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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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アビス級反応弾 前編

「やれやれ、結局は銀河帝国への嫌がらせに終始する結果となったか。

 なかなかどうして、ままならないものだな」


 ハーフパンツにアロハシャツという、いかにも、惑星レク首都のビーチへ遊びにきた観光客という装い。

 その上、星型のサングラスというふざけた装飾まで身につけた日系男が、巨大な蜘蛛の巣めいた宇宙港の各所で起こる戦闘を見ながら、そう呟いた。


 彼が搭乗しているのは、宇宙港に接続されていた民間輸送船の一隻。

 銀河のどこでも見かけられるような、どうということもない船のブリッジである。


 実際、この船そのものには、なんの仕掛けも存在しない。

 ただ、積んでいる荷だけは、少々特殊な代物であったが……。


「それもこれも、あの合体戦艦ロボットが原因だな。

 何が、アマテラスオオカミ・サンダーだ。

 ふざけてくれるよ」


 周囲のスタッフたちが作業……この騒動に巻き込まれた結果、やむを得ず宇宙港から離脱し、独自避難する民間船としての動きを演出する中、星型サングラスはサブモニターに映し出された光景を見やった。

 これは果たして、現実の光景なのだろうか……?

 戦艦同士が合体して上半身と下半身を構成するというふざけたシーケンスで生まれた超巨大ロボットが、散歩する童女のごとき軽快なステップを踏みながら、次々とハッキングされた艦に殴りかかっているのだ。


 上半身を構成するシールド艦の巨大電磁シールドがそのまま腕部を構成している都合上、これを槍のように用いてパンチをしているわけだが、その威力――絶大なり。

 何しろ、本来ならば艦砲射撃レベルの攻撃から、僚艦と自身を守るために用いられる最高防御力の盾なのである。

 これで殴りかかれば、最強の盾が転じて最強の矛と化すことは、子供でも分かる道理。

 便宜上、シールドパンチと称すべきこの一撃を受けて抗える艦などなく、殴られた箇所は、火であぶられた飴細工のようにたやすく歪み溶けていった。


「一番ふざけているのは、乗り手の技量だがね。

 本来は宇宙港を完全破壊するつもりだったのが、どうやら、港としての機能は守りきられてしまいそうだ」


 破壊の嵐を振りまく超巨大ロボットの姿を見ながら、そう漏らす星型サングラスだ。

 まず、標的となる艦から艦へと、ワープでもしているかのように瞬間的な接敵を果たすその動きは、何事か?

 400メートル級の宇宙戦艦同士が合体しているというのに、その巨大質量が消失しているかのように軽快な挙動を見せているのであった。


「しかも、殴りつけた艦は内部人員も含めて、致命傷を避けている。

 あの大雑把(おおざっぱ)なパンチで、よくもやるものだ」


 ハーフパンツのポケットに両手を突っ込み、乾いた笑いを漏らす星型サングラスである。

 シールドパンチで潰されているのは、暴走する艦に装備された荷電粒子砲や光子魚雷の発射口など、攻撃にまつわる末端部。

 ここを殴って潰し、あるいはかすらせる形でヤスリのように削り取り、ハッキングによるランダム攻撃を強制的に潰し回るというのが、アマテラスオオカミの動きであった。


「給糧艦が聞いて呆れる。

 実態は、天才と名高い第四皇女エステ・ジーゲルが生み出した新型兵器であったか」


 に、しても、その動きと働きは様子のおかしいものであったが、ここで思考は打ち切る。

 感想戦など、延々と続けても仕方のないものである。


「アルファード・ヤマモトのタイゴン弐式がこちらに流れて来ますが、いかがいたしますか?」


「大破した機体は捨て、身一つでこちらに漂ってくるのならば、回収する用意があると伝えろ。

 おっと、彼はパイロットスーツを着ていないのだったかな?」


 彼が普段している所作を模しているというわけではないが、奇しくもハンドインポケットの姿になりながら肩をすくめて指示した。

 とどのつまり、アルファードもイセ新選組も、自分たち反帝国連盟にとっては、その程度のコマ。

 レンゲ・オレンジのように替えがきかない技能を持っているならばともかく、おだてれば木に登る豚のごとき若造共など、もう用はなかった。


「それより、こうなった以上は嫌がらせの総仕上げだ」


 星型サングラスの言葉に……。

 ピリリとした緊張が、ブリッジへ走る。


「別の船へ避難したレンゲから、第一の解除コードは送信済み。

 後は我々が最終ロックを外せば、いつでも起動できます」


「よろしい、起動しよう。

 最後は、派手に幕引きといこうじゃないか」


 星型サングラスの言葉を受けて、一人のブリッジクルーが全員に小箱を配っていく。

 指輪でも収まっていそうな小箱の中に入っているのは、そのように洒落た代物ではない。

 蓋を開けた中にあるのは、指紋認証装置。

 星型サングラスを始め、ブリッジに存在する全員が、これに親指を置く。


「……本作戦司令部全員の指紋承認を確認。

 アビス級反応弾の最終ロック、解除されます」


 オペレーターの声を受けて、全員が無言のまま、左舷サブモニターを見やる。

 そこに映し出されていたのは、本船の3D図。

 車輪を取り除き、代わりにスラスター類を取り付けたコンテナトラックと形容するのが分かりやすい船体から、カタツムリの殻がごとく背負われているコンテナ部分が、分離された。

 何しろ、全長50メートルもある宇宙輸送用のコンテナであるため、これそのものも、簡易的ながらスペースシップとしての機能が備わっている。

 自立飛行用のスラスターを起動させたコンテナが、プラズマジェット推進によって、輸送船本体から離れ出した。


 コンテナが向かう先にあるのは、青きハーフアースサイズの植民惑星――レク。


「主は言われる、 全地を滅ぼし尽くす滅ぼしの山よ。

 見よ、私はお前の敵となる。

 私は手をお前の上に伸べて、お前を岩から転ばし、おまえを焼け山にする」


 星型サングラスが口ずさんだのは、エレミヤ書の一節。

 世界を荒廃させた巨大な帝国(バビロン)を滅ぼしの山と呼び、主がこれを焼き払うと預言した内容である。


「旧約聖書に語られているのがこの光景かどうかは知らないが、まさに、その預言のごとく悪しき帝国へ鉄槌を下そうではないか?

 見ろ! 我らは銀河帝国へ鉄槌を下す最初の人々だ!」


 星型サングラスが歌劇役者のように振る舞いながら叫ぶと、他のブリッジクルーもうっとりとした……陶酔的な顔となった。

 この場に集った人間にとって、銀河帝国へ痛打を与えることは、悲願であるといっていい。

 それを、まさに今、自分たちの手で実行したのだから、感慨深くなるのは当然のことであった。


「アビス級反応弾は、三分後にコンテナから射出。

 以降は、惑星レクのコアを目指して自律飛翔します。

 また、すでに弾頭内では臨界寸前の反応核を磁場コーティングしているため、ビームなどで弾体が破壊された場合、磁場コーティングも消失。

 行き場を失ったエネルギーは、惑星マントルを連鎖反応させた場合には劣りますが、一個艦隊を消滅させる規模のプラズマ爆発を引き起こします」


「大変結構。

 つまり、最低でも、宇宙港に甚大な被害は与えられるわけだ。

 あのピョンピョンとして目障りな戦艦ロボットも、これではどうしようもあるまい。

 もっとも、反応弾そのものを両断できるほどの巨大剣で、ピンポイントに弾頭を断ち切ってしまえば、話は別だろうがな」


 星型のサングラスをカチャリといじりながら、あり得ない可能性を漏らす。

 つまりこれは、完璧な計画であるということ。

 ただ、誤算は……。


「待ってください!

 これは……タイゴン弐式が、本船へ向かって――うわ!?」


「――何!?」


 星型サングラスの言葉と意識は、それで途切れることとなった。

 右手と右脚に加え、頭部ユニットの右半分をも失い半死半生といった状態で漂っていた純白のM2――タイゴン弐式。

 それが、瞬間移動じみた速さでこのブリッジへ接近し、健在な左足の裏に仕込まれた電磁ソールの輝きを見せつけたからである。


 そうと知覚することもなく、ごくあっさりと。

 審判者を気取る反帝国連盟の自由闘士たちは、電磁熱で蒸発したのであった。

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― 新着の感想 ―
>400メートル級の宇宙戦艦同士が合体しているというのに、その巨大質量が消失しているかのように軽快な挙動を見せているのであった。  え? タイゴン弐式の高速反復横跳びだって宇宙でやるとなったら(陸上…
所詮黒幕気取りの三下か。
巨大剣ね……うん……エステぇ……
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