表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
137/165

宇宙港の戦い 15

 ブラストキック。

 発勁の応用により、機体の運動エネルギーのみならず、電磁シールドすらも足裏に一点集中。

 さらに、これによって生じる破壊力をインパクトの瞬間、相手側にのみ叩き込む……このイラコ・ジーゲルの必殺技である。


 我ながらシンプルな……あるいはダサい技名だとは思うが、しかし、これを気に入っている自分がいた。

 必ず殺す技の名というのは、多少シンプルなくらいで丁度いいのである。


 そして、渾身の技を放った際には、残心というものが必要不可欠。

 とりわけこの技は、発動からインパクトに至るまで多大な集中力を必要とする上、機体そのものにも相応の負荷をかけるため、ほんの数秒、人機共に休む時間が必要だった。

 ゆえに、宇宙空間でこの表現も奇妙だが、着地し、深く腰を落として居合のごとく構えたまま、見得を切るようにして残心。

 同時に、展開していたカメラアイも収まり、タイゴンは八つ目から四つ目へと戻る。


「アルファード……」


 残心を終え、振り向く。

 そこに漂っていたのは、大破状態のタイゴン弐式。

 まず、右脚は根本に至るまで粉砕しており、右手も突っ込んでいたポケットパーツごと砕け散っていた。

 その先……胴体部分は、アルファードが最後の力で背を逸らした結果、上面部の複合装甲が、飛び蹴りの軌道に沿って抉り取られている。

 そして、頭部。

 右側は胴体から続くようにして下から抉れており、内部のセンサー系から火花が飛び散っているような有り様。

 左側のメインカメラも衝撃で吹っ飛んでしまっており、基部のサブカメラがかろうじて機能しているか、否かといった状態であった。


 文句なしの撃破であり、完全勝利である。

 ちっとも心は沸き立たないけどな。


『――――――』


 レーザー通信は、駄目だな。癇に障る音を漏らすだけだ。

 だが、手応えから、コックピット内部のアルファードが無事であろうことは把握していた。

 何しろ必殺技であるし、手心が加えられるほど弱い相手でもないので、生きているのは完全に本人の頑張りだが。


 その頑張り……あるいは、悪あがきがよいことなのかどうかは、俺の判断できるところではない。

 ただ一つ確かなのは、銀河帝国第四皇子として、これほどの事件を起こした首謀者は確実に捕らえねばならないということであった。


 その後は……知らない。

 そこは、皇子の関与するべきところではないのである。


 ふと周囲の気配をさぐれば、各艦内部に待機していた帝国軍人たちの働きや、ママの操るアマテラスオオカミが大暴れした結果だろう。

 いつの間にか、ハッキングによるランダム砲撃は収まっており、惑星レク大気圏直上は静けさを取り戻しつつあった。

 もっとも、少し乗機のカメラアイをめぐらせれば、運悪く戦艦級の荷電粒子砲が直撃し、内部に居た多数の命ごと宇宙の藻屑と化している艦や、破損して千切れ飛ぶような形となっている宇宙港の一部を認められたが……。


「差別が理由と言っていたか……」


 口喧嘩に付き合ってうっかり言い負かされるとくやしいため、ぶん殴って黙らせてしまったが、確かそんなことを動機として語っていた。


「軽い理由とは……言えねえな」


 奴が言っていた通り、俺自身も日系人のママを持つ身であるため、色々と思うところはある。

 が、一応は皇子であり、ちやほやの限りを尽くされる立場だ。

 アルファードたちが感じていた被差別感情を完全に理解することは、およそ不可能であろう。

 確かに、根深い問題なのだ。

 そうでなければ、千年以上前にキング牧師が暗殺されたりはしない。


「とはいえ、他にも色々な理由が繋がってるんだろうが……。

 あるいは、あのサムライ・ドンナーたちを製造した勢力なり組織なりも、か」


 そのサムライ・ドンナーたちも、シレーネさんの見えざる攻撃を受けてか、散開し怯えながら周囲をうかがっている状態。

 もはや、直接に攻撃を加えずとも十分にこいつらを押さえられているわけで、なるほど、改造されたシレーネさんのピノキオは、その本領を十分に発揮したようだった。

 と、こいつらの心も折っとかないとな。


「イセ新選組に属するだろうドンナーたちに告げる!

 お前たちの首魁――アルファード・ヤマモトは、このイラコ・ジーゲルが討ち取った!

 これ以上の抵抗は無駄である!

 サムライを模した機体に搭乗するならば、武士のごとく潔く投降されたし!」


 オープン回線を使っての呼びかけ。

 それが、確かにパイロットたちへ動揺を与えたというのが、機体の挙動から伝わってくる。

 こんなところか、な……。

 今やれることをやったと見て、軽く鼻から息を吐き出した、その瞬間だ。


 ……殺気!?


 充実して膨れ上がった殺気が、俺の直下――惑星レク側から放たれているのを、この肌が感じ取る。

 別に自慢ともしていない縮れ毛が、チリチリと震えると共に、ようやくレーダーがリアクター反応を感知。

 出力は、M2サイズ。

 搭乗者の実力は、あるいは俺以上なり。


 惑星レク内に張り巡らされたグラビコンシステム網の重力を振り解き、殺気とリアクター反応の出どころが、姿を現す。

 それは、ひどく細身の……繊細さすら感じられるシルエットをしたM2であった。


 機体を構成するラインは――直線。

 直線的にカッティングされた装甲が、全身のフレームを覆っている形だ。

 設計思想としては、タイゴンに近いものがあるのだろう。フレームは関節可動域の広さを重視したもので、装甲そのものはあまり厚くないし、覆っている面積も広くはない。

 カラーリングは純白。

 重要なセンサー系が集中した頭部ユニットは、バイザーがカメラを守る形式となっている。


 総じて、近接戦闘能力における運動性能を重視した機体。

 フォーミュラカーのごとく、無駄となるものを削ぎ落としたような雰囲気が感じられる機体だ。


 だが、このM2に関して特筆すべきなのは、右手に下げているその大剣だろう。

 いや、これを刀剣と称するのは、正しいのかどうか……。

 コミックにでも登場しそうなほど巨大で肉厚で……非現実的な大きさをした鍔なしの大剣なのだ。

 何しろ、刃渡りは握っているM2の機体本体と比べても遜色なく、刀身そのものの幅も、やはりM2の胴体ほどもあるのである。


 要するにこれは、剣の形状こそしているが、M2を掴んで振り回すのと大差ない代物であった。

 まさに、質量の暴力と称するべき得物なのであるが、かといって、その刀身が雑に一体成型されているのかといえば、そうではない。

 よく見ればこの刀身は、両刃部分を一対のグレートソード、その内側部分をやはり一対のカタナ、中央部分をこれも一対のロングソードが構成する形で合体しているのが分かる。


 つまり、このバカデカい得物の正体は、合計六つもの用途が異なる剣を合体させることで、斬撃艦の艦首対艦刀に匹敵するほどの攻撃力を達成した巨大剣なのだ。

 柄元は小型のリアクターとなっているようだし、おそらく、戦艦クラスの電磁シールドでも切り裂けるほどの電磁圧をまとえるに違いない。


「……」


 無言のまま操縦桿を操り、謎の機影と向き合う。

 見たところ、この機体はタイゴン同様、随分と使い込んだ代物のようで……。

 されど、整備が行き届いていることも伝わってくるその機体は、弐式とこのタイゴンの間へ割って入ってきた。


 弐式を守ろうという腹か?

 いや、これは逃がそうという考え。


 なぜなら、大剣持ちの機体はそのまま後ろ回し蹴りを披露し、背後に庇う形となった弐式を蹴り飛ばしたのである。

 大破状態の弐式だが、まだ電磁シールドは稼働しているようで、バチリというシールド火花を散らしながらいずこへと吹き飛んでいく。


 本来ならば、即座に追いかけねばならないところ。

 しかし、それが――できない。

 俺と対峙する大剣使いが放つ迫力の、なんと凄まじいことよ。


「……」


 見たこともない、機体。

 されど、その息遣いは……。

 俺はパイロットの正体を察しつつも、タイゴンに基本となる格闘の構えを取らせていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
師匠⋯⋯?
M2サイズでも武器になることはどこぞのイラコ兄妹……イラコ弟姉? が正面しちゃったしなぁ……まああれはM2そのものだったけども
更新お疲れ様です。 グル○ガスト零式みたいな斬艦刀を持って来た謎の機体……残ってる人を考えたらイゾーロさんかなやっぱり? 得物的に『二之太刀要らず』な示現流の使い手か…? それでは今日はこの辺りで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ