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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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大円卓の間にて 2

 ねんごろ……。

 ねんごろ……。

 ねごろ、か。

 なるほど……。


 ざわざわと騒ぐ参加者たち――立体映像で投影されている姿同様、音声も増幅されている――を尻目に、いつだって冷静沈着なイラコ君はイラコブレインを総動員させた。

 イラコ頭脳は大明晰。毎日九時間の過酷な睡眠によって、常に万全な状態を維持されている。

 その脳細胞をフルに回転させた結果、俺が導き出した答えとは……!


『――イラコよ。

 あらかじめ言っておくが、16世紀ジャパンにおいてサイカ・クランと行動を共にし、イガ、コウガと並ぶニンジャ・クランであるとも言われているネゴロニンジャは一切関係がないぞ』


 ……っ!

 なるほど、さすがは親父殿。

 俺の思考に先回りしておられる。

 ならば、ならば、だ。


『当然ながら、仲良くパジャマパーティーして、すやぷうしろと言っているわけでもない。

 ボケようとしても無駄だ。

 貴様に、かの王女を婚約者として迎えろと言っておる』


 ……っ!

 つ、強いっ……!

 強すぎるっ……!

 この俺が、まるで赤子扱いだとっ……!?

 これが、時代の寵児フリードリヒ・ジーゲル……!

 銀河皇帝の力だというのか……!


 わなわなと肩を震わせる俺をよそに、生身でこの会議に参加している外務卿が、そっと挙手した。


『つまり……。

 皇帝陛下は、捕虜としたヨーギル王国の姫君を、寛容にも第四皇子殿下の嫁として迎え入れることによって、ジンバニア王立連合の切り崩しを図ろうというわけですね?』


 彼が親父殿の狙いを端的にまとめたことで、全員の視線が一斉に親父殿の方へ向けられる。


『まさに、それよ。

 対ジンバニアの戦争は、長らく膠着状態に陥っている。

 そうなったのも、兵站線の限界を迎えつつあるからと、反省はするがな……。

 ともかく、いたずらに長引く(いくさ)ほどつまらぬものも、そうそうない。

 何しろ、あらゆるものが溶けていく。

 物質的なものならばまだよいが、民と兵の心までも擦り切れさせる。これがよくない』


 親父殿の発言は、ごもっとも。

 ハンニバルしかり、ナポレオンしかり。

 戦いが長期化したせいで痛い目を見た英雄というのは、数多い。

 そして、対ジンバニアの戦争と彼らの失敗とで、被っているところがあるのは……。


『……そもそも、ジンバニア侵攻戦は短期決戦を想定していましたからな。

 それが、あちら方の予想以上の精強さによって、持ちこたえられてしまった。

 戦費の方も、当初予定していた十倍以上がすでに投入されております』


 バッサリと切り捨てるように告げたのは、財務卿。

 銀河帝国という人類史最大規模を誇る国家で、金庫番を務める男だ。

 その言葉は重く、遠慮がない。

 財務という国の根本を成す分野において、独裁者たる親父殿をも凌駕する権限の持ち主であるのだから、当然であった。

 彼の中で、対ジンバニア戦争はすでに損切りを決断すべき地点に達しているのである。


『交易に関する最高権力者として、私も賛意を示します』


 財務卿が国内の財産を管理する人間であるなら、交易卿はその名が示す通り、国外との交易を取り仕切る者だ。

 つっても、当たり前だが企業を経営したりしているわけではなく、輸出入品の決定などをするのがお仕事である。


『そもそも、この戦いの発端は、ジンバニア王立連合側が我が方との交易を蹴ったことです。

 かつて、彼らはフリーレーン自由商業同盟を通じ、我らが帝国の母体となったウィンバニア王国と取引を行っていた。

 そのウィンバニアに革命を起こしたことはともかくとして、友好的な存在だったフリーレーンを滅ぼし、この惑星レクも手中に収めた帝国との取引は、到底受け入れられないと』


『連合を形成する五王国の一角……ヨーギルの姫君が捕虜となり、イラコ殿下と男女の仲になったともなれば、そもそも敵対していた理由が薄れますか?』


『いかにも。

 外務卿殿の手腕にかかれば、少なくともヨーギル王国は切り崩せるのではないですか?』


『さて、大言壮語はしないでおきましょう。

 が……芽はあるでしょうな。

 こういう時、非民主主義国相手だとやりやすい。

 何しろ、話が早いですから』


 立体映像オンリーの交易卿と生身の外務卿が、トントン拍子に話を進めていく。

 うんうん、民主主義的な決まらない議論を嫌うのは俺も同じだ。

 だが少し待ってほしい。

 ここは帝政国家であり、俺は皇室の第四皇子なのではないだろうか?


『宮内を預かる者として、反対を申し上げます』


 果敢にも俺の意思を代弁してくれたのが、皇室関係職務の最高責任者――宮内卿。

 俺たち皇族にとっては、第二の父として仰ぐべき人物であり、帝国でも一、二を争うほどの人格者である。

 庶子である俺の誕生に際し、クソほど迷惑をかけられた立場でありながら、何かと気にかけてくれているし、母の生活に関しても何不自由ないよう手配してくれているからな。


『そもそも、皆さんは分かっておられますか?

 事は、イラコ殿下の婚姻に関わる問題。

 だというのに、先ほどから誰一人としてイラコ殿下の意見を聞かず、まるで物扱いではないですか!

 まずは、イラコ殿下ご自身の意見を聞くべきです!』


 バーコードハゲとちょび髭が特徴的な宮内卿の一喝に、一同が息を呑む。

 この中においては決して権限の強くない彼であるが、その仁徳が皆を黙らせたのだ。


『ふん……。

 確かに、肝心なイラコめの話を聞いていなかったな。

 どうだ? 何か言えることはあるか?』


 おお、すっげえ珍しいことが起きた。

 ベルトルトが俺に、助け舟を出してきたのである。

 まあ、助け舟というか、「お前皇族なんだから国のために嫁くらい貰えるよな? ああん?」という感じではあるが、助かることに違いはない。

 ようやく自然に発言する機会を得られたので、しっかりと自分の意見を口にしておく。


「実際、彼女を尋問してその素性を知った際、これは膠着している戦いの切り口になり得ると思ったのは確かです。

 その布石として、アマテラス艦内では一定の自由を与えていました。

 こちらは、参考になるかと思い用意した立体画像です」


 自分の携帯端末から、大円卓へとデータを送る。

 すると、一同に見えるよう、デカデカとした立体画像が投影された。


『なっ……!?』


『こ、これは……!?』


 俺から見て対面にいる親父殿(立体映像)とベルトルト(生身)が、共に目を見開く。

 彼らが見てるのは画像正面側になるが、俺はあえて、この背後から見た姿を解説しよう。

 まず、拡大した画像を背後からこの角度で見上げていることもあって、視界を支配するのは巨大な……それでいて、あまりにもやわらかそうな純白のお尻だ。

 美しく、男の視線を吸引する魅惑のヒップが、極薄の白いスーツによって覆われているのである。


 そして、わずかに覗き見える向こう側――あまりにデリケートなその部位は、やや分厚くガードされているのだが、その守りがあまりにピンポイントすぎるため、かえって意識を集中させてしまう。

 鋼の理性でもってそこから目を離してみれば、視線に入ってくるのはなだらかな背中と、背面からでも明らかなボリュームの胸部。

 バカな……そのものを見ずとも、背面越しで、かくも魅惑的だなんて……。

 それに、背中の弧線そのものもあまりに、美しい……。


 そうして視線を上げた先、辿り着くのは亜麻色の髪を一つ結びにしたうなじだ。

 結んだ髪が肩にかけられた状態のため、今は髪の結び目とうなじの生え際が露わとなっており……喉をくすぐられたような気分になる。


 これは……これは……。


『『『『『え゛っ゛っ゛っ゛っ゛っ゛!゛』』』』』


「すいません、間違えました」


 これ、アマテラスへ入れる時にスキャンしたデータだったわ。

 本当に表示したかったのは、黒ジャージで牛の乳搾りしてる場面である。


『待て! (カシャ、カシャ)

 待つのだ! (カシャ、カシャ)

 息子よ(マイサン)! (カシャ、カシャ)』


 何やらやかましいカシャカシャ音を響かせながら、手元でなんか連打している親父殿の立体映像が俺を制止した。


『そうだイラコ!

 少し待て!』


 生身のベルトルトが、携帯端末でカシャカシャカシャカシャカシャ……と写真を撮りまくりながら、親父殿に同調する。

 かくして、大円卓の間に四方八方から響き渡るは、猛烈なカシャカシャ音の嵐。


『ああもう。

 じゃあ、休憩で』


 生身のペーター兄さんが、呆れたように肩をすくめながら宣言した。



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― 新着の感想 ―
バケモンしかいねぇ...
ここまでくると仲の悪さがもう継承争いじゃなくて子沢山家族のそれだし会議の場で突発撮影会するほどの血の繋がりを見ると 第三王子の選民思想が例外だっただけじゃねえか?と思えてくる
こんにちは。 最初は威厳ある皇帝と優秀な家臣団だったのに、一息に瓦解しおったわ……げに恐ろしきはハニートラップよのぅ(違) あとベルトルト、別の意味でちょっと印象良くなりましたww そういえばペータ…
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