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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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宇宙港の戦い 1

 まるで、恒星が爆発したかのような……。

 圧倒的な光の奔流を察知して、銀河帝国第二皇子ペーター・ジーゲルが行った行動は、ただちにフットペダルを踏み込むことであった。

 乗機——ミラン・ドンナーのフットペダルは、重く——固い。

 これは、背部に二基装備されたヴァリアブル・ブースターポッドが、あまりの大推力を誇るからである。


 通常仕様のドンナーが推力100だとすれば、ミランのそれは300にも及ぶだろう。

 そんな機体のペダルを軽いセッティングにしてしまうと、少し踏んだだけで加速()()()()()()()ため、かえって微細な操縦ができなくなってしまうのだ。


 その重くて固いペダルを、脚力の限り踏み込む。

 いっそこれは、マシーンの操縦というより、レッグプレスを使った筋力トレーニングの方が近いだろう。


「ぐううっ……!」


 そういった筋力にモノを言わせての力技は、兄である第一皇子ベルトルトか、あるいは弟である第三皇子ヴォルフが得意としていること。

 ではなぜ、自他ともに認める優男が、奥歯を噛み砕かんばかりの勢いでペダルを踏み、他のドンナーたちを置き去りにしたのか?

 その答えは、全力飛翔するミラン・ドンナーの後方……編隊飛行する通常仕様のドンナーたちが教えてくれた。


 上方より降り注ぐは、無数の荷電粒子ビーム。

 太いものは、バズーカタイプ……M2最大火砲の出力。

 大多数を占める弾幕に関しても、光条の一つ一つが、通常の粒子小銃を上回る高出力のようである。

 これほど強力なビームの数々を、無警戒に頭上から浴びせられたのだから、たまったものではない。


 機体表面を覆う電磁シールドなど、卵の殻ほども役に立たず……。

 ついさっきまで、軽口で互いの緊張をほぐし合っていたパイロットたちの乗るドンナーは、球体状の爆炎に包まれていく。

 高出力ビームが機体を貫いた結果、主動力であるプラネット・リアクターが爆発したのだ。


「くうっ……!」


 断末魔などというドラマチックなものはなく、ただ現実として爆光に消えていった帝国の機体とパイロットたち……。

 その事実を噛み締めながらも、しかし、ペーターの頭は——冷えていた。


 まずは、破壊の元凶がいるだろう方角に、ミラン・ドンナーのブラウン管テレビじみた頭部を向ける。

 すると、ドンナーそのものを改造したのだろう砲撃ユニットと、その背後から左腕を接続した新選組カラーの機体を発見。

 だが、ヴァリアブル・ブースターポッドの超推力によって向かうは、逆方向。

 ミラン・ドンナーから見て下方——惑星レク成層圏であった。


 こういう時、いいパイロットというのは、戦場を俯瞰して見られるもの。

 ペーターは、上方の砲撃ユニットが、連続してあの砲撃をすることができないことを、ただちに看破。

 同時に、広い視野でそもそも自分に負わせていた任務——大気圏外(うえ)へ上がってくる賊部隊の迎撃が可能かどうかも、検討した。


 そして、見たのだ。

 全領域対応人型機動兵器としての本領を発揮し、自らの推力で大気圏を突破してきたM2の集団……。

 その先頭で、M2にとってはなんの意味もない両腰のポケットへと両手を突っ込み、こちらに向かって飛翔する機体の頭部に備わっているのは、

——四つ目。

 カラーリングこそ本家と対照的な純白であるが、装甲面積を減らすことで、関節可動域を極限まで追求したボディシルエットを、見間違えるはずがない。


「タイゴン……!

 SNSで話題になっていた弐式とやらか……!」


 タイゴン弐式。

 通信によると、惑星上(した)の首都近郊基地は、こやつ一機に殲滅されたも同然だという。


「諸々の状況を踏まえれば、賊の首魁である可能性は、極めて高い。

 そうでなかったとしても、戦力の中枢であり、精神的な支柱だろう?

 ——ならば!」


 ミラン・ドンナーがペーターの意思を汲み、腰のハード・ポイントに接続されていた折畳式電磁ブレードを、左手で引き抜く。

 右手に粒子散弾銃。

 左手に折畳式電磁ブレード。

 中距離と近距離のヒット&アウェイに特化した二刀流……!


「——勝負だ!」


 銀河帝国第二皇子ペーターは、パイロットとしての誇りを持って白き凶獣(タイゴン)へと挑むのであった。




--




「艦内の皆さん、こちらはブリッジのマミヤ・ビルケンシュトックです。

 不在のモリーさんに代わって、皆さんへお伝えします。

 ——本艦及びシールド艦クシナダは、これより合体シークエンスを開始。

 アマテラスオオカミ・サンダーへと合体し、ランダム砲撃する味方戦艦たちに対し、格闘戦を敢行。

 外部破壊による無力化を狙います」


 大気圏外へと出るなり、マミヤが艦内放送で宣言したのは、給糧艦アマテラスに秘められた給糧艦ならざる力の解放であった。


「あらあら、まあまあー。

 エステ様ってば、こんな面白いギミックを仕込んでいたんですねー?

 ママ、張り切って操縦しちゃいますよー」


 常ならば、祖父メケーロが座っている席……。

 操舵手用のシートに収まったイラコママが、そつなくステアリングを操りながらほほ笑む。

 赤ちゃんのようにプニプニムチムチなほっぺをしていることもあり、下手をするとマミヤ以上にあどけない印象を覚えるメイドお母さんから発されるプレッシャーは、歴戦の戦士がまとうそれ。

 かつて、伝説とまで呼ばれた傭兵——サンダーアイである祖父や、このアマテラスで働く他の老兵たちと比べても、一切劣るところはなかった。


「艦内のお爺ちゃんお婆ちゃんたちは、万が一に備えて所定の通り行動。

 艦内グラビコンシステムは、わたしの方でリアルタイムに制御を行う。

 また、牛さんやニワトリさんたちが第六感で合体を察知し怯えないよう、畜産ブロックの人間はオモチャや音楽で誤魔化し続けるように。

 お乳や卵の出が悪くなっては、一大事」


 ユカタ姿のまま、キャプテンシートでテディベア型端末を操るエステ皇女が淡々と……それでいて、的確な指示を飛ばす。


「了解。

 畜産ブロックに詰めている方々は、動物たちの保護を第一に——」


 言いながら、通信士用モニターに牛舎の映像を出して、一瞬、言葉を失う。

 そこで作業着姿となり、牛の世話をしていたのは、アマテラスにおける動物たちの首領(ドン)——ラドではない。

 細身で神経質そうな銀縁メガネの中年男……『プロテイン・ダイナミクス社』総帥レオン・シュタインであったのだ。

 忘れそうだが、彼はラド・シュタインの息子であった。


「……あの、レオン総帥?」


『……何も言うな。

 母が財界の方々と顔を繋いだりしている間、初心に戻って動物たちの世話をするよう言いつかっているのだ。

 何、心配せずとも、動物たちのポテンシャルは維持してみせよう』


 言いながら、どこからともなく取り出したのは、ベビー用品店とかで売っていそうなガラガラと音を出すオモチャである。

 どうやら、これを使って動物たちの気を引くつもりらしい。

 また、まとめて面倒を見ようというのか、カメラの倍率を切り替えてみると、モォモォ言っている牛さんたちを背にした彼の足元には、コケコケ言っているニワトリさんたちも集っていた——あ、足をつついてる。


「……そういうことなら、お願いします。

 他に問題のありそうな箇所は……」


 言いながら、パパパと映像を切り替えていく。

 そうすることで、目に留まったのは、製菓材料を収めておく倉庫内の映像。


『なになに!? なんか合体とか言ってるんだけど!?』


『ガンガン敵を打ち砕き、ジャンジャン幸せ運ぶっていうのか!?』


『なんだこれは……?

 なんなんだこれは!?』


 そこでは、到着前にお爺ちゃんたちがボッコボコにしてふん縛ったというイセ新選組の若者たちが、す巻き状態で転がされながら、何やらわめいていた。


「……うん。

 ……うん」


 見なかったことにして、華麗にスルー。


「問題ないようなので、合体開始——ポチ」


 そうこうしていると、エステ皇女が手にしたテディベアの鼻先を押し込み、合体シークエンスが開始されたのである。

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指さし確認! 問題なし! ヨシッ! (๑•̀ㅂ•́)و✧
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