の湯』の象徴……浴槽の中央部に屹立する巨岩へ背中を預けた。


 この岩こそ、今存在する唯一の遮蔽物……。

 これを上手く使えば、状況の打破もなるか……?


「あー! それにしても、でっかい岩ですねー!

 こんな風に浴槽の中心部に配置するのが、わびさびというものなんでしょうかー?」(右から)


「わびさびというのは、ジャパン風の美的価値観であっただろうかー?

 確かに、このようにしていると、物言わぬ岩が何かを訴えかけてきているようなー?

 そのような気分になるなー?」(左から)


 ガッデム!

 右からマミヤちゃんが……! 左からシレーネさんが……!

 まるで、獲物を仕留めにかかる猟師のごとき足取りで、それぞれ浴槽に入ろうとしている!


 万事休す!

 ここ『岩の湯』の出入り口がこの巨岩を挟んだ反対側にある以上、岩の陰を利用して脱出するにしても、右か左か、どちらかに集まってもらわなければ、どうにもならない!

 このように、一切の逃げ場が生まれないよう両サイドをガッチリ固められてしまっては、いかんともしがたかった。


 ――チャプリ!


 ――チャプリ!


 まずい! 二人とも、すでに浴槽へ踏み入っている!


「あー! それにしても本当に見事な大岩ですねえ!

 ひょっとして、M2の頭部くらいの大きさがあるんじゃないでしょうかー?」(右から)


「うむー! そうだなー!

 あんまり見事なものだから、真正面からだけでなく、後ろからも見たくなるなー!」(左から)


 しかも、美術館に展示されている彫刻を、様々な角度から鑑賞しようとするかのようなノリで、チャプチャプとこちらに歩んできているではないか!

 なんか、三下の役者がオーバーに演技しているかのような棒読みじみた言葉の羅列であるが、それだけ、この巨岩の見事さに心を打たれているのだろう!

 諸行無常! もはや、我が天命もここまでか!


 かくなる上は、目の前にあるこの巨岩をよじ登ることによって、上方からの脱出を図るか……?

 しかし、もし見られたらどうする?

 その時俺は、アレをブラリとさせたまま、悠然と巨岩の頂点に立っているんだぞ?

 とんだ大変態もいたもんである。

 だったら、まだToLOVE(とらぶ)るであるとハッキリ分かるこのシチュエーションのままバッタリ遭遇した方が、お互いにダメージが小さいのではないだろうか?


 あるいは、秘孔によってこの目を一時的に潰す……?


 様々な選択肢が、俺の脳内を駆け巡る。

 まるで、一秒が一分にも、引き伸ばされたような錯覚。


 ――チャプチャプ。


 ――チャプチャプ。


 しかし、錯覚は錯覚であくまで錯覚であり、そうこうしている間に、二人の気配が両側から迫ってきていた。

 もはやこれまで! 光ある世界よ! しばしさらば!

 右手をチョキに開き、両眼孔の下に存在する秘孔――月窩(げつか)を突こうとした、その時だ。


「二人とも、そのまま湯船に入るのはよくない。

 まずはマナーとして、体を洗って髪もまとめるべき、そうすべき」


 救いの神! ここに降臨!

 普段は「お風呂は面倒くさい。超音波シャワーで十分。自分で洗うのも面倒くさい。イラコ洗って」と言ってはばからない我が妹が、なんとなくマジなトーンを感じる声でド正論を言い放ったのである。


「ぐふ、ぐぇへへへ。

 そうね! 絹糸より細そうなその髪から、お股やお尻に至るまで、しっかりと洗わなければいけないわね!

 ふぇゆひゅひゅでゅふ!

 エステ、今日はアタシがお・姉・様と・し・て!

 隅々まで時間をかけて丁寧に洗ってあげるわ!」


 そして、ディートのやつ超きめえ!

 なんだこいつ? 実の妹相手に、どうしてこうまで気持ち悪くなれるんだ?

 つーか、「お股」の辺りの発音、マジでねっとりとしててウゲエッとなる。

 こんなやつをこの世に生み出しちまった父親の顔を見てみてえわ……俺の父親と同じだったわ。テンプレデザインの神様みたいな容姿した御仁であらせられるわ。


「や」


「そんな!?」


 ともあれ、エステの返答はにべもない。ごく当然のことである。


「マミヤ、マミヤ、洗って」


 代わりに指名を受けたのが、マミヤちゃん。

 先日の不機嫌期間も、俺に代わってエステを入浴させていてくれたから、これは納得の人選。


「え……?

 ええっと……はい」


 仮にも皇女から命じられれば、拒否する権利などない。

 よほど岩の裏側を見たかったようだが、観念して洗い場の方へ向かっていく。


「シレーネも、一度洗い場で体を洗うべき」


「あ、あたしか? いや、しかし……」


「わたし、おねーさんにするなら、きちんと入浴マナーの守れる人がいいなー。

 ああ、人の裸をジロジロとガン見しないおねーさんがいいなー。

 そういう気分だなー」


 ナイス……!

 ナイスだ……エステの気分……!

 俺にとって極めて都合よく、マミヤちゃんとシレーネさんを洗い場に引きつける感じになってくれてありがとう……! エステの気分……!


「そうね!

 そんな不埒者がいたらこの姉に! お姉ちゃんに! お姉様に言いなさい! エステ!」


 一方、ディートは多分胸を張って高らかに言い放っていた。オメーのことだよ、見なくても想像がつく。


「むう……そういうことなら……」


 チャプチャプという音と共に、シレーネさんの気配も洗い場の方へと遠ざかっていく。

 いいぞ……イイ流れだ……!

 よく分からないけど、妹がナイスアシストを決めてくれた。しかし、ピンチはまだ終わらない。

 感じる……チラッチラとした視線が、我が頼れる相棒たる巨岩に注がれているのを……!


(マミヤちゃんとシレーネさん、そんなにこの岩が気に入ったのだろうか?

 ともかく、一瞬でもチャンスを――は!?)


 瞬間……。

 俺の視界に入ったのは、都合よくどこからともなくプカプカと流れてきた――アヒルさんのオモチャ!

 鍛え抜かれた我が学力が唸る……!

 ここは、アヒルを投げて陽動だと……!

 タイミングを計れ……ベイベベイベベイベベイベ……カッ!


 ――カランッ!


「「「「――!?」」」」


 俺の投げたアヒルさんが、手応え的にひっくり返った状態で浴場の床へ転がり、女性陣の注目を集める。


 1MORE!


 ここだ! ここしかない!

 手にしたチャンスを活かすべく、水跳ねの音は最小限に抑えつつ飛び出す!

 開いた右手を高々と突き出しての、ジャンプ。


 ――シュピピピピンッ!


 ――シュバッ!


 ――シュンシュンシュンッ……!


 ――シュバババババッ……!


 そこから繰り出されるのは、空中前転、天地逆転スピン、横スピン、空中半捻りなどなど……。

 一連の動きを、バレリーナのごとき華麗さで繋ぎ合わせる――フルチンで。

 そして、地に向かうツバメのごとき鋭さで蹴りを突き出し、出入り口前へと音もなく着地した――フルチンで。


 うおおおおおん! 俺が! 俺こそが! 皇子皇女(きょうだい)のナンバーシックスだ!

 イラコの父がいる! イラコのママがいる!

 そして、イラコは、ここに――いない!

 やはり音もなく引き戸の開け閉めをし、向こう側――脱衣所へと至ったのだ!

 この間――実に0.5秒!


 引き戸という遮蔽を得ても油断することなく、最速で体を拭いて黒無地のトランクスパンツを履き、着替えとして借りたユカタも着用する。

 そして、脱出!

 脱出! 脱出! 脱出! 脱出!

 圧倒的――脱出!


「ふうううぅぅ……!」


 外へ出て頭にタオルを乗せ、縮れ毛たちが自主的にゴシゴシと拭くのに任せながら、息を吐く。

 なんと鮮やかな脱出劇。

 もし、俺が物語の登場人物だったら、読者からこう称賛されていただろう。


 いよっ……! 主人公の鑑っ……!


 ……と。


「あらあらー。

 まあまあー」


 なぜか『岩の湯』外の廊下に立っていたママが、プニップニの頬を困ったように片手で押さえていた。


 本編スタメンは、ゆかり、牛丼先輩、アイギス。

 エピソードアイギスでは、妹、順平、牛丼先輩がスタメンでした。


 「面白かった」「続きが気になる」と思ったなら、是非、評価やブクマ、いいね、コンセントレイトして即テンタラフーなどをよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
逆温泉回というわけですね。 これはきっと150話くらいで主人公の無双が入り、 200話くらいに家族愛の大団円があるのかもしれない…。 考えてみると、昔の巨大ロボットものも、地縁血縁の中小企業スタイルが…
ディード以外の3人はいいとして ディードに見られた、見た、したらお風呂が壊れること確定だから仕方ないね
ディートあたりに見られてギャー!してほしかったぜ
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