P(ピンチ)3 中編
「本当に、綺麗。
私、名前こそ日本人風ですけど、実際に日本文化へ触れる機会はなかなかないので、こういうのはすごく嬉しいです」
直径15メートルはあるだろう岩造りの浴槽から立ち上る湯気に、ほっそりとした裸体を包まれたマミヤは、そう言いながら湿り気を帯びつつある黒髪を払った。
タオルで前部分の要所こそ隠しているが、それ以外、特に身を守るものはない完全な無防備状態。
平均よりやや細身のシルエットを湯気に映し出しつつ、理知的な翡翠の瞳が――素早くうごめく!
何を、探しているのか?
無論……素っ裸で先に入浴しているはずの第四皇子イラコ・ジーゲルその人であった。
すでに脱衣所で服を脱ぐ際、オープンロッカーの端へ置かれた脱衣カゴに、丁寧に畳まれたイラコ皇子の衣服が存在することは、確認済み。
その際、上へ置かれた替えの下着類から、彼が王道を行くトランクスパンツ(黒無地)派であることも把握している。
なぜ、よほど注意深くなければ気付かないほど端に位置する脱衣カゴの状態を、見落とさなかったのか?
それを説明するには、イラコママの言葉を思い出さなければなるまい。
あの後……。
さすがは大きなお屋敷というべきか。
アルファード氏の部屋を借りるらしいイラコ皇子も含め、なんと、全員に一室ずつ個室を貸してもらえる運びとなった。
そして……。
『それにしてもー。
イラコ様のことですから、ご婚約を申し込む段になっても、きっと浮いた出来事の一つもないのでしょうねー?
なんなら、メケーロさんのお孫さんもこんなに可愛らしいのに、まったくそういったイベントは起こっていないんじゃないかと思いますー。
お父上の皇帝陛下は、メイドたちの女湯にこっそりのぞき穴を作っていたのが後々に皇妃様へバレて、バチクソに怒られたくらいなんですけどねー』
……などとわざとらしい独り言をつぶやきつつ、女性陣を個室に案内したイラコママ。
その後、なんなら15歳のマミヤよりも年下に見える――胸の戦力は胸囲的だが――メイドのおママ上は、こう言ったのだ。
『お風呂は、あちらのマジックミラーに覆われている疑似露天風呂をお使いくださいー。
このお屋敷は二種類のお風呂があるので、今日のような場合は、男女で別々のお風呂を使い分ける形となりますー』
なるほど、和風建築で造られた壁の一部を、マジックミラーに置き換えたかのような、日本庭園内に突き出た建物……。
そこを指差しながらの言葉に隠された隠しメッセージを、マミヤは確かに見抜いた。
ここで重要なのは、イラコママが一言たりとも、どちらのお風呂が男湯で、どちらのお風呂が女湯であるのかに、触れていないこと。
足すことの、それを知ってるとバレたら、宮内省に処されそうな皇帝陛下のクソしょうもないエピソード。
二つの材料がフュージョンしてアップ! キレのイイ答えをマミヤにもたらした。
つまり……イラコ皇子はおそらく、あの疑似露天風呂へ先に入っているのだ。
そして、イラコママは実際どうかと思うほどそっち方面の欲望を見せないイラコ皇子に、ごくごく一般的な性欲の目覚めをうながすべく、ラッキースケベイベントを画策しているに違いない。
なんという……用意周到さ!
あるいは、メインターゲットは国が婚約を申し込んでいるシレーネ王女であり、自分はオマケなのだろう。
だが、それがどうしたというのか!
マミヤ的には、イラコママと同じポジションだとしても、それはそれでありである。
ゆえに、裸体を隠すのは最小限に押さえ、どんとこいの構えで浴槽へ歩む。
自分の裸を見せつけつつ、イラコ皇子のイラコ皇子もこの目に焼き付ける!
それが、この場における最適解……!
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「アマテラス内の浴場やサウナもそうだったが、こうして女同士、一緒に汗を流すというのは、なかなかどうして心が弾むものだな」
何かが熟し、こぼれ落ちるような……。
興奮しているような、あるいはもっともどかしいような……。
不思議な感覚に全身を支配されながら、漂う湯気の中を裸で歩むシレーネである。
なぜだろうか?
一糸まとわぬこの身が、はち切れるのではないかという、不思議な錯覚に陥っていた。
シレーネがそうなっているのには、理由があり……。
それを説明するには、イラコママの言葉を以下省略。
つまりは、マミヤ少尉と同様の思考を経た上で、同じ結論に行き着き、イラコ皇子が王道を行くトランクスパンツ(黒無地)派であることを知るに至ったのである。
とはいえ、仕組まれたラッキースケベイベントであることに気付いていながら、ノーガードでこれへ臨む理由には、似て非なる大きな違いがあった。
(実際、イラコ殿下とは、驚くほど何も進展していない……)
このことである。
自分への婚約申し込みがかかっていると、知らぬまま行われた第二皇子との決闘劇……。
世間の評判はともかくとして、シレーネから見ればあれは、イラコ皇子とディート皇女の仲違いに、敵方が巻き込まれただけであった。
となれば、自分への婚約申し込みに対し、イラコ皇子が本音でどう思っているかは、明らか。
端的にいって、乗り気ではない。
が、国家戦略としてやらねばならぬというのなら、我を殺すだけの度量はある。
……と、こういったところだろう。
事実として、内輪で婚約申し込みの発表をして以来、イラコ皇子が二人きりの時間などを作ってくれたことは、ない。
それでは、困る。
まだ銀河帝国側が婚約の打診をしている状態に過ぎないが、シレーネからしてみれば、これは故国ヨーギルにとって絶好の落とし所。
最前線に近しい拠点であるこの惑星レクに滞在し、あらためて帝国側の物質的豊かさを見せつけられた今となっては、尚更だ。
祖国のため、国民のため、王位を継ぐ弟のため、自分は上手くやらねばならない。
古来より、肉を切らせて骨を断つという。
ここで、思い切って裸を見せることで、何かが進展することを狙うシレーネであった。
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普段は黄金の髪をツーサイドアップにしている第三皇女ディートであるが、さすがに、入浴時ともなれば、完全に髪を下ろした姿となる。
漂う湯気で少し湿ってきた金髪を肌へ貼り付け、他に何をまとうこともなくこの『岩の湯』へ立ったディートが目で追うものは、ただ一つ。
そう……。
(ふおおおおおっ! 久しぶりにエステたんの裸体頂きましたー!)
……妹である第四皇女エステの裸体である。
(もう! なんなのこの肌のきめ細やかさ! 白さ! 異世界から舞い込んできた妖精なの!? フェアリーなの!?)
クールそのものを装った顔で、彫刻の題材にもなり得そうなほど完璧な稜線を描く肢体を晒しながら、より完璧なプリティさを誇る幼き天使の裸をガン見するディートだ。
しかも、エステたんはただの天使ではない……。
(ほむほむほむ、これはいけませんなあ! オッパイ膨れてます! あー! オッパイ膨れてます! 二゛次゛性゛徴゛し゛て゛い゛ま゛す゛!゛
ありがとぅ……! ありがとぅ……!)
皇族共通の碧眼で見据えるのは、ほんのわずかに膨らんでいる妹の胸!
(腰も心なしかくびれてお尻も可愛らしくキュッとなってきて! あー! たまりません! 受肉っていうんですかあ!? 幻想さと確かに宿りつつある色気の調和というんですかあ!? ぐへへへへへ! そしてお股! 文字通り何もないおへそから下、本当に小さな割れ――)
普段は銀髪をツインテールにした姿しか見れない妹の、レアな髪下ろし姿の裸体を、おいこいつヤベーこと漏らし始めたぞ地の文止めろ!
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かくして……。
ウェブ小説の主人公としては、あるまじきほどそっち方面の欲が薄いイラコに、Pが3、迫りつつあった!




