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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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VSディート 1

 決闘。

 言うまでもなく、二人の戦士が互いの命をかけてぶつかり合う私闘であり、死闘だ。

 つまりは、どこまでいっても当事者同士の喧嘩に過ぎぬわけであるが、こういったものに野次馬根性的な面白さを見い出してしまうのは、人間という生き物のどうしようもないところ。


 例えば、中世に騎士同士が行った馬上槍試合。

 例えば、アレクサンドル・プーシキンの決闘を代表とする17世紀から19世紀にかけての決闘文化。

 例えば、ジャパンにおいてサムライたちが行ったというドージョーでの流派交流試合。


 実際に血を流すところまではいかぬ事例も多々あるが、牙を持たぬ民衆にとって、戦士階層同士が行う私的な闘争というのは貴重な娯楽であり、根も葉もない噂話など交えつつ、これの観戦を大いに楽しんだのである。

 それは、銀河歴961年を迎えるに至った今日(こんにち)においても、いささかも変わることはない。

 扱う武装が、騎乗槍やレイピアから、宇宙(そら)を舞い粒子ビームを放つ機動兵器に変わろうとも……。

 いや、むしろそうであるからこそ、時に貴族同士で執り行われる決闘という突発的なイベントに、人々は沸き立つのであった。


 しかも、今回惑星レク近郊宙域で行われる模擬戦という名目のそれは、友とタッグを組んだ天才パイロット――第二皇子ペーターが、スクリュースピンペガサス狼牙キックで知られる第四皇子に対して挑んだものだという。

 つまりは事実上、次期銀河皇帝を巡る継承レースの一部。

 これで盛り上がらぬは、帝国臣民にあらず!


 また、庶子である第四皇子とタッグを組むのが、彼と同年同月同日同時間同分同秒に生まれたことでお馴染みの美姫――第三皇女ディート・ジーゲルだというのも、注目と関心を集めた。

 かねてより天才として知られ、先日には、実戦での作戦行動と武勲がタキオンネットで伝えられた第二皇子や、『勇者武闘タイゴン』の第四皇子と異なり、彼女の腕前に関しては未知数。

 だが、それゆえにこそ、人々は様々な憶測を口にしながら決闘の時を待ち望んだのである。


 もっとも、一般庶民が待ち望めるのは、各種端末の前で、であるが。


 貴族階級ともなれば、そうではない。

 チャーターされたスペースクルーザーに乗り込み、安全圏内から肉眼にてこれを楽しむのだ。

 しかも、貴族階級の一部にとって、これは単なる名声を巡っての戦いではない。

 整備を終えた給糧艦アマテラスから、密かにこの戦いを観戦するヨーギル王国の第一王女シレーネ……。

 彼女のオッパイで頭がイッパイになった第四皇子の婚姻外交を、ジンバニア憎しの貴族家代表となった第二皇子が妨げんとしているのである。


 つまりこれは、膠着している対ジンバニア王立連合への外交路線を巡る戦い……。

 真空の宇宙空間は、馳せ参じた観客たちの熱気によって、沸騰しそうなほどであった。


「果たして、どちらが勝つのか……」


「やはり、第二皇子殿下ではないか?

 スクリュースピンペガサス狼牙キックはまず間違いなく真実でありトゥルーであろうが、それでも『勇者武闘タイゴン』はあくまで再現VTR。

 それに対し、第二皇子殿下は実際にジンバニアの隠密隊と交戦し、これを一方的に蹴散らしているわけだから……」


「そうだな。

 第二皇子殿下のミラン・ドンナーは銀河最速のM2。

 いかにスクリュースピンペガサス狼牙キックであろうとも、当たらなければどうということはあるまいよ」


「両皇子殿下の随伴も重要だぞ。

 第二皇子とタッグを組むガスパーニ伯爵は、家督を継ぐ前にM2パイロットとして実戦を経験している。

 おお……出てきた。

 どうやら、重装備で支援に回るようだな」


「あのような装備が、ドンナーにあったか?」


「さしずめ、フルアーマーといったところか」


 縦に多段カタパルトを積んだ、靴箱のごとき艦影が印象的な第二皇子の座乗艦――航宙母艦ウルド。

 そこから発進した二機のM2を見て、貴族たちがそんな会話を交わす。


 ドンナーといえば、大昔のブラウン管テレビを彷彿とさせる頭部と、万力じみたマニピュレーターの形状が特徴的な量産機。

 第二皇子専用機ミラン・ドンナーは、その背部に可動域が高い一対のブースターポッドを増設し、マニピュレーターを五指タイプに換装。

 粒子散弾銃と折畳式電磁ブレードで武装したカスタム機だ。


 一方、並んで飛行するガスパーニ伯爵のドンナーは、見るからに重武装。

 鋼の機体全体をさらに覆うようなアーマーが増設されており、しかも、このアーマーは両腕部に粒子ガトリング、両脚部にミサイルポッド、両肩にレールガンが備わっているのだ。

 まさに、フルアーマーの名が相応しい重装甲と重武装。

 当然、ビームは低出力であり、実体弾も信管は抜かれているだろうが、見ただけで脅威の伝わる威容だ。


「対して、タイゴンは通常の粒子小銃装備か」


「いや、宮内(くない)庁の公式SNSによると、マニピュレーターに武装が追加されているそうだ。

 『超キュートでクールで可憐な天才美少女の第四皇女エステちゃんが開発した電磁格闘爪――ラスティネイル』というのが増設されているらしい」


「『超キュートでクールで可憐な天才美少女の第四皇女エステちゃんが開発した電磁格闘爪――ラスティネイル』か。

 第四皇子殿下はVTR通り、とことん徒手格闘にこだわりたいらしい」


「最大の必殺技は、依然としてスクリュースピンペガサス狼牙キックだろうがな」


 両舷から後部のダブルスラスターへ接続されているエネルギーバイパスが特徴の箱型戦艦……。

 給糧艦アマテラスから発進した黒いM2の姿を見て、貴族たちが言い合う。

 大昔のブリキ玩具じみたデザインのドンナーとは、似ても似つかぬしなやかなシルエット。

 しかし、見る者が見れば、同系統のスマート・ヴィークル社製フレームを使っているのが知れるタイゴンの武装は、帝国軍で広く使われているサブマシンガンじみた形状の粒子小銃だ。

 五指の先端部には付け爪とも言うべき新装備『超キュートでクールで可憐な天才美少女の第四皇女エステちゃんが開発した電磁格闘爪――ラスティネイル』が増設されているものの、四つものカメラアイが特徴的な第四皇子専用機は、あくまで格闘戦を信条としているようであった。


「第三皇女殿下が乗られているのは、これも宮内(くない)庁のSNSによれば、妹君が設計された専用機か」


「ペットネームはベレンジャーというらしい。

 あの大口径粒子狙撃銃……果たして扱いきれるのか?」


「リチャージにも相当な時間を必要とするはずだ。

 少なくとも、ドンナーの出力で気軽に連射できる代物ではない」


 サメのような艦影と艦首の巨大な電磁ブレードを特徴とする斬撃艦――フレイヤ。

 そこから出撃したワインレッドカラーのM2は、あまりに細く華奢なシルエットと、携行する大型の粒子狙撃銃が特徴だ。

 頭部に備わったカメラアイも明らかに狙撃仕様の単眼タイプであり、双子に近しい立場である第四皇子の愛機とは対照的に、接近戦など最初から考えていないセッティングと思えた。


「総括すると、これは万能型高機動機と重火力機のコンビと、格闘機と狙撃機のコンビによる戦いか」


「それぞれ、得意とするレンジに被っているところはあるが、得意戦法の性質は大きく異なる。

 なかなかの好カードだな」


 貴族ともなれば、M2戦に関する造詣も自然と深くなるというものだ。

 同種の決闘を幾度となく見てきた者たちが語り合う中、四機のM2が所定の位置についた。

 それぞれ、僚機と共に並び、大きく距離が離れた相手方を見据える形である。


「粒子兵器も電磁兵装も出力を落としてあるし、実体弾は信管が抜かれている。

 電磁シールドで守られている機体の総ダメージ判定を比べ合うルールか。

 もっとも、致命傷となれば即座に撃墜判定だがな」


「分かりやすくて、大変結構」


 M2を用いた決闘としては最もスタンダードなルールが、あらためてタキオンネット経由で告知され、いよいよ試合開始の時だ。

 観戦者たちの端末に、試合開始を告げるカウントダウンが表示される。

 同じものは、決闘に臨む各機のコックピットにも表示されており……。

 いよいよそれがゼロとなった時、タイゴンとベレンジャーが大きな――そして意外な動きを見せた。


『『――油断したな(わね)、この甘ちゃんがあっ!』』


 ……なんと、手にした射撃武装を互いに撃ち合ったのである。

 ちなみに、勘違いする人出てきそうだから明言しときますが、ディートのへそピアスはあの時水着に合わせてただけで、普段は当然付けてないです。

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― 新着の感想 ―
あいつ(ら)なら、絶対やると思ってました。
阿吽の呼吸で〇し合い開始。マリ〇ブラザーズかな?
こんばんは。 やっぱりな♂️(ビリー兄貴並感
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