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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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※大体顎が外れた八つ当たりです

 銀河帝国最大の弱点は何であるかと問われれば、組織としての能力の過半を最高決定者である現銀河皇帝フリードリヒ・ジーゲルに依存している点であることは、当の銀河皇帝本人ですら認める事実である。

 これはそのまま、将棋やチェスのごとく、指揮官に該当する皇帝()を詰まされれば終わりだからだ。

 しかしながら、弱みとはえてして強みへと変じるもの。

 ゆえに、銀河帝国の強さを支えているのはなんであるかと問われれば、組織としての能力の過半を最高決定者である現銀河皇帝フリードリヒ・ジーゲルに依存している点であると、断言することができた。

 これはつまり、どういうことかといえば、惑星レクで反乱騒ぎが起こった30分後には首都星ティンゲルの皇城に皇帝始め主だった者たちが、すでに馳せ参じていたということであり……。

 第四皇子イラコ・ジーゲルがアマテラスオオカミ・ブレイドの衝撃に大口を開けすぎて顎が外れていたのとリアルタイムに連動して、皇帝フリードリヒたちも顎が外れていたということである。


「ふぁ……ふぁほふぇいはいはいっはい……?」


「が……ががが……!」


「んっがんっぐ……!」


 誰もかれもが、うめくようにしながらヨダレを垂らし、言葉にならない言葉を漏らす。

 それに対し、司会進行を務めるフリードリヒ影の執事――セバスティアンは落ち着いた様子で、会議場内に設置されたデジタルボードへとスタイラスペンを走らせていく。


「ふむ、『あ、あの形態は一体?』と、皇帝陛下がおっしゃり、他の皆さんも、『バ……バカな……!』『んっがんっぐ……!』と、それぞれ驚きの言葉を漏らしていますな」


 一言一句丁寧に、デジタルボードへと書き込んでいくセバスティアンの姿は、まさに老執事の鑑……。

 そして、トランプとか武器にして戦いそうな風貌である。

 実をいうならば、モリーが主催した大企業の重鎮たちとのお茶会において、第四皇子イラコが同じ感想を抱いた現地雇用の執事こそが、このセバスティアン。

 要するに、皇帝の命を受けて潜入していたというわけであり、どうでもいい伏線回収がなされた瞬間でもあった。


 単なる(いくさ)上手、M2の戦闘上手がウィンバニア王国への革命を成功させて銀河帝国を建国できるはずもなく、フリードリヒ・ジーゲルという人物の奥深さが表れている事実でもあるといえよう。

 まあ、その銀河皇帝は、顎が外れて「が、がごごをはほひへふへ!」と、必死に訴えていたのだが。


「ふむ、皇帝陛下は『あ、顎を治してくれ!』と仰っていますな。

 他の方々は、いかがです?」


 クソ真面目にデジタルボードへ『あ、顎を治してくれ!』と書き込んだセバスティアンが振り向くと、「が、がごごをはほひへふへ!」との大合唱。


「ふむ……」


 それを受けて、セバスティアンは何やら考え込み、それから……。


「もしや! 皆さん、外れた顎を治してほしいのでは!?」


 ハッとした様子で問い返すと、「ふぉーは(そーだ)!」「ひはっへんはほ(きまってんだろ)!」「ほふぁふぉ(ドアホ)!」との大合唱である。


「これはいけません。

 ――皆さん!」


 パチリ、とセバスティアンが指を鳴らすと、どこからともなく「ザザザザザ!」と現われたバトル執事たちが、一斉に銀河帝国重鎮たちの顎部を掴む。

 皇帝フリードリヒの顎はセバスティアン自らが掴み……。


 ――ゴキリ!


 ……という鈍い音が、見た目はバロック様式、中身は最新のデジタル機器で彩られた会議場内に鳴り響いた。


「はぁー……はぁー……今度という今度こそ、死んだかと思った。

 あの、第三皇女(ディート)が座乗艦にしている斬撃艦との合体で生まれた新形態は、一体……」


 ハメられはしたものの、まだちょっと痛い顎をさすった銀河皇帝が、ペットボトルの水を飲みながら言い放つ。

 そうこうしている間に、バトル執事たちはまた「ザザザザザ!」と影の中へ隠れていった。

 大昔のショーグンがいついかなる時もニンジャを控えさせていたとコミックに書かれているように、銀河皇帝もバトル要員の執事たちを常に控えさせているのだ。

 なお、イラコママ相手には全くの無力である。


「まったくですな……」


「第一形態であるサンダーに関してもですが……。

 かの第四皇子殿下と第四皇女殿下は、どれだけ我らを驚かせれば気が済むのか」


 同じく顎の戻った重鎮たちが、胸を撫で下ろしながら同意してみせたが……。


「まあ、よかろう」


 そんな彼らに対し、ちょっと顎が痛いけどキリリとした表情を取り戻した銀河皇帝が、スパリと言い放つ。


「アマテラスという艦そのものを守る切り札であることと、バカらしいことと、なんか負けた気がすることから民間に対してアマテラスオオカミへの合体機構は報道を禁じていたが、これからはむしろ大々的にこれを宣伝し、惑星レク崩壊の危機を救ったのは第四皇子と第三皇女の座乗艦であることを打ち出していこう」


 銀河皇帝が言い終えると同時に、天井から吊り下げられた巨大スクリーン内では、謎の組織――間違ってもイセ新選組などという弱小組織ではあるまい――が射出したアビス級反応弾が、アマテラスオオカミ・ブレイドの手によって無力化され、遥か宇宙の彼方で大爆発する様子が映し出されていた。

 それを見て、誰もが安堵の吐息を漏らす。

 かつて、ノア・ホーア・レッドドワーフが母なる地球を同兵器で破壊して以来、アビス級反応弾が惑星を破壊した事例はない。

 どうやら、自分たちの代で……この銀河帝国内で、その記録が破られる結果にはならなかったようである。


「まったく異義はありません」


「いかにも。

 クッソ顎が痛いですし、第四皇子殿下には我らをこうまで痛い目に遭わせた責を負ってもらわねばなりませんな」


 憤慨した様子の重鎮たちから、まったく覚えのない責を負わされるこの場にいないイラコ・ジーゲル(20)さんだ。


「それにしても、レクの宇宙港が……そこに逗留していた我らが銀河帝国の無敵艦隊が負った被害は、甚大の一言ですな。

 これでは、対ジンバニア王立連合方面で現在戦っている将兵たちを、ローテーションで後方に戻してやることも、ままなりますまい」


 大将の襟章を持つ者が口にした通り、今回の事件で受けた被害は惨憺たる有様である。

 まるで、一つ方面の一大決戦で大敗北を喫したかのような……。

 それほどまでの、損害。


「とりわけ大きいのは、艦隊そのもののみならず、同方面に対する玄関口であったレク宇宙港そのものも、人員含め大打撃を受けていることですな。

 港としての能力は、当面、従来の30%ほども発揮できれば御の字と言ったところでしょう」


 やはり大将位に属する者が、やれやれとでも言うかのように肩をすくめてみせた。

 一見すれば、この場にそぐわぬおどけたかのような振る舞い。

 だが、銀河皇帝はそれを追及しない。

 何故ならば……。


「だが、余の誇る銀河帝国軍の艦隊が全滅したわけではなく、惑星レクの宇宙港も、惑星レクそのものも、完膚なきまでに破壊されたわけではない。

 人民の受けた物質的、精神的なダメージは大きかろうものであるが、それらは癒し得るものだ。

 いや、より正確を期すならば、上書きし、よそへと向けることが可能である」


「無論、今回の一件に関する調査は、我ら情報局が全力で行いますがな」


「うむ。

 カウンターが主となるのは、守性の諜報組織が負った定め。

 ここからの働きに期待しているぞ」


 情報局長の言葉に銀河皇帝がうなずき、それから、一同に向けて大まかな方針を告げる。

 そう、この意思決定の速さこそが、銀河帝国の強み……。


此度(こたび)、イラコめが中心となって果たした英雄的活躍を大々的に喧伝し、ジンバニア王立連合を構成する五王国の一つ――ヨーギル王国への婿入れを、強力に行う。

 銀河随一のパレードを、余の名において開催しようではないか!」


 かくして……。

 絶対に死にたくない銀河皇帝庶子は、前線を越えた先――敵勢力圏にまで赴くことを決定されたのであった。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 見事にプロパガンダに使われてる…!? イラコくん、なんかガル○・ザビみたいな扱い(死んだから戦意高揚に、死ななかった場合は地球勢力との融和政策に利用するつもりだったらしいですなギ…
よし、レンゲちゃんはまだ生きてそうだな……多分
>他の皆さんも、『バ……バカな……!』『んっがんっぐ……!』と、それぞれ驚きの言葉を漏らしていますな」  んっがんっぐ……!(うっまっんっん!だのんっがっぐっぐ!だの複数情報あり)の元ネタがなんて言…
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