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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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勇者武闘タイゴン

 ニュース。

 人類が社会生活を営む上で、決して欠かせない報道番組の総称だ。

 映像内でニュースキャスターが報道内容を読み上げるようなそれが確立されたのは、20世紀になってからであるが、例えばかわら版や木版刷り(ブロードサイド)など、産業革命期以前にも、新たな情報を伝達するためのツールは存在した。


 RPGでおなじみ、吟遊詩人なんかはこれを職業としていた例だな。

 何も、彼らの仕事は敵味方にデバフをばら撒くことだけではないのである――ちなみに俺は、吟遊詩人より踊り子の方が好きだ。エロいから。


 さておき、事件や事故を伝える媒体が人類にとって必要不可欠なのは、まさに俺たちが社会性を備えた生き物であるからだろう。

 特に、国家というあまりに巨大な共同体を維持するためには、皆で大きな社会的情勢を共有し、意識を一つにするということが必要不可欠なのであった。


 そう、大事なのは意識を一つにすることだ。

 そのために自由闊達な議論を交わすということは、必ずしも必要不可欠ではない。

 いや、国家の統治制度によっては、それを悪とする場合も往々にして存在するものであり……。

 人類史最大の独裁国家である我が母国――銀河帝国もまた、良いか悪いかはともかくとして、民草の議論を必要としない類の国家なのであった。


 かような独裁国家にとっても、先の理由により情報番組は必須。

 でもでも、ただでさえあっちこち戦争ふっかけている親父殿としては、あんまり正確な情報伝えて厭戦感情が高まったりしても、都合が悪い。

 このような時、独裁者はニュースという存在をどのように扱うのか?

 その答えが今、給糧艦アマテラスのブリッジ……のメインモニターの一角へ映し出されていた。




--




「こいつ……動くのか?」


 俗に高価な棺桶とも称される狭苦しいM2のコックピット内で、黒く縮れた髪が特徴の、こう……なんだろう?

 妙に醤油っぽいというか、なかなか塩分高そうな顔立ちの軍服青年が、わなわなと肩を震わせながらつぶやいた。

 漆黒の軍服は、帝国軍の士官が着用する代物……。

 しかして、襟章も記章も存在しないことから、通常の軍人とは離れた所属にいる人物であると分かる。


『安心せよ――息子よ(マイサン)


 そんな彼に、サブモニターの一部を切り取った通信ウィンドウから話しかけるのが、長く伸ばした白髪とやっぱり真っ白なカイゼル髭を特徴とするムキムキマッチョな濃ゆいお爺ちゃん。

 そう、皆さんご存知ですね?

 彼こそ、我らが銀河帝国を一代で築き上げし英雄――銀河皇帝フリードリヒ・ジーゲル(69)です。

 要するに、俺の親父殿です。


「親父!」


 じゃあ、何?

 このお煎餅とか好きそうな青年は、俺ことイラコ・ジーゲル君(20)なの?

 俺、心の中では親父殿と呼んでるけど、面と向かって親父呼びする度胸はねえよ。

 つーか、口きいた覚えが全然ねえよ。


『そのタイゴンはな……お前の妹がやったのだ!

 全部だぞ! ……全部だ!

 リアクターから――OSに至るまでな!

 中途半端な手は入ってない!

 完璧にアップデートしてあるのだ!

 だから旧型のままだと思うな!

 動かしてみれば、分かるはずだ!』


 テンプレイメージの神様みたいな風貌した親父殿が、画面内の俺に向かって断言する。

 どうでもいいがな……親父殿。

 その妙に耳に残る喋り方はなんなんです?

 どうでもいいと言えばどうでもいい!

 けどな、感染(うつ)るんだよ、その言い回し!

 気が付いたらこっちまで同じ調子で喋ってる!

 これじゃあ会話にならないじゃないですか、親父殿!


「お兄様……」


 と、画面が切り替わり、これはリアリティを追求したのか、単純セットとして実物を使っているのか、高度にモジュール化された結果、どの艦船でも同じ内装の帝国軍製ブリッジが映し出された。

 そこで祈るように手を組んでいるのは、ジュニアスクールを卒業するかしないかという年齢の美少女。


 着用しているのは、漆黒の軍帽付き改造軍服にフリルミニスカートを合わせ、足元を白のニーソックスと編み上げブーツで固めた帝国軍の女子広報士官服……。

 銀色の髪は両サイドでツインテールに結わえられており、氷碧色の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。

 キラキラとしたエフェクトで彩られし抜群の美少女が、涙まじりの声で通信先のイラコ君に告げたのだ。


「どうか……どうか無事にお戻りください!

 お兄様が危険に身を投じていると、エステは胸が張り裂けそうです!」




--




 ………………。

 …………。

 ……。


「イラコ、どうした?」


 いつも通りキャプテンシートに座る俺の膝へオンし、一緒に映像を見るエステの後頭部へ無言の視線を送ると、腹違いの愚妹が振り返ってきた。

 うん……美少女なのは間違いないけど、実物はふってぶてしいツラしてやがるなあ!


「いや……なかなかリアリティのある映像だと思ってな」


「同意する。

 完璧に人物の特徴を掴んでいる。

 マミヤ、参考にしたという戦闘詳報の作成グッジョブ」


「エステ殿下!

 お褒めにあずかり光栄です!」


 キャプテンシートの隣に、タブレット端末を抱えながら立つ女子広報士官服の少女――マミヤちゃんが、むふーと鼻息を鳴らしながら答える。

 艷やかな黒髪は、腰までストレートに伸ばしたヤマトナデシコスタイル。

 印象的な翡翠の瞳には理知的な光を宿しているが、これはちょっとしたフェイクなんじゃないかと今は思わされていた。


「……本当に、こんな会話が交わされていたのか?

 あの状況で?」


 そんな俺の気持ちを代弁してくれたのが、壁際で見学するシレーネさん。

 亜麻色の髪を一つ結びにしたモデル系美人は、今は着るものがないので俺の私物ジャージを着用しており……。

 所在なげに胸の下で組んだ腕が、黒ジャージ程度で抑えきれない巨大な胸部質量をふふ……持ち上げていらっしゃる。


「もちろんです!」


「大体こんな感じだった」


 そんなシレーネさんに、マミヤちゃんとエステが力強く請け合ってみせた。

 うん……お前ら、あの時シャブでもキメてたのか?


 そんなこと言ってる間に、画面内ではクライマックスを迎えつつある。


『はあああああ……っ!』


 イラコ君の気迫に合わせ、両腕でペガサス座の軌跡を描きつつ、狼のごとく地(宇宙)へ伏せる構えを取った漆黒の人型機動兵器――タイゴンが、特徴的な四つのカメラアイをビカリとフラッシュさせたのだ。なんの光ィ!?


『うおおーっ!

 スクリュースピンペガサス狼牙キィーック!』


 そこから放たれるのは、そう……!

 俺の必殺技として、数多(あまた)の強敵を屠ってきたスクリュースピンペガサス狼牙キック!

 タイゴンが陸上選手じみたシルエットの機体を躍動させ、恐ろしい回転速度のスピンキックを放つと、機体周囲に謎のトルネードエフェクトが発生し、バリアのごとく包みこんだのだ!

 物理法則もへったくれもない謎エネルギーの竜巻をまとい、タイゴンが突き進むのは悪のジンバニア王立連合ロボット軍団!


『とああーっ!』


 実際にかの連合が主力M2として運用している機体――ピノキオとは似ても似つかぬ怪獣じみたデザインのロボットたちが、スクリュースピンペガサス狼牙キックを受けて次々と爆発四散していく。

 この際、明らかにエネルギー竜巻の範囲から逃れた位置にいる機体まで一緒くたに爆発しているが、細かいことを気にしてはならない。


『みたか! 悪のジンバニア王立連合!

 この俺とタイゴンがいる限り、貴様らに負けはしない!』


 無数の爆発を背にキメポーズしたタイゴンの中で、ここにいる俺のへらりとした顔とは似ても似つかぬ濃ゆーい顔のイラコ君が吠えるのだった。


 そして、画面が切り替わり、どこぞ放送局内ニューススタジオで、人気のニュースキャスターちゃんが映し出される。

 彼女いわく……。


『以上、給糧艦アマテラスを率いて前線の士気を大いに高めたばかりか、その英雄的活躍でジンバニア王立連合の隠密部隊を一掃した第四皇子イラコ・ジーゲル殿下の活躍を再現したVTR……。

 題して『勇者武闘タイゴン』でした』


「――いや、どこが再現VTRじゃい!」


 聞こえぬと分かっていながら、俺はメインモニターに向けてそうつっこんだのである。

 お読み頂きありがとうございます。

 いずれ本編でも語られますが、戦艦の合体はあえて伏せられている形ですね。


 そして、「面白かった」「続きが気になる」と思ったなら、是非、評価やブクマ、いいねなどをよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
親父殿(cv若本) う〜ん何処かで見た気がするぞぉ(すっとぼけ)
うーんこのイラコ殿下は拳でモニター叩き割ってそう
小宇宙が燃え上がったりしそうですねえ。 再現映像のエステさん見てみたいなあ。本物?いや別に...
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